肥満でないことは専門医の資格要件にはない

以前の記事「肥満の医者」でも書いたように、アメリカでは2007年医師健康調査によると、19,000人の医師のうち40%が過体重で、23%が肥満だそうです。日本はそこまで太っている人はいませんが、医師でも肥満や太りすぎの人はたくさんいるでしょう。

これに一部関連したコメントをいただきました。

清水先生、いつもありがとうございます。
62歳で心筋梗塞発症前までは、糖質依存症(コンビニで支払いの時、レジ前の甘い物は必ず追加)や肥満など、何も考えた事がありませんでした。
現在は糖質制限(糖質20~30g/日)が当たり前にはなっていますが、清水先生のブログを通して、人間の身体、代謝や健康に対する見方、考え方、そして哲学的な事を学ばさせて頂いていると思っています。
退院して直ぐに糖質制限を始めました。
一年位経った時でしょうか、糖尿病の先生に、「先生、心臓はかなり壊死している部分があるみたいですし、心臓やインスリン抵抗性の事を考えて、10㎏位痩せました」と言った時、「患者側からそんな言葉が出るとは」とちょっと驚ろかれたような感じで、そして「肥満ぎみの私には耳が痛いですね」と苦笑いでスルーされました。(いや、肥満です)
私の周りの糖尿病人、膝痛で通院している肥満の人からインスリン抵抗性などの言葉を聞いた事がありません。
糖質制限で肥満解消して、毎日軽快に生活できている身としては、肥満に対する考え方を少し変えるだけでも、何か良い方に向かうのにと思う次第です。

医師のほとんどは専門性があり、何らかの専門医を持っています。(この専門医というのが曲者ですが)その専門医の要件で喫煙に関するものがあります。

日本循環器学会は2013年に「新禁煙宣言2013」というものを出しました。日本循環器学会は2011年には専門医の資格要件に「自ら禁煙し、禁煙の啓発に努める」ことを追加しています。 日本循環器学会認定循環器専門医制度規則の第2章第4条(6)に

「喫煙が心血管病の危険因子であることを認識し自ら禁煙し且つ禁煙の啓発に努めること」

と書かれています。(ここ参照)しかし、これは努力義務です。

呼吸器内科はもっと積極的に禁煙を条件としています。専門医制度規則の第4章第14条に

「専門医の認定を申請する者は、次の各条件をすべて充足することを要する。」

とあり、その条件の4番目が「非喫煙者であること」となっています。もちろん、自己申告でしょうけど。(ここ参照)

しかも、Q&Aの中に、

Q:日本呼吸器学会の呼吸器専門医の資格要件に非喫煙者であることが記されています。もし、専門医が喫煙すると専門医資格は剥奪されますか?

A:日本呼吸器学会専門医制度統括委員会としては、剥奪される可能性もあると考えています。

と書かれています。もちろん剝奪までされないでしょうけど、喫煙についてはここまで厳しくしています。

しかし、喫煙も様々な疾患のリスクですが、肥満も様々な疾患のリスクになります。

糖尿病の専門医は患者に体重減少を指導することもあるでしょうし、循環器や人間ドックでも太りすぎを指摘するでしょう。そうであるのであれば、これらの専門医も太りすぎや肥満でないことを資格要件に入れるべきだと思います。太っている医師が「痩せなさい」と言っても説得力がないですし。

さらに、日本肥満学会の肥満症専門医の資格要件にさえ、「肥満ではないこと」が書かれていません。(ここ参照)

肥満学会くらいは専門医の資格要件に肥満でないことを入れても良い気がしますが。

患者側から見れば、肥満外来や糖尿病、循環器の外来で太った医師が出てきたら、「おいおい!まずお前が痩せろや!」と心の中で思うでしょう。

糖質過剰症候群

8 thoughts on “肥満でないことは専門医の資格要件にはない

  1. 人間現状維持が一番楽。
    身近な例だと朝は何時までも寝ていたいし逆に夜は夜更かしになりがち。
    余程の動機がなければ、食事や運動などの習慣改善は困難でしょう。
    問題なのは肥満体の医師に「現状肯定」意識が働いて、適切な指導、治療が
    できなくなったり、説得力も無くなる事と思います。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      確かに習慣を変えることは非常に難しいですね。私も血液検査で異常な値を見て、危機感を持ったので変われましたが、
      あのとき自分をごまかしていたら今の自分はどうなっていたかと思います。

  2. 清水先生、ありがとうございます。

    ちょっと驚いたのは日本肥満学会というのがあるのですね。
    もっと驚いたのは「呼吸器専門医が喫煙すると、専門医の資格を剥奪されますか?」との記述がある事です。
    タバコの臭いを撒き散らしながら、呼吸器系の患者を前にして、どういう治療をしようというのでしょうか。
    呼吸器専門医であれば、禁煙は当たり前で常識だと思います。
    医師の方に聖人君子は求めませんが。

    自分の心疾患、糖尿病は糖質過剰摂取の結果に他ならないと自覚していますし、現在の体調の良さ、快適さは糖質制限の賜物だと思っています。
    治療方、薬の向上も大切だとは思いますが、何よりも大事な事は病気予防だと思います。
    そういう観点からしても、清水先生の「糖質過剰症候群」が通説になって行く事だと思っていますし、信じています。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      医学界ではやたらと無意味な(?)学会が多数存在します。
      私自身は専門医の要件に、タバコや糖質といった嗜好品の有無は必要ないと思っています。それは本人の自由ですから。
      しかし、タバコだけ要件に含めるのはおかしな話で、そうであるならアルコールや肥満も要件に含めても良いのではないかと思います。

  3. 清水先生、おはようございます。

    医師でも肥満を甘く見ている方も多いのですかね?
    肥満に対する治療に、手術があったり、抗肥満薬が開発されていることを聞いたことがありますが、その前に糖質制限を取り入れるなどの生活習慣を変えることが大切だと思います。特に肥満の治療に薬、というのは違う気がします。どうしても薬が必要な方もいるのかもしれませんが。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      肥満を甘く見ている医師は多いのではないかと思います。という私も以前は甘く見ていましたから。
      以前の記事「食欲抑制薬の臨床データはある意味凄い!」で書いた食欲抑制剤のサノレックスは
      覚醒剤のようなものですからね。処方したいとも思いませんし、されたいとも思いません。

  4. 手っ取り早く、気になる症状を緩和する医療も必要ではあるのでしょうが、

    朝三暮四(チョウサンボシ):自分の手飼いのサル(狙)の餌(えさ)を節約しようとして、サルに「朝三つ、夕方に四つ与えよう」といったら、サルは不平をいって大いに怒ったが、
    「それでは朝四つ、夕方三つにしよう」というと、サルはみな大喜びをした。

    という言葉を連想してしまいました。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      手っ取り早く気になる症状を緩和することと、根本的な糖質過剰摂取をやめることは結果が同じではないので、
      「朝三暮四」は当てはまらないのでは?

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