2型糖尿病では末梢神経障害は頻繁に認められ、診断時にはすでに8.3%、5年後には16.7%、10年後には41.9%も神経障害を有するという報告があります。(この論文参照)
もちろん、最も重要な原因は高血糖だと思いますが、2型糖尿病の人では同時に脂質異常症を伴うことも多く、予防的であってもスタチンが処方されていることは珍しくありません。
しかし、コレステロール値を低下させることは、逆に末梢神経障害を助長、悪化させる可能性があります。
今回の研究ではコレステロール値と末梢神経障害の病変の関係を分析しています。(図は原文より)
上の図は、Bは多発性神経障害なし(総コレステロール値=220mg/dL)、Cは中等度の多発性神経障害(総コレステロール値=167mg/dL)、Dは重度の多発性神経障害(総コレステロール値=40mg/dL)の坐骨神経の画像です。その下にあるのが、その3人の患者の神経病変(赤)と神経容積(黄色)を3次元的に表したものです。
コレステロール値が低い方が神経障害が重症です。神経の容積も増加し、腫脹しているようです。
上の図はAは脂質等価病変というものの割合と総コレステロールの関係です。脂質等価病変は恐らく神経の中の脂質成分を示していると思います。総コレステロール値が高いほど脂質等価病変の割合は少なくなっています。Bは最大病変の長さと総コレステロールの関係です。これも総コレステロール値が高いほど病変の長さは少なくなっています。Cは神経の平均断面積と総コレステロールの関係です。これも総コレステロール値が高いほど断面積が小さくなっています。
これらはどれも総コレステロールおよびLDLコレステロールと負の関連がありました。つまり、コレステロール値が低いほど神経障害病変は悪くなっていることになります。
スタチンによるコレステロールの低下は、神経の軸索再生に利用できるコレステロールの低下と関連しており、シュワン細胞のコレステロールに富むミエリン鞘の脂質の組成が変化し、神経腫脹を引き起こしと考えられます。高血糖で神経障害が起きても、コレステロールの供給が低下すれば神経の再生も低下し、神経の伝導も低下してしまいます。
神経再生には恐らく十分なコレステロールが必要なのだと考えます。
2型糖尿病で末梢神経障害に悩んでいる方は、当然糖質制限で血糖値を安定させた上で、スタチンなどのコレステロールを低下させる薬を飲んでいるのであれば、止めてみることも検討した方が良いかもしれません。
「Association of Serum Cholesterol Levels With Peripheral Nerve Damage in Patients With Type 2 Diabetes」
「2型糖尿病患者における血清コレステロールレベルと末梢神経損傷との関連」(原文はここ)
スタチン処方って、(患者の健康と引き換えにした)医療機関や製薬会社の大きな
財源なんでしょうか。
他にもそういう薬はありそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
医療もビジネスですから。慢性疾患の多くは本来は慢性ではないはずです。
食事も変えず薬で対処するから慢性になるだけでしょう。
いつも勉強させて頂いております。
皆様お気付きかとは存じますが、
気になりましたのでご確認頂きたくコメントしました。
図に挟まれた記事の中段末尾の「コレステロール値が高い方が神経障害が重症です。神経の容積も増加し、腫脹しているようです。」の件は、コレステロール値が低い方が、ではないかと思いますがいかがでしょうか。
石川さん、ご指摘ありがとうございました。
訂正しておきました。