最も死亡リスクを低下させる野菜・果物の摂取量?

野菜や果物は健康的な食べ物でであるという認識が一般化してしまっています。では、いったいどのくらい食べるのが良いかを分析した研究があります。

この研究は主に看護師の健康調査と健康専門家のフォローアップ研究という2つの大規模研究のデータを基にしており、データに含まれる参加者は最長30年間追跡された10万人以上だそうです。さらに、この分析のために、研究者はまた、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリアの29の国と地域からの約190万人の参加者を含む26の研究からの果物と野菜の摂取と死亡に関するデータを統合分析しました。つまり、200万人以上のデータ分析です。すごい数ですが、数字遊びにも見えてしまいます。このような食事の内容に関するデータは通常食事のアンケートを用いて行うので、いつも書いているように非常に質の低いものになってしまいます。

とりあえず見てみましょう。(図は原文より)

上の図はAが果物と野菜を合わせたもの、Bが果物だけ、Cは野菜だけのグラフで、横軸は1日の摂取量です。その単位は1日のサービングで示されていますがサービングってよくわかりません。日本の農林水産省によれば野菜の1サービングは約70g、果物の1サービングは約100gだそうです。(ここ参照)しかし、アメリカの1サービングは1カップ=240mlだそうです。まあ、よくわかりませんが、このくらいです。縦軸は死亡リスク比です。

そしてグラフの左から総死亡、がん死、心血管疾患死、呼吸器疾患死、神経変性疾患死です。そうすると、神経変性疾患以外はほとんど何サービングかの果物や野菜を摂っている方が死亡率が少なく見えます。

上の図は26の研究を統合分析したものです。

毎日約5サービングの果物と野菜を摂取すると、死亡のリスクが最も低くなりました。5サービング以上を食べることは追加の利益とはならないようです。
果物を1日2サービング、野菜を1日3サービング食べることは、死亡率が最も低いようです。
1日に果物と野菜合計で2サービングを摂取した人と比較して、1日に5サービングの果物と野菜を摂取した人は、すべての原因による死亡リスクが13%低くなりました。そして心血管疾患による死亡リスクが12%低く、がんによる死亡リスクが10%低く、呼吸器疾患による死亡リスクが35%低くなります。

細かく見ていくと、エンドウ豆やトウモロコシなどのでんぷん質の野菜、ジャガイモ、フルーツジュースは死亡リスクの低下とは関連していませんでした。

一方、ほうれん草、レタス、ケールなどの葉物野菜や、柑橘系の果物、にんじんなど、ベータカロチンやビタミンCが豊富な果物や野菜が死亡低下に関連しているようでした。

まさに絵にかいたような結果です。

 

さて、看護師の健康調査と健康専門家のフォローアップ研究の参加者の特徴を見てみましょう。果物と野菜の摂取量が多い参加者は、年齢が高く、マルチビタミンを使用する可能性が高く、総エネルギー摂取量、食事の質、身体活動レベルが高く、1つの研究データでは高コレステロール血症の有病率が高かくなっていました。さらに、現在の喫煙は低く、1つの研究データではアルコール摂取量も少ない状況でした。

こうしてみると、もともと果物や野菜を多く食べている人ほど健康志向が高く見えます。健康に気を付ければ全ての疾患を防げるわけではありませんが、全く気にしない人とは差が生まれても不思議ではありません。そのような日常の生活習慣の積み重ねは大きく影響するでしょう。特に運動や喫煙の差は多くなります。食事の内容についても、食生活を気にしなければより糖質過剰摂取になっている可能性もあります。

そして、もともとのデータがアンケートデータです。このような質の低いデータをいくら大規模に集めても所詮質の低い結果にしかならないでしょう。それでいて、死亡率の低下は10%程度という結果です。

あまり参考にならないでしょう。しかし、これをもとに「果物や野菜は死亡率を低下させる!」と騒ぐ人たちがいるかもしれません。現在の果物は甘すぎます。気を付けて少量摂取の方が良いと思います。

糖質制限

「Fruit and Vegetable Intake and Mortality: Results From 2 Prospective Cohort Studies of US Men and Women and a Meta-Analysis of 26 Cohort Studies」

「果物と野菜の摂取量と死亡率:アメリカの男性と女性の2つの前向きコホート研究と26のコホート研究のメタ分析の結果」(原文はここ

8 thoughts on “最も死亡リスクを低下させる野菜・果物の摂取量?

  1. 「健康に気を付ければ全ての疾患を防げるわけではありませんが、全く気にしない人とは差が生まれても不思議ではありません。そのような日常の生活習慣の積み重ねは大きく影響するでしょう。」私もその通りと、認識し日々節制(まあ、ストレスにならない程度)している、つもりでおります。
    話は変わりますが「ちびまるこちゃん」作者さくらももこさん、私の一学年上の年齢のはずですが、若くして癌により亡くなってしまいました。エッセイなどにもその「健康オタク」ぶりが垣間見えました(かの、飲尿療法もトライされた様子)。売れっ子漫画家は激務には違いないでしょうが、実際どんな生活をされていたのか、いまさらながら気になります。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      それぞれの個人の生活まではよくわかりませんので、コメントはできませんが、残念ですね。

  2. なるほど、朝食食べた方が成績が良いという報告と同じような感じですね。
    朝食を食べられる子供は家庭環境が良いだろうし

    1. 匿名希望さん、コメントありがとうございます。

      まさに朝食の研究も同様のものが多いのだと思います。

  3. 鈴木様
    横から失礼します。私もさくらさんの事は非常に残念に思います。調べましたらさくらさんはかなりのヘビースモーカーだったようですね。それに加えて、タバコ吸ってるんだから健康に気をつけないと、と毎晩リンゴとにんじんのすりおろしを飲んでいたとの記載もあります。自分で考えてされていたのでしょうけど、あまりに残念ですね。

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