新型コロナウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチン

先日、新型コロナウイルスのワクチンの副反応について、次のような記事がありました。(記事はここ

コロナワクチン3回目接種前に知っておきたい皮膚の副反応 皮膚科医が解説

多くの人が新型コロナウイルスのワクチン接種1、2回目を終え、次は3回目接種という状況になってきました。気になるのは、やはり副反応。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、3回目接種前に知っておくべき皮膚の副反応について解説します。

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さて、これまでコロナワクチン2回接種が進んだ状況下で、皮膚への副反応がいくつか出ることがわかってきました。コロナが流行したときにも言われたことですが、正しく恐れるという意味では、ワクチンを過剰に怖がる必要はないと思います。しかし、副反応を知らされずに接種を受けるのも違うのではないかと個人的には考えています。今回は、3回目の接種前に知っておくべき皮膚の副反応についてまとめたいと思います。

 コロナワクチンによる皮膚障害で最も有名になったのがモデルナアームと呼ばれるものでしょう。コロナワクチン3社(モデルナ、ファイザー、アストラゼネカ)の中でモデルナ製のワクチン(mRNA-1273)で約70%で発症するためにモデルナアームと呼ばれるようになりました。しかし、他社のワクチンでも注射部位に局所反応は起きるため世界的にはCOVIDアームとも呼ばれます。1回目のワクチン接種後、平均7日で症状出現のピークがあり、2回目のワクチン接種後では1、2日目に局所反応が出現します。抗アレルギー薬内服とステロイド外用剤で改善することが多いですが、脇の下のリンパ節が腫れるケースもあり治療期間が長引いた患者さんもいました。

 じんま疹もコロナワクチンで誘導される皮膚障害として報告されています。35.6%が難治性のじんま疹であったとする報告もあり、私たちの病院でも治療に苦労した患者さんを経験しました。

 コロナワクチンによるヘルペスウイルスの再活性化も報告されています。ワクチン接種後の13.8%の人が単純ヘルペスか帯状疱疹を副反応として経験しており、とくに帯状疱疹が10.1%と高値だったようです。一方、単純ヘルペスの再活性化が3.7%程度と低いですがこれは病院への受診率の違いと考えられています。一般的に帯状疱疹は病院に受診し治療を受けることが多いですが、単純ヘルペスは病院に行かず自然に治るのを待つ患者さんも一定数いるため数値に正しく反映されないのではないかと考えられています。

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確かに新型コロナのワクチン後の帯状疱疹は増えている印象があり、以前の記事「やっぱり新型コロナウイルスワクチンの後の帯状疱疹は増えているのか?」に書きました。この記事で取り上げた論文に基づいて某大学の教授は上の記事を書いたのでしょうけど、全く勘違いをしています。完全に間違った内容です。ワクチン接種後の人の13.8%が単純ヘルペスまたは帯状疱疹、10.1%が帯状疱疹になったわけではありません。皮膚の反応を示して受診した人の中の10%が帯状疱疹にだったのです。

新型コロナワクチンの全体の10%が帯状疱疹になっていたらもっと大騒ぎです。皮膚科もお祭り騒ぎでしょう。この先生が言いたいことは結局なんだったのでしょうか?暗に帯状疱疹ワクチンへの誘導なんでしょうか?

さて、帯状疱疹ワクチンは現在2種類あります。一つは生ワクチン。日本では乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」、アメリカではZostavaxというワクチンです。もう一つは遺伝子組み換えワクチン「シングリックス」です。

では、効果のほどはどうでしょうか?アメリカの生ワクチンは帯状疱疹の発生率が51.3%減少、帯状疱疹後神経痛の発生率も66.5%減、帯状疱疹の重症度も61.1%低下でした。(この論文参照)効果の期間はよくわかりませんが、3年の時点でも効果があるけど減弱しているとしています。

遺伝子組み換えワクチン「シングリックス」は50歳以上で97.2%発症予防効果が認められています。(この論文参照)効果の期間は9年でもまだあり、予測では15年でも大丈夫だということです。(この論文参照)

そうすると生ワクチンよりもシングリックスの方が良さそうですね。では、ここで重篤な副反応であるギランバレー症候群の発症について見ていきましょう。ギランバレー症候群は新型コロナウイルスワクチンのときもJ&J社製のワクチンでリスク増加が取り上げられていました。(ここ参照)2021年12月5日までに日本で実際に報告されているギランバレー症候群の件数は91例(ファイザー)、15例(モデルナ)です。(データはここより)約1億人が接種していることを考えると、通常のインフルエンザワクチンと同等ぐらいなんですかね。

話は帯状疱疹のワクチンに戻って、シングリックスと生ワクチンのギランバレー症候群のリスクはどうでしょうか?

ワクチン接種後のリスク期間(1-42日)と対照期間(43-183日)で、シングリックスと生ワクチンのギランバレー症候群リスクを比較しました。

そうすると、メディケア請求データベースの分析では、シングリックスの方が生ワクチンと比較して2.34倍もリスク期間にギランバレー症候群発症リスクが増加していました。医療記録を用いた分析でも、リスク期間中はリスクがおよそ5倍高くなっていました。また、コントロール期間と比較してリスク期間では2.84倍ギランバレー症候群リスクが高く、1回目シングリックスの接種で9.3倍リスクが高くなっていました。

つまり、有効性は生ワクチンの方が組み換えワクチンよりも低いですが、ギランバレー症候群は生ワクチンの方が少ないことになります。もちろんシングリックスの方がギランバレー症候群が増加すると言っても100万例に3件の増加です。多いと考えるのか少ないと考えるのか、それぞれ違うでしょうが、結構多いな、という印象です。

しかし、いずれにしてもワクチンは免疫を操作する医療行為です。100%安全であるわけではありません。一般的なインフルエンザワクチンでも同様です。インフルエンザワクチン接種によりギランバレー症候群が誘発されるリスクは1~2人/100 万回接種と推定されています。(ここ参照)いつ自己免疫が悪さをするかもわかりません。

イスラエルではすでに4回目の新型コロナウイルスワクチンの接種する方針のようです。(ここ参照)こんなに頻繁に免疫を刺激して、本当に自己免疫疾患が増加しないのでしょうか?世界中の人が実験台になる時代が来てしまったようです。リスクとベネフィットを自分で考え、どのワクチンが自分には必要であり、どのワクチンが不要なのか、自分の責任で判断しなければなりません。

 

「Risk of Guillain-Barré Syndrome Following Recombinant Zoster Vaccine in Medicare Beneficiaries」

「メディケア受給者における帯状疱疹の組換えワクチン接種後のギランバレー症候群のリスク」(原文はここ

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