日本人は欧米人と異なり、肥満でもないのにインスリン抵抗性が増加していることがあります。インスリン抵抗性が生じるメカニズムの一つとして、肥満では脂肪を貯蔵する脂肪細胞が容量オーバーとなり、遊離脂肪酸が漏れ出し、肝臓や筋肉に蓄積されることによるものと考えられています。

肥満ではない人のメカニズムの一つを今回の研究では示しています。この研究ではBMIが正常範囲内(21~25)で心血管代謝リスク因子(高血糖、脂質異常症、高血圧のいずれか)を持っていない健康な日本人52人を対象としています。平均年齢は41歳、平均BMIは23.1でした。脂肪や肝臓、筋肉のインスリン抵抗性を計測する、2-ステップ高インスリン正常血糖クランプ法(ブドウ糖とインスリンを点滴で持続的に投与することにより、肝臓と筋肉でのインスリンの効き具合を計測する方法。詳細は省略)を行いました。遊離脂肪酸の漏れ出しの指標として、インスリンにより血中の遊離脂肪酸濃度がどれくらい低下するかを評価しました。一般的には、健康な人ではインスリンにより血液中の遊離脂肪酸濃度は急激に低下します。

(上の図は原文より、下の図はこのプレスリリースより)

上の図は左がベースラインとインスリン点滴で刺激したときの、遊離脂肪酸です。右はその変化率を示しています。日本語の図があるので、下に示します。

赤い線は脂肪組織のインスリン感受性が低い人、青い線はインスリン感受性が高い人です。正常な体重の人であっても、人によりインスリンで血中の遊離脂肪酸が低下しにくい、脂肪組織のインスリン感受性が低い人が存在していました。脂肪組織のインスリン感受性が高い人と低い人での特徴を比較しました。

脂肪組織のインスリン感受性が高い人と比較して低い人では体脂肪率が高い、皮下脂肪が多い、肝臓の脂肪が多い、など全身の脂肪量が多いことに加え、体力レベル・日常生活活動量が低い、中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低い、筋肉のインスリン抵抗性がある、という特徴が認められました。なんてことはありません。BMIは違えど、肥満の人と同じ特徴なのでした。つまり、正常体重で健康な人と思われている人でも、代謝異常をきたしているのです。それを健康とは言えませんが、数値や体の症状としては表れていないだけの話です。筋肉だけでなく脂肪組織もインスリン抵抗性になってしまっているのです。

もちろん、遊離脂肪酸の漏れ出しだけが脂肪組織以外の他の臓器への脂肪蓄積をもたらすわけではないでしょう。

いずれにしても、脂肪蓄積、中性脂肪の増加、HDLコレステロールの低下はすべて糖質過剰摂取で起きることです。糖質過剰症候群です。中性脂肪100以上、HDLコレステロール50以下は赤信号でしょう。

結局は糖質過剰摂取は肥満の有無に関係なく、インスリン抵抗性をもたらし、代謝異常を起こし、様々な疾患を来たしうるのです。まずは糖質制限です。

ただ、糖質制限では漏れ出しではなく、エネルギーを届けるために遊離脂肪酸が高くなりますが、それについては次回以降で。

 

「Clinical Features of Nonobese, Apparently Healthy, Japanese Men With Reduced Adipose Tissue Insulin Sensitivity」

「脂肪組織のインスリン感受性が低下した非肥満の、明らかに健康な日本人男性の臨床的特徴」(原文はここ

2 thoughts on “漏れ出す脂肪”
  1. 糖質過剰摂取でインスリン抵抗性の人でも肥満にならない、或る意味うらやましい?
    人がいるのですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      肥満にならなくても不健康であれば、うらやましくありませんが。

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