食物繊維は便秘を解消しないどころか便秘の原因かもしれない

一般的には便秘には食物繊維を多く摂る方が良いと言われています。本当でしょうか?

食物繊維を増やすと、うんこの量が増えることはよく知られています。先日の記事「食物繊維の増加はうんことおならを増やす」に書いたように、2倍にもなります。そもそも便秘の人はうんこを出す力が衰えている可能性があります。そのような人がどんどんうんこだけを作り出しても、うんこが出やすくなるとは考えられません。

例えば筋肉の衰えた高齢者に、5回に1回しか持ち上げられないバーベルの重りを、筋肉をもっと付けたいからと言って2倍に増やしても、余計に持ち上げられないだけで筋肉は付きません。(たとえが相変わらず下手ですが)

それと同様に、うんこを出せない人にうんこの量を増やしても便秘は解消しないでしょう。

今回の研究では、内視鏡検査で便秘の器質的原因が除外された便秘の男性16人、女性47人、年齢の中央値47歳(20-80歳)を対象として、研究が行われました。

2週間食物繊維を含まない食事(野菜、シリアル、果物、全粒粉パン、玄米などの食物繊維の摂取を2週間完全に停止)をしてもらい、その後自分たちで許容できるレベルで食物繊維の摂取量を減らした食事をしてもらいます。6か月後どうなったでしょう。

2週間より後は自分の許容できるレベルで低食物繊維の食事をするのですが、6か月の時点で、41人が食物繊維を含まない食事を続け、16人が食物繊維を減らした食事を続け、6人が宗教的または個人的な理由で高繊維食を再開しました。

6か月後では、排便の間隔は食物繊維摂取量の減少とともに減少しました。食物繊維の摂取を完全に停止した41人の患者は、排便の頻度が3.75日に1回から1.0日に1回に増加しました。食物繊維の摂取量を減らした16人では、高食物繊維食のときでは4.19日ごとに1回の排便だったのが、12人は毎日排便し、3人は2〜3日ごとに1回排便し、1人は4〜6日ごとに排便し、平均では1.9日に1回の排便となりました。食物繊維の摂取量が多い人では排便頻度に変化はなく、6.83日に1回の排便でした。(表は原文より改変)

症状ベースライン6か月後高食物繊維(6人)6か月後食物繊維の減少(16人)6か月後食物繊維なし(41人)
肛門出血31440
便秘636120
腹部膨満33650
排便時のいきみ63690
腹痛13320

上の図は便秘に関連する症状です。6か月後で高食物繊維食をしている人ではほとんどの人が様々な症状を訴えていましたが、食物繊維なしの人たちは全ての症状が消失しました。排便時のいきみも食物繊維を減らした人のうち、16人中7人が改善を示しました。

こうしてみると、便秘の原因は食物繊維の摂取ということが最も考えられます。肛門の出血(痔)も、もしかしたら食物繊維を摂っているから起きるのかもしれません。

慢性の便秘ではうんこの水分が失われて硬くなって出づらくなっているかもしれません。しかし、食物繊維を多く摂取しても本当にうんこの水分量が増加して柔らかくなるかはわかりません。そして、食物繊維を増やせばさらにうんこの量が増加してしまうので、さらに腸の中でうんこが渋滞しやすくなるでしょう。

すでに便秘でうんこが出しづらくなっている人に、より多くのうんこを作らせることで便秘を改善しようなどという考えは非論理的です。食物繊維の摂取は逆に悪化させると考えられます。

便秘の場合、まずはうんこの量を減らして、出しやすくすることが必要かもしれません。どんなうんこでも出せる馬力のある人ではうんこの量が増えても問題は起きないでしょうけど、すでに便秘傾向で、先頭のうんこが詰まっている状態では、うんこの量は減らすべきでしょう。

糖質制限を開始すると、時折便秘になる人がいます。腸内細菌が大きく変化するからだと考えられますが、もしかしたら、糖質制限食ではどうしても野菜などの食物繊維の食材が増加するかもしれません。また、いわゆる市販の低糖質、ロカボ商品もかなり食物繊維が入っているものもありますし、それを売りにしている商品もたくさんあります。

若い女性では、ダイエットや美容目的に野菜を多く摂取して、逆にカロリーが高いという間違った認識で肉、特に脂の多い肉は減らす傾向があるでしょう。その場合、この研究のように食物繊維が増加するだけでなく、エネルギー摂取量も大きく減少するでしょう。エネルギー摂取量が少ないと、もしかしたら腸を動かすエネルギーを後回しにするために腸の動きが低下し、便秘になりやすいかもしれません。さらに糖質過剰摂取では胃腸の運動は低下するでしょうし、肛門直腸の感覚障害が起きている可能性もあります。女性はホルモンの関係もあるでしょう。

便秘はまずは食物繊維をできるだけ排除することが必要かもしれません。つまり、糖質制限をして、肉や魚、卵などを食べて、野菜などは止めるのです。そして、排便がちゃんと整ったところで、少しずつ様子を見ながら食物繊維を増やしていってはいかがでしょうか?

