逆流性食道炎は胃酸が逆流して食道に炎症が起きる疾患です。通常はPPI(プロトンポンプ阻害薬)が処方されてしまいます。
では、この逆流性食道炎の発症を予測する因子はどうなんでしょうか?
今回の研究では、日本人を対象として、逆流性食道炎と診断された時点で30歳以上であり、診断前の5年間に3回以上の健診を受けていて、かつ診断前の2年間に上部消化管内視鏡検査を受けていた患者2,066人を選択しました。年齢と性別および受診医療機関がマッチする対照群4,132人と比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
調整済みOR [95%CI] | |
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BMI(1kg/m2増加あたり) | 1.05 [1.03、1.07] |
ALT(10IU/L増加あたり) | 1.05 [1.02、1.09] |
現在の喫煙 | 1.15 [1.01、1.32] |
胃酸逆流症状 | 2.72 [2.22、3.33] |
食道裂孔ヘルニア | 2.32 [2.01、2.69] |
萎縮性胃炎 | 0.66 [0.58、0.74] |
上の図は逆流性食道炎関連する因子です。逆流性食道炎の可能性は、BMIが1増加ごとに1.05倍、ALTが10高いごとに1.05倍、現在の喫煙で1.15倍、胃酸逆流症状で2.72倍、食道裂孔ヘルニアで2.32倍。反対に萎縮性胃炎は0.66倍と負の関連が示されました。萎縮性胃炎はピロリ菌感染で良く認められ、胃酸の分泌が低下するからでしょう。
上の図は黒いグラフが逆流性食道炎の人、白いグラフが対照群です。Aから順にBMI、腹囲、空腹時血糖、中性脂肪、HDLコレステロール、AST、ALT、γ-GTPの値と胃酸逆流症状、腹部膨満感、食道裂孔ヘルニアの症状の割合を示しています。横軸が診断された時点から遡った年数を示しています。
BMI、腹囲、中性脂肪、ALT、胃酸逆流症状は5年前の時点から連続して有意差が認められました。HDLコレステロール、AST、γ-GTP、腹部膨満感、食道裂孔ヘルニアは3~4年前から、空腹時血糖は1年前から有意差が認められました。
さて、逆流性食道炎の発症予測因子としてのBMI、腹囲、空腹時血糖、中性脂肪、HDLコレステロール、AST、ALT、γ-GTPを見れば一目瞭然です。糖質過剰摂取によりBMIや腹囲は増加し、空腹時血糖、中性脂肪値は上昇します。さらにHDLコレステロール値は低下し、脂肪肝によりAST、ALT、γ-GTPは上昇します。全て糖質過剰摂取で説明が付いてしまいます。
逆流性食道炎(胃食道逆流症)は糖質過剰症候群です。糖質過剰摂取を続けたまま逆流性食道炎を治療しようとするとPPIをずっと飲み続けなければなりません。PPIの長期の使用は様々な合併症を招く可能性があります。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は様々な死亡率を上昇させるかもしれない」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その2 PPIは多くの病気を引き起こす可能性がある」など参照)そして、しばらくPPIを続けてしまうと、止められなくなる可能性もあります。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その1 薬を止められなくする仕組み」参照)
糖質制限をすれば多くの逆流性食道炎は改善します。まずは糖質制限が基本です。
「Predictive Factors for Future Onset of Reflux Esophagitis: A Longitudinal Case-control Study Using Health Checkup Records」
「逆流性食道炎の将来の発症の予測因子:健康診断記録を使用した縦断的症例対照研究」(原文はここ)
応急的な医療処置は勿論必須でしょうが、殆どの不調はやはり服薬などの足し算の治療
ではなく、糖質制限を始めとした引き算の方が有効に見えます。
ただ、不調を抱えて受診したら処方もなく「糖質を控えて、できれば止めて下さい」
と医師に言われたら二度と来院してくれなさそうではありますね。
そういう医師こそ名医と思うのですが、、
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
私は名医ではありませんが、「糖質を控えて、できれば止めて下さい」を連発しています。
それで何割の人が受診しなくなったかはわかりませんが、それはそれで良いと思っています。
清水先生、おはようございます。
私は、以前から逆流性食道炎があり、バレット食道のようになっていると言われて、人間ドックでは毎回、食道胃接合部の組織生検をされます。憂鬱になります。PPIを飲んでいたこともありましたが、特に症状もないのですぐにやめました。
糖質制限を続けていきたいと思います。
じょんさん、コメントありがとうございます。
逆流性食道炎にはまず糖質制限ですね。