脂肪肝は糖質過剰症候群です。脂肪肝という名前から脂肪(脂質)を多く摂ることで起きそうですが、実際には糖質過剰摂取で起こります。
たった2週間の食事の変更で、肝臓の中性脂肪はどうなるでしょうか?そして、糖質制限とカロリー制限ではどちらがより脂肪肝を改善するでしょうか?対象は18人の非アルコール性脂肪肝疾患の人です。平均年齢45歳、BMI35です。糖質制限は1日の炭水化物20g未満、カロリー制限は1日1200〜1500kcalを目標です。(表は原文より改変)
カロリー制限 | 糖質制限 | |
エネルギー摂取量(kcal/d) | 1325±180 | 1553±517 |
食事構成 | ||
タンパク質(%) | 16±3 | 33±4 |
脂質 (%) | 34±6 | 59±7 |
炭水化物(%) | 50±4 | 8±5 |
タンパク質(g / d) | 53±12 | 121±34 |
脂質(g / d) | 49±9 | 105±44 |
炭水化物(g / d) | 169±33 | 26±8 |
脂質摂取量(%) | ||
飽和 | 42±8 | 37±4 |
一価不飽和 | 37±2 | 38±6 |
多価不飽和 | 18±7 | 15±4 |
上の表はそれぞれの食事の内容です。糖質制限でもエネルギー摂取量が少ないのが気になりますが、糖質は26g程度、脂質は105g程度です。一方カロリー制限は糖質169g、脂質49gです。
カロリー制限 | 糖質制限 | |||
前 | 後 | 前 | 後 | |
BMI | 34±9 | 33±9 | 36±4 | 35±4 |
体重 | ||||
(kg) | 96±21 | 92±20 | 97±14 | 92±15 |
(%) | 100 | 96±1 | 100 | 95±1 |
総コレステロール(mg/dL) | 207±29 | 204±53 | 212±34 | 175±24 |
中性脂肪(mg/dL) | 154±65 | 115±46 | 215±90 | 103±34 |
AST(U/L) | 56±28 | 15±4 | 50±18 | 17±2 |
ALT(U/L) | 77±49 | 81±45 | 80±51 | 98±25 |
AST:ALT比 | 0.8±0.2 | 0.2±0.1 | 0.7±0.2 | 0.2±0.1 |
空腹時血糖値(mg/dL) | 122±55 | 106±21 | 113±34 | 87±14 |
肝臓の中性脂肪含有量(%) | ||||
絶対値 | 19±10 | 14±7 | 22±13 | 10±7 |
割合 | 100 | 72±23 | 100 | 45±14 |
上の図は2週間後の結果です。平均の体重減少はグループ間で差がなく、カロリー制限グループで-4.0±1.5kg、糖質制限グループで-4.6±1.5kgでした。肝臓の中性脂肪は、体重減少とともに有意に減少しましたが、カロリー制限グループ(-28±23%)よりも糖質制限グループ(-55±14%)で有意に減少しました。糖質制限ではたった2週間で半減しています。
食事の脂質と糖質の摂取量と肝臓の中性脂肪含有量の減少の大きさの間に有意な関連があり、脂質(r = 0.643、P = 0.004)、糖質(r = -0.606、P = 0.008)でした。つまり、食事の脂質が多いほど、また食事の糖質が少ないほど肝臓の中性脂肪が減少したのです。
また、肝臓の中性脂肪の減少の大きさは、食事介入後の血中の総ケトン体濃度および呼吸商とも高度に相関していました。ケトン体(r = 0.755、P = 0.006)、および呼吸商(r = -0.797、P<0.001)でした。つまり、ケトン体が多いほど、また、呼吸商が低いほど(脂質をエネルギー源にしているほど)肝臓の中性脂肪が減少したのです。
血中のコレステロール、中性脂肪、血糖値、インスリン、およびトランスアミナーゼは、肝臓中性脂肪含有量の減少とは関係ありませんでした。
ただ、驚くべきことに、肝機能の指標となるASTが肝臓中性脂肪含有量の減少に最も反応し、2週間後に30以上減少していましたが、逆に、ALTは変化ていないか、やや増加気味でした。ほとんどの参加者(18人中16人)は、この研究完了後、3.2±1.3カ月の追跡され、体重は変化していませんでしたが、ALTは有意に減少していたようで(88±34から33±16U/L)、参加者の79%で正常化していました。ASTとALTではタイムラグがあるようです。
脂肪肝の改善に脂質を減らすことにあまり効果はありません。糖質を減らすことが重要です。
脂肪肝は糖質過剰症候群なのですから。
「Short-term weight loss and hepatic triglyceride reduction: evidence of a metabolic advantage with dietary carbohydrate restriction」
「短期間の体重減少と肝臓の中性脂肪の減少:食事による炭水化物制限による代謝上の利点の証拠」(原文はここ)
脂肪を摂れば脂肪が付く「脂肪犯人説」は、
通販などの「コラーゲンを摂れば肌若返る」とか、
「鮫軟骨成分で膝症状改善」に通ずると思います
(微細な文字で数秒「個人の感想です。効能を表すものではありません」
など表示はされますが)。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
一度根付いた考えは、なかなか変わりません。
それが商業ベースに乗ってしまえば余計に浸透してしまいます。
外分泌機能の低下した慢性膵炎の場合や、膵切除などの術後では、糖質摂取が多いのか?脂肪の消化吸収が悪いのか?脂肪肝が高頻度に見られます。
ここで、脂肪吸収の消化酵素を多い目に摂取してもらうと、脂肪肝の改善がみられることが多く見られます。
脂肪が吸収、利用されると脂肪肝が治る! 脂肪が入ってこないと人体は困るので、一生懸命肝臓で脂肪合成をする。と考えています。
年寄りサムライさん、コメントありがとうございます。
脂肪をあまり摂らない=糖質過剰となるのが普通なので、脂肪肝となってしまうのでしょうね。