アルツハイマー病の新しい薬「アデュカヌマブ」

アルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」をアメリカのFDAが承認しました。(記事はここ

この薬、4週間に1回の点滴投与で、価格の目安は年間5万6000ドル(約610万円)だそうです。わお!

それにしても、この薬、一旦は中止になったはずです。中間解析が行われましたが、結果は有効性があると確認するのは難しいというものでした。これを受けて、治験は中止となりました。しかし、その後最終的に試験を終えた人たちのデータを加えたうえで詳細な解析をしたところ、2つの試験のうち1つの試験で認知機能の低下が22%抑制されたという結果がでたようです。2つのうち1つ?2つの治験のうち1つの治験で肯定的な結果が得られたものを、もう一つの治験で否定的な結果が得られた試​​験よりも支持する理由は何でしょうか?現時点では、アデュカヌマブの承認を支持する説得力のある証拠はありません。

評価項目としてMini-Mental State Examination(MMSE)と臨床的認知症尺度(Clinical dementia rating- sum of boxes;CDR-SB)による認知機能の評価を実施した結果、1年後のMMSEスコアはプラセボ群では3.14点低下したが、アデュカヌマブ1mg/kg群では2.21点、3mg/kg群では0.75点、10mg/kg群では0.58点の低下にとどまり、アデュカヌマブが用量依存性に認知機能の低下を抑制することが示され、プラセボ群との間に有意差があったのは3mg/kg群と10mg/kg群だったそうです。

CDR-SBに関しては、1年後にプラセボ群では2.04点低下しましたが、アデュカヌマブ 1mg/kg群では1.70点、3mg/kg群では1.33点、10mg/kg群では0.59点の低下にとどまり、プラセボ群との間に有意差があったのは10mg/kg群だったそうです。(ここ参照、会員登録必要)

この薬については去年11月、FDAの外部の専門家委員会が承認に否定的な結論をまとめていて、FDAが追加のデータを求めて審査期間を延長していました。なんと11人中10人が否定していたそうです。

ある記事(記事はここ)によると、FDAの専門家パネルのメンバーが、物議をかもしたアルツハイマー病治療の承認をめぐって辞任したようです。

裏で何があったのでしょうか?

この薬は脳に溜まるアミロイドβを減少させる効果があるのですが、これは単なる症状の一つであり、本当にアルツハイマー病の原因なのでしょうか?原因として証明されたものではないでしょう。このことはスタチンの問題と似ています。スタチンはコレステロールを低下させますが、心血管疾患の原因は果たしてコレステロールの増加でしょうか?

以前の記事「アルツハイマー病に対するケトン食の効果」で書いたように、ケトン食では生活の質であるQOL-ADは改善し、その他の認知機能や日常機能に関してはケトン食で12週間スコアが維持されている状態で、通常食では低下を示しています。研究の期間や評価項目が違いますが、ケトン食は低下が抑制されているのではなく、維持または改善を示しています。

また「糖尿病や糖尿病予備軍は軽度認知機能障害から認知症になるスピードを加速させる」で書いたように、糖質過剰摂取が認知症を加速します。アルツハイマー病は3型糖尿病なのです。糖質過剰症候群です。

アデュカヌマブに年間610万円かけても認知機能の低下速度が少しだけゆっくりになるだけでしょう。根本的な解決にはなりません。糖質制限やケトン食ならお金はかかりません。

さて、どちらを選びますか?

4 thoughts on “アルツハイマー病の新しい薬「アデュカヌマブ」

  1. ”アミロイドβを減少させる効果があるのですが、これは単なる症状の一つであり、本当にアルツハイマー病の原因なのでしょうか?原因として証明されたものではないでしょう。このことはスタチンの問題と似ています。スタチンはコレステロールを低下させますが、心血管疾患の原因は果たしてコレステロールの増加でしょうか?”

    『アルツハイマー病 真実と終焉』に、まさに同様のことが記載されていました。          果たして画期的な新薬なのでしょうか?

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      製薬会社にとってはお金を生む画期的な新薬でしょう。対象となる患者はどんどん増加中ですから。

  2. 以前、向精神薬について調べたことがありますが、まず、治験のデータ数の少なさに驚きました。
    300人以下のデータしかないものがいくつもあったように記憶しています。
    昔、統計学をかじったものからすれば、こんなデータ量では何も判断できないと感じました。
    さらに驚くことに統計的に有意差があると言える向精神薬はNaSSA系の薬品のみで他は有意差がないと言う記事も見たことがあります。
    有意差がない=効くか効かないか分からない向精神薬なのにその大半ははっきりとした強い習慣性と副作用があります。
    こんなものが医薬品として承認されているのかと製薬会社の政治力に驚きました。
    また、脳神経に作用する薬品の危うさも実感しました。

    一連の報道にアデュカヌマブの裏の事情を感じるのは私だけでしょうか。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      向精神薬の治験の数は少なそうですね。効果のわりに与える副作用などの大きさはかなりでしょう。
      そして、抗うつ薬の適応もどんどん広げられ、うつとは関係ない人まで抗うつ薬が処方されている現状です。
      やはり世の中金の力なのでしょうね。

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