明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
2日、3日の箱根駅伝、青山学院大学は強かったですね。駅伝を見ていたら、1人選手の腕に白い丸い物体を見つけました。フリースタイルリブレを装着していたんです。恐らく様々な大学がすでに血糖値のデータをフリースタイルリブレで取っているんでしょうね。
逆に糖尿病の専門医でもフリースタイルリブレを自分で使ったことがない人も多いのではないでしょうか?もし使っていたら、もっと多くの専門医が自分の食事による食後高血糖に気が付いているはずです。自分の食後高血糖に気付けば、もっと糖質制限を推奨する専門医がいるはずです。
さて、今年の第1回目の記事です。医師(医師だけではないかもしれませんが)は血液検査データの脂質に関してLDLコレステロールばかり気にするように見えます。なぜなのでしょう?もちろん、スタチンというLDLコレステロールを低下させる薬があるからというのが一番でしょう。そして、LDLコレステロール=悪玉という教育をずっと受けていて、疑問にも思わないことも大きいでしょう。
他の角度からこのことを考えてみましょう。アメリカの1998〜 2004年のNHANES調査の個人のデータを使用して、20〜30歳の若年成人を代表するシミュレートされた母集団を作成しました。冠動脈疾患の発症に影響を与える様々な因子を正常化することによりどれだけ心筋梗塞の発生率を低下させることができるかを分析しています。(図は原文より、表は原文より改変)
正常化のターゲット | 心筋梗塞の発生率の低下(致命的および非致命的)(%) | |
---|---|---|
インスリン抵抗性 | 20〜30歳での平均値 | 42 |
収縮期血圧(mmHg) | 114 | 36 |
HDLコレステロール(mg/dl) | 46(男性)、54(女性) | 31 |
BMI | 22.5 | 21 |
LDLコレステロール(mg/dl) | 108 | 16 |
中性脂肪(mg/dl) | 108 | 10 |
空腹時血糖(mg/dl) | 86 | 9 |
喫煙 | 喫煙しない | 9 |
家族歴 | 家族歴なし | 4 |
因果関係が確立されていない | ||
遊離脂肪酸(mg/dl) | 20 | 18 |
CRP(mg / dl) | 0.32 | 10 |
ApoB(mg / dl) | 85 | 9 |
Lp(a)(mg/dl) | 57(黒人)、21.5(非黒人) | 9 |
ホモシステイン(μmol/l) | 7.0 | 5 |
すべての変数 | 94 |
上の表で、因果関係が確立されていない因子を除いて、インスリン抵抗性で42%、収縮期血圧で36%、HDLコレステロール31%、BMI21%、LDLコレステロール16%、中性脂肪10%、空腹時血糖値と喫煙は両方とも9%、家族歴で4%、正常化することで心筋梗塞を予防できます。家族歴はどうしようもないので、除いて考えましょう。
インスリン抵抗性増加、HDLコレステロールの低下、BMIの増加、中性脂肪の増加、空腹時血糖の上昇は全て糖質過剰摂取で起こります。高血圧も私は糖質過剰摂取で起きていると考えています。そうすると、LDLコレステロールと喫煙以外は糖質過剰摂取によるものと考えられます。
現在の医療は糖質過剰摂取状態のまま様々な病気を治療しようとしています。そうすると、インスリン抵抗性、BMI、空腹時血糖、中性脂肪も高いままですし、HDLコレステロールを上げる薬はありません。もちろん血圧を下げる薬はあります。そうすると、あとはLDLコレステロールに注目する以外心筋梗塞を予防する方法がありません。だからわずか16%しか発生率低下させることしか期待できないLDLコレステロールを下げようと必死になってしまうのです。
LDLコレステロールは糖質過剰摂取で必ずしも上がるわけではなく、逆に糖質制限で激増す人もいます。糖質過剰摂取という前提ではLDLコレステロール高値は小さな危険なsdLDLが増加するので、低下させる意味があるのかもしれません。しかし糖質制限ではHDLコレステロールが十分に高く、中性脂肪が十分に低いのでLDLは大きなLDLで質の良いLDLと考えられます。この場合は特にLDL低下のメリットはほとんどないでしょう。