食物繊維と一言で言っても、いろいろあるので、便秘に果たす役割は異なると思われます。便秘解消には大腸の中で発酵せずに線維のままで維持され続け、便から水分を奪い取られるのに抵抗できる食物繊維が必要でしょう。

恐らく、水溶性発酵性繊維(イヌリン、フラクトオリゴ糖、小麦のデキストリンなど)は下剤のような便秘解消効果を提供せず、一部の食物繊維(小麦のデキストリン、小麦ふすま粒子など)は便秘を促進する可能性があるものもあるようです。それについてはまたできれば次回以降に記事にしたいと思います。

 

「Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms」

「食物繊維の摂取を停止または減らすと、便秘とそれに関連する症状が軽減される」(原文はここ

10 thoughts on “食物繊維は便秘を解消しないどころか便秘の原因かもしれない

  1. 常識といわれることに対して、批判的に正論を述べておられると思います。
    一般人は、単純な原因と結果の関係の方が理解しやすいので、繊維質を摂ったら便秘が解消するなどの命題を信じているのでしょう。メディアもそうですね。
    人間の体は(他もですが)そんな単純なものではなく、複雑なものであることから、科学的にいかないと、こういう状態になってしまうと感じています。
    「うんこを出しやすくするには」の視点はいいですね。繊維質の摂取を減らすのもいいですね。
    私なら、うんこを出す体力・筋力をつける、そのための栄養(タンパクやビタミン、ミネラルなど)を摂る方向です。私の場合、逆に下痢気味だったのが、よいうんこが「大量」に毎日出るようになりました。
    これらのことから、糖質はあまり「うんこ」にはならないと思います。うんこが少なすぎて、便秘になりやすいこともあるのではと感じました。
    いずれにしても、糖質減らして、タンパク脂質などを増やせば、改善されると考えました。

    1. いくさん、コメントありがとうございます。

      一般人だけでなく医師ですら単純な思考に陥っています。
      炭水化物ではなく、糖質は吸収されてしまい、うんこにはあまりならないでしょうね。
      うんこが少なくて便秘になるというより、高血糖が腸管の動きや感覚を低下させるのではないかと思います。

  2. 私も食物繊維を増やして(きのことワカメ)お腹の不快症状(ガスの増加)が現れたので、元に戻しました。
    現在言われている野菜をたくさん食べよう、等の健康常識は所詮パラダイムなんだと思います。

    メディアの洗脳は強いので、新しい情報を取り入れて行けない人がたくさんいらっしゃるのでしょうね。

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      私も食物繊維が多い時にはお腹が張ることもあります。
      個人差も大きいですから、その人にとって不必要に増やす必要はないですね。

  3. まさしくその通りの状況です。
    便秘気味なので食物繊維を増やせとばかりに沢山とると、きまってもっと酷い便秘になっていました。
    おかしいなぁとずっと疑問に思っていました。

    そして何らかの事情で食事量が減ると、逆にすんなり出ることがありました。

    長年の疑問が晴れ、スッキリです!

    1. みらさん、コメントありがとうございます。

      現在、様々なものに食物繊維が添加され過ぎていますからね。
      疑問もお腹もスッキリですね。

  4. ○ージーファイバーなる、主に食物繊維と思われる健康食品?
    が便秘対策として標準的に使われている現実もあり、
    世の中やはり「イメージ(便秘には食物繊維!)」で流れているのです、ね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ○ージーファイバーは特定保健用食品ですからね。堂々と便秘改善を謳えます。

  5. 先生こんにちは。
    便通に関しての記事、楽しみにしておりました。他の読者の皆様のエピソードを拝見していても、やはり食物繊維摂りすぎは人によってはかえって便を詰まらせてしまうことが多いのですね。

    私もどういうわけか幼い頃から便秘ぎみ??だったのか、母が言うにはどんなに朝トイレに座らせてもアンタは排便の習慣がつかなかった、と。
    その後も毎日出るといこともそれほどなく現在に至ります。当然これまで当たり前に言われてきたこと…野菜を沢山食べましょう、を意識してきました。
    なのにツラいトイレ時間?を過ごしていました。
    その謎が解けたのはつい3年ほど前です。
    MEC食に興味を持って本を読んでみればまさにこの、食物繊維摂りすぎがかえって便秘をひどくしてしまう原因かもしれないと。
    私の場合は確かに納得がいきます。
    肉も魚も卵も大好きですが野菜海藻きのこ類とにかく大好きで、食べるとなれば大量です。
    そうすると決まってお腹が張る感じがするし、かといって便が出るわけでもないのです。
    カサが増えてただただ苦しいだけです…

    自分にとっての食物繊維の適量がいまだによくわかりませんが、野菜をたっぷり食べて食物繊維を摂らなければいけないという昔からの刷り込みもまた事実かな、と。

    あと、低糖質のパンを食べるとお腹がポコポコ必要以上に動いてるようです。

    1. みみさん、コメントありがとうございます。

      私も野菜などが好きなのでたくさん食べます。便秘にはなりませんが、便は大量です。
      便秘の人は子供のころから便秘なんでしょうかね?
      腸内細菌の違いかもしれませんね。

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