加齢とともに、慢性疾患(心臓病、糖尿病、がんなど)や能力の低下(筋力、聴覚、記憶力などの低下)を起こすリスクが高まります。人生100年時代と言えど、60代前に様々な臓器不全、認知症、死亡を経験している人もいます。
今回の研究では、1972年から1973年の1,037人の45歳までの19のバイオマーカーを繰り返し26、32、38、45歳時に測定した収集して、生物学的な老化のスピードについて心血管、代謝、腎臓、免疫、歯、肺の機能の変化を評価しています。(図は原文より)
上の図は26歳から45歳までの20年間の生物学的老化についてです。aは平均が0、標準偏差 (SD) が1になるように変換したZスコアです。図はわかりにくいですが、バイオマーカーの傾きは年齢とともに低下する傾向を示しているようです。bは老化のペースです。横軸の1というのは1年年を取るごとに生物学的に1歳年を取るということです。図を見ると大きな個人差があることがわかります。1歳年を取るごとに、生物学的には0.40歳しか年を取らない人がいる一方で、2.44歳も年を取る人がいるのです。
上の図は、脳の老化について示しています。老化のスピードが速い人では脳のMRIで、平均皮質厚が薄く、皮質の総表面積が小さくなっていました(図の青い部分)。さらに、cで示すように白質の高信号はより速い老化のペースと関連していました。dの脳年齢ギャップ推定(brainAGE)もより速い老化のペースと関連していました。また、老化のペースが速い人は、記憶と関連している海馬の体積も小さくなりました。さらに老化ペースの速い人では認知機能検査が低下していて、知能指数(IQ)検査の平均スコアが低くなっていました。
さらにより速い老化のペースの人は日常生活で、「気が散りやすい」、「話が脇道それる」、「財布、鍵、眼鏡を置き忘れる」、「用事をするのを忘れる、電話を返す、請求書を支払うのを忘れる」可能性が高いこともわかりました。
また、より速い老化のペースの人は歩行速度が遅く、握力が弱く、バランス能力が低下し、細かい運動制御が低下し、視力や聴力の低下していました。そしてより速い老化のペースの人は、日常生活における感覚運動の困難に気づき、より多くの身体的制限を自己報告しました。45歳ですよ?
老化のペースが速い人は、老化に対してより否定的な態度を示し、「私が年をとるにつれて事態は悪化し続ける」「私は若い頃ほど幸せではありません」などの感情を持ち健康状態が悪いと感じ、年代順の年齢よりも年をとっていると感じました。さらに、75歳を超えて生きると考える可能性が低くなりました。
上の図はaは、暦年齢1年での生物学的年齢のペースについてです。自己申告による健康および年齢の外観、情報提供者が評価した健康および年齢の外観、研究者が評価した健康および年齢の外観です。その人たちをよく知る情報提供者も研究者も、老化のスピードが速い人の方が不健康そうに見え、年齢よりも老けて見えました。
bは最も若い(左)および最も老化している(右)顔の年齢評価を持つ10人の男性と女性の研究メンバーで構成されるデジタル的に平均化された複合した顔です。同い年には見えませんね。
cは独立した評価者による暦年齢1年での生物学的年齢のペースと顔の年齢評価との関連です。見た目は体の中身を示していると言えるでしょう。
老化ペースの最も速い五分位にいた人は、最も遅い五分位の人よりも平均3.79歳の老化した脳を持ち、4.32歳年上に見えると評価された顔を持っていました。
45歳は現代においては人生の中間地点かもしれません。しかしこのような比較的若い年齢において、かなりの差が出ているのです。私も40歳を過ぎるまで不健康な人間でした。太っていたし、運動もしていませんでした。しかし、糖質制限を始めると若返っていくことを実感できました。30代よりも現在の方が健康で、元気です。
恐らく、生活習慣、特に食習慣は生物学的老化スピードに大きな影響を与えるでしょう。終末糖化産物(AGEs)が溜まった体は、外観も老けて見えますし、実際にも不健康で老化しています。過去に戻ることはできませんが、糖質制限をすれば、取り返しがつくことも多いと思います。しかし、年齢のせいにしてあきらめたり、逃避してしまえば、どんどん老化していくでしょう。
30歳を超えたら、老化し始めていると考えていいでしょう。糖質制限で若返りましょう。
糖質過剰症候群
「Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy」
「同じ年代の年齢の中年成人の間の生物学的老化のペースの不一致は、将来の脆弱性のリスクと政策に影響を及ぼす」(原文はここ)