運動の有無にかかわらず糖質制限は様々な改善を認める

糖質制限ではかなり体重減少を認めますが、それに運動をプラスするとさらに良い結果となるでしょうか?

今回の研究では、平均年齢22.2歳、BMI25.1の女性に4週間の糖質制限を行ってもらい、さらに3つのグループに分けて運動なし、高強度インターバルトレーニング(HIIT)または中強度連続トレーニング(MICT)の運動群に分けて比較しています。毎日のエネルギー摂取量の約65%が脂質、25%がタンパク質、10%が炭水化物から摂取し、炭水化物は1日50g未満としました。参加者が糖質制限を確実に順守するために、研究期間中、毎日尿中ケトン体検査を行い、週3日(平日2日と週末1日)に食事記録を行いました。運動なしグループ、高強度グループ、中強度グループでそれぞれ95.6%、96.6%、96.7%の日に陽性の尿中ケトン体が検出されました。かなりちゃんと糖質制限をしていたようです。(表は原文より改変)

運動なし高強度中強度
年齢21.6(4.3)21.4(2.9)21.8(3.1)
身長(cm)161.4(4.1)163.5(6.4)161.1(4.4)
体重(kg)64.6(9.3)62.1(8.3)66.7(8.8)64.0(8.3)64.4(6.7)61.9(6.3)
BMI24.8(3.3)23.8(3.1)24.8(2.0)23.9(1.9)24.8(1.9)23.8(1.9)
収縮期血圧(mmHg)113(11)108(9)111(8)106(13)111(8)106(10)
拡張期血圧(mmHg)71(9)69(8)70(6)66(8)71(5)68(9)
空腹時血糖(mmol・L -14.8(0.3)4.6(0.5)4.8(0.5)4.7(0.6)4.8(0.3)4.7(0.3)
インスリン(µIU・mL -114.0(5.8)9.3(6.2)13.3(7.4)9.4(5.8)14.4(9.0)11.3(6.5)
C-ペプチド(pg・mL -11016.7(368.9)911.7(440.2)1218.8(470.8)968.0(335.6)1072.9(336.9)801.8(343.2)
HOMA-IR3.0(1.3)2.0(1.5)2.9(1.7)2.0(1.3)3.2(2.1)2.4(1.5)
グルカゴン(pg・mL -164.7(33.1)64.6(33.5)49.2(16.8)62.4(27.3)51.4(17.5)61.6(26.2)
レプチン(ng・mL -113.5(9.5)7.6(7.7)11.4(5.4)6.6(3.6)15.1(7.0)7.5(6.9)
グレリン(pg・mL -1860.7(704.3)698.4(584.2)588.5(324.9)517.1(231.7)794.1(400.1)619.8(463.4)
GIP(pg・mL -145.2(15.7)63.0(35.9)43.2(11.2)57.4(33.4)49.5(27.6)53.1(26.5)
運動なし高強度中強度
∆重量(kg)−2.5(1.8)−2.7(1.3)−2.4(1.3)
∆ BMI−0.9(0.6)−1.0(0.5)−0.9(0.5)
∆ 収縮期血圧(mmHg)−5(6)−5(8)−6(7)
∆ 拡張期血圧(mmHg)−2(7)−4(6)−3(6)
∆ 空腹時血糖(mmol・L −1−0.2(0.6)−0.2(0.5)−0.1(0.3)
∆インスリン(µIU・mL -1−4.8(5.4)−3.9(3.0)−3.2(4.3)
∆ HOMA-IR−1.0(1.3)−0.8(0.7)−0.7(1.0)
∆グルカゴン(pg・mL -1−0.1(40.5)13.2(35.5)10.2(36.4)
∆ C-ペプチド(pg・mL -1−105.0(412.6)−250.8(519.8)−271.1(496.4)
∆レプチン(ng・mL -1−5.9(8.2)−4.8(7.5)−7.6(10.3)
∆グレリン(pg・mL -1−162.3(325.4)−71.4(161.9)−174.3(244.6)
∆ GIP(pg・mL -117.8(34.5)14.1(25.5)3.6(45.9)

結果は、体重減少、収縮期血圧は5〜6 mmHg低下、 インスリン抵抗性、空腹時インスリン、レプチン、およびグレリンのレベルも大幅に減少しました。ただし、空腹時血糖値、グルカゴン、およびGIPに有意な変化はありませんでした。さらに、3つのグループ間でグループの違いは見つかりませんでした。

たった4週間でも糖質制限で様々な改善が認められました。しかし運動の追加効果はありませんでした。運動は痩せるためではなく、健康のためです。エリートではない通常の人が運動して痩せることはまず無理です。体重減少は食事の変更が必要です。食事を変えずに、痩せるために必死にジムに通ったりする人もいると思いますが、1か月経っても体重が減らないのに、1年やっても体重が減るわけがありません。ジムのトレーナーには運動が足りないと言われるかもしれませんが、それは通う回数を増やさせる目的かもしれません。

今回の研究では運動の追加効果はありませんでしたが、数値に現れない健康への効果はあるのではないかと思いますし、やはり筋肉を増やしたり維持したりするには運動も必要だと思います。また、4週間でははっきりとした効果は見えてこないのでしょう。運動は続けるべきだと思います。

さらに4週間を超えて糖質制限を行っていくときに、運動をしているかどうかの違いは現れてくる可能性はあると思います。

糖質制限は運動なしでも体重が減少しますが、やはり運動は行うべきだと思います。

 

「Carbohydrate Restriction with or without Exercise Training Improves Blood Pressure and Insulin Sensitivity in Overweight Women」

「運動トレーニングの有無にかかわらず炭水化物制限は太りすぎの女性の血圧とインスリン感受性を改善する」(原文はここ

4 thoughts on “運動の有無にかかわらず糖質制限は様々な改善を認める

  1. 運動に比しての糖質制限の有効性に(良い意味)驚きです。

    運動は大事ですが、ジムではトレーナーに糖質&プロテイン強制されますね。
    きままにrunningしているのが一番です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      特に年をとってきたら持久系の運動の方が良いと思います。
      糖質とプロテインで筋トレではmTORが過剰に活性化するかもしれません。

  2. いつも感心しながら、拝読させていただいています。
    昨年(2021)、ジョンJ.レイティ著「脳を鍛えるには運動しかない!」という本を読み、「糖質制限+有酸素運動」が精神的にも肉体的にも一番効果的で重要であると再認識しました。

    1. 三世 敏彦さん、コメントありがとうございます。

      私も読みました。「糖質制限+有酸素運動」ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です