上の図はインスリン抵抗性を発症する運命にある人、または発症しないと考えられる人の致命的および非致命的心筋梗塞発症の予想される割合です。最も発症率が高いのは未治療のインスリン抵抗性ありの人であり、次には治療をしているインスリン抵抗性の人です。若年成人の約50%は、ある程度のインスリン抵抗性を発症する運命にありますが、ある程度のインスリン抵抗性を発症する運命にある人は、そうでない人よりも冠動脈疾患のリスクが3倍近く高くなります。インスリン抵抗性を発症する運命にある人々では、インスリン抵抗性を治療して正常化することでリスクが約55%減少します。
このように、インスリン抵抗性がLDLコレステロールよりもかなり重要視されるべきなのに、インスリン値は糖尿病でない限り検査されることはないでしょう。最も正常化すべきインスリン抵抗性はほとんど無視されています。インスリン値は糖尿病の病名が無いと保険が効かないので検査がされないというのもありますが、そうであれば空腹時血糖、HDLコレステロール、中性脂肪値からも十分に推測できます。
脂質異常は通常LDLコレステロール値の上昇ばかり気にされて、中性脂肪値はあまり重要視されません。HDLコレステロールが低いのもそれほど指摘されないかもしれません。
インスリン抵抗性のままスタチンを飲んでいる人がいかに多いか。糖質過剰摂取のままでは冠動脈疾患、心血管疾患の治療および予防はほぼ不可能です。
多くの医師はどうしても糖質過剰摂取をやめようとしないので、LDLコレステロールにすがるしか道がありません。つまり、スタチンなどLDL低下薬のみの治療を行い、それでも心血管疾患を発症する人にはさらにLDLを下げるしか方法は無いと思ってしまうのでしょう。
しかし、糖質制限をすれば様々な危険因子が低下し、リスクが非常に低下します。薬さえ必要ありません。どちらが患者のメリットになるかは考えなくてもわかります。
心血管疾患は糖質過剰症候群ですから、予防には糖質制限ですね。
今年も1年、糖質制限をして健康に過ごしましょう。
「Relationship of Insulin Resistance and Related Metabolic Variables to Coronary Artery Disease: A Mathematical Analysis」
「インスリン抵抗性および関連する代謝変数と冠動脈疾患との関係:数学的分析」(原文はここ)
今年も例年同様、有益な記事を期待しています。よろしくお願いします。
先生がtwitterでも言及されていたハンバーガーを高齢者に勧める医師。
また、画期的な糖尿病治療法として、自動的に最適量のインスリン注射ができる装置の記事も
見つけてしまいました(血糖値が自動的に下がるので安心して糖質を摂ってしまいそうです。)
本気なのか冗談なのか、単なるお金儲けなのか、いずれにせよ「健康的」と信じてしまう人も
いるでしょうからそれが気の毒です。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
実は高齢者にジャンクフードを勧める医師がいるのはビックリしていません。
高齢者にスポーツドリンクを推奨する医師となんら違いはありません。
しかし、一般の人では信じてしまう人もいるでしょうね。
明けましておめでとうございます!
今年もブログ記事楽しみにしています(*^^*)
ミホさん、明けましておめでとうございます。
今年もできる限り記事を書きたいと思っています。
清水先生、本年もよろしくお願いします。
今回のタイトル、なぜ医師はLDLコレステロールばかり気にするのか、本当にそう思います。中性脂肪が低値でHDLが高値であっても、気にしているのはLDLのみですね。まだまだエビデンスが足りないのか、やはりガイドラインに掲載されないとダメなのでしょうか?
早くsdLDLが普通に測定できるようになればいいのですが。
じょんさん、コメントありがとうございます。
sdLDLも測定できれば良いですが、私としてはインスリン値をもっと健診とかでも普通に測定できるようにしてほしいです。
清水先生の言われるように、健診でインスリンを測定項目に入れていただきたいと思います。sdLDLは一般的でないですが、インスリンであれば比較的ハードルは低いように思います。
しかし、その意味がまだまだ理解されていないため、健診の項目になるのは先の話なのかもしれないですね。