タンパク質の摂り過ぎは腎機能に有害だというのも、かなり擦り込まれた定説になっています。私はそうとは思っていません。糖質過剰摂取が腎機能に悪影響を与えると思います。
今回の研究では日本人の高齢者を対象に、食事のタンパク質摂取量と推定糸球体濾過率(eGFR)の低下との関連について分析しています。
ただし、いつものように食事アンケートのデータなので、データの質は低いです。SONIC研究というのがあり、2010~2013年に参加登録が行われ、69~71歳1,000人、79~81歳973人、89~91歳272人、計2,245人が登録されているそうです。そのうち、登録時に慢性腎疾患ステージ5以上(eGFR15mL/分/1.73m2未満)、透析治療中、解析に必要なデータの欠落している人などを除外し、1,160人を解析対象としました。
ベースラインでの食事アンケートからタンパク質摂取量を割り出し、4つのグループに分けました。第1四分位群のタンパク質摂取量は1.01g/kg/日、第2四分位群は1.32g/kg/日、第3四分位群は1.59g/kg/日、第4四分位群は2.07g/kg/日でした。平均タンパク質摂取量は1.50g/kg/日でした。ん?日本の高齢者にしてはかなり多いですね?平均動物性タンパク質摂取量は47.3g/日でした。肉で換算すれば230~240g程度摂取していることになります。日本の高齢者がここまでは食べていないでしょう。まあ、それは置いときましょう。
タンパク質摂取量最高のグループは年齢が高く、高血圧が少なく、尿酸値が低く、体重やBMIが低くなっていました。
eGFRは平均69.15mL/分/1.73m2であり、群間に差はありませんでした。
平均追跡期間2.53年でした。1年あたりの平均eGFR変化は、-1.89mL/分/1.73m2でした。(図は原文より、表は原文より改変)
合計 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | |
---|---|---|---|---|---|
ベースライン | |||||
eGFR | 69.1±14.4 | 68.5±13.5 | 68.4±15.4 | 70.0±13.0 | 69.7±15.6 |
体重 | 55.7±9.7 | 64.8±8.4 | 58.1±7.2 | 52.8±6.4 | 47.1±6.7 |
ファローアップ | |||||
eGFR | 64.6±14.3 | 64.1±14.5 | 63.7±14.3 | 65.4±13.0 | 65.0±15.1 |
体重 | 55.4±10.0 | 63.7±9.2 | 56.9±7.8 | 52.3±7.5 | 47.8±7.4 |
年間の変化 | |||||
eGFR | -1.89±2.98 | -1.78±2.81 | -1.90±2.94 | -1.96±3.11 | −1.93±3.07 |
体重 | −0.67±4.93 | −1.06±5.25 | -1.26±4.93 | −0.44±4.71 | 0.16±4.71 |
体重低下4.5kg/年 | |||||
21(100%) | 10(47.6%) | 9(42.9%) | 1(4.8%) | 1(4.8%) |
上の表はベースラインとその後の変化です。タンパク質摂取量の少ないグループでは体重低下が目立ちます。年間に4.5kgもの体重低下した人はおよそ90%がタンパク質摂取量の少ない2つのグループの人でした。一方eGFRの変化は群間差はありませんでした。
上の図はタンパク質摂取量の四分位数によるeGFRの変化です。ベースラインで腎機能が保たれていたeGFR60mL/分/1.73m2以上と腎機能低下を示す60未満で分けています。eGFRが60未満の腎機能低下群では、タンパク質摂取量と腎機能変化量に相関が認められ、タンパク質を多く摂取した方が腎機能低下が少なく、さらにタンパク質を植物性と動物性に分けて検討すると、動物性タンパク質の摂取量に関しても、動物性タンパク質摂取量がeGFR変化と有意な関連を示したことを示しました。つまり、総タンパク質および動物性タンパク質の摂取量が多いことが、eGFRを維持する、腎機能を保護する作用がある可能性があるのです。
日本の高齢者は野菜は「ヘルシー」な食品で肉は「不健康」な食材と洗脳されているのか、肉をあまり食べない人が多いと思います。野菜と白米だけのような食事は筋肉量を低下させる可能性があります。さらに、血糖値スパイクを頻回に起こし、腎機能も低下しやすくなるでしょう。
今回の研究のデータは非常に質が低いので、これだけでタンパク質と腎臓の関係を説明することは難しいですが、結論的には間違ってはいないと思います。
肉、魚、卵などのタンパク質は非常に重要です。腎臓だけでなく全ての健康に必要です。慢性腎疾患は糖質過剰症候群です。
「Association between protein intake and changes in renal function among Japanese community-dwelling older people: The SONIC study」
「日本人の地域在住高齢者におけるタンパク質摂取と腎機能の変化との関連:SONIC研究」(原文はここ)
腎臓病に限らず、検査数値が基準を外れれば
生活指導や薬の処方が為されると思います。
担当医師や栄養士の指示に忠実である程、
改善どころか悪化するとしたら、切ないです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
現在の検査の数値の基準値はは糖質過剰摂取状態を前提に作られています。
糖質制限ではどうなのかはわかっていません。