大人は子供よりもケトン体を多く作れないかもしれない

糖質制限をしている人では通常の食事をしている人よりも多くのケトン体が産生されます。ケトン体を産生する能力は大人と子供ではどれほど違うのでしょうか?

今回の研究では、大人と小児のケトン食によるケトン体産生能力を比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
小児(n = 15)大人(n = 13)
性別:
7(47%)8(61.5%)
女性8(53%)5(38.5%)
平均年齢(年)3.0±3.361.4±5.3
診断:
てんかん13(87%)
代謝障害2(13%)
脳腫瘍13(100%)
食事のタイプ:
古典的なケトン食療法11(73%)
修正アトキンスダイエット1(7%)13(100%)
組み合わせ3(20%)

上の表は大人と小児のそれぞれの特徴です。大人はすべて脳腫瘍(高悪性度の神経膠腫)の患者で、小児ではほとんどがてんかんの患者です。大人の平均年齢は61.4歳、小児は3歳です。

上の図は横軸がケトン比(脂質(g):炭水化物(g)+タンパク質(g))です。古典的なケトン食療法では4:1〜3:1のケトン比)、修正アトキンスダイエットでは1:1〜3:1のケトン比です。実際の食事の摂取量は残念ながら食事アンケートによるデータです。縦軸は血中のケトン体値です(日本の単位にするには1000倍してください)。同じケトン比でもケトン体値はかなり差があり、小児の方が多くのケトン体を産生できるようです。

このようなことが起きる理由は何でしょう。この研究の参加者の大人の13人中5人がBMI30以上であり、5人がBMI25以上でした。つまり、すでにインスリン抵抗性が高い人が多く含まれていた可能性があります。

上の図は対象となった人のベースラインと食事療法中(2~4週)のときのパラメータです。大人ではインスリンがベースライン14→11.4と少し減少はしていますが、まだ2桁の値です。この空腹時インスリンの高さがもしかしたらケトン体値の上昇を妨げている可能性があります。恐らく食後のインスリン分泌量も大人では小児と比較して高い可能性があります。そうだとすれば長期に糖質制限を続けていればもう少し大人でもケトン体が増加するかもしれません。ただ、私のケトン体値はそれほど高くありません。もちろんケトン食を摂っているわけではないので、それほど高くはならないと思いますが、500μmoL/Lを超えることの方が少ないです。

また、大人と比較して小児は絶食時、急速にケトン体が増加します。(図はここより)

上の図は絶食時間とケトン体のβヒドロキシ酪酸の量を示しています。新生児はもともとケトン体が高い状態ですが、1~2時間の絶食でもすぐにケトン体産生は激増します。3歳でも大人が16時間後に達成する濃度が、6時間程度で達成されます。

生まれてからずっと続く糖質過剰摂取により、ケトン体産生能力が低下するのかもしれません。また、逆に糖質制限を続けていると、うまくケトン体を使えるようになるのか、それとも必要十分な量の産生を体がコントロールできるようになるのか、最初のころよりもケトン体値が減少しているように感じます。(データはありませんが)

糖質制限を頑張っても、1,000μmoL/Lを超えるケトン体値を維持することは難しいのかもしれません。

 

「Dietary-Induced Ketogenesis: Adults Are Not Children」

「食事誘発性ケトン生成:大人は子供ではない」(原文はここ

6 thoughts on “大人は子供よりもケトン体を多く作れないかもしれない

  1. 子供の病気に自家中毒症(周期性嘔吐症、ケトン血性嘔吐症)と言う病気があります。
    主に子供が嘔吐を繰り返す場合、尿検査でケトン体が確認されると確定診断になるようです。
    したがって、治療方法は炭水化物の摂取でケトン体を下げると言うものです。
    しかし、改善せず、嘔吐を繰り返す場合が多いようですが、原因と結果を取り違えているのではないかと常々思っています。
    要するに何らかの原因で嘔吐を繰り返し、不足したエネルギーを補うために脂肪酸代謝となった結果、ケトン体が産生されているのではないでしょうか。
    子供のケトン体が増えやすいのであれば、なおさらその可能性が高いように思います。
    さらに言えば、嘔吐は炭水化物の拒絶症状ではないかとも思います。だから炭水化物を与えてケトン体値を下げても改善せず繰り返すのではないでしょうか。
    悪阻(つわり)も同様に炭水化物の拒絶症状ではないかと思っています。高血糖、高インスリン血症から胎児を守るための生体反応ではないかと想像できます。

    胎児や子供がケトン体エネルギーを多く使っていると考えると以上のような考えに至ります。
    素人の仮説なのでどこまで正しいかは分かりませんが。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      自家中毒症の嘔吐が始まった時点でケトン体を調べることができればわかるでしょうが、
      そんなことは無理ですからね。
      つわりに関しても意味があって症状が出ていると思っています。私も同じ考えです。

  2. 1日1食(夕食、たまに2日1食)、朝は10K~走るか、あるいはヨガなどを1時間程、
    仕事中も無糖の水分やヒマラヤ岩塩のみ摂取。
    5年ほど継続中パフォーマンスに影響するほどの空腹感や脱力感など無く、集中力維持。
    HDL/LDLは高値ですが、血糖値や中性脂肪はだいぶ低値。
    期待のケトン体体質なのでしょうか。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ケトン体質だと思います。ただ、それが血中のケトン体がいくつ以上なければならないということではないかもしれません。
      ケトン体が継続的に産生され、それがエネルギーとして使われていることがケトン体質なのでしょう。

  3. 糖質制限を始めた頃はケトン体値が高かったのですが、年数の経過と共に低めで落ち着きました。
    それでも基準値はオーバーですが、体調は特に問題ありません。
    今は測っていませんが、今後も爆上がりすることはないんだろうな~と思っています。

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      ケトン体値は段々と落ち着く人が多いのではないかと思います。
      ケトン体に適応して、ケトン体質になってくるとそこまでケトン体が上がらなくなるのではないかと思います。

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