糖尿病薬のメトホルミンは、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」となっていますが、男性、父親側に内服の制限は添付文書には書かれていません。
しかし、今回の研究は妊娠前の男性(父親)のメトホルミン内服が赤ちゃんに大きな問題を起こす可能性を示しています。1997年から2016年までのデンマークでの1,255,772人の出生すべてを対象とし、最終的な分析は1,116,779人です。
3.3%に1つ以上の先天性異常(先天性欠損症)がありました。母親と父親の年齢の中央値はそれぞれ30歳と33歳でした。父親の糖尿病治療薬に曝露されたのは合計7,029人の赤ちゃんで、インスリン5,298人、メトホルミン1,451人、およびスルホニル尿素薬647人でした。(図は原文より)
上の表は先天性異常と妊娠前の父親の糖尿病薬との関連です。1つ以上の先天性異常を持つ可能性はインスリンでは0.98倍と差がありませんが、メトホルミンは1.4倍でした。スルホニル尿素薬は1.34ですが、有意ではありませんでした。
上の図はメトホルミン曝露の期間による分類です。完全に成熟した精子の発達には、約3か月かかるそうです。SDevはその精子発達期を示します。妊娠の前3か月間に薬に曝露していることを意味します。左側が精子発達期の1年以上前、1年前で、右側が1年後、1年以上後です。精子発達期以外のメトホルミン曝露では先天性異常の可能性は高くなっていませんでした。
同じ父親、母親の兄弟の先天性異常の可能性は1.56と1.66で高い傾向はありました。
上の図は先天性異常のカテゴリーです。
メトホルミンに曝露された赤ちゃんの場合、生殖器の異常の可能性は3.39倍と非常に高くなっていました。生殖器の先天性異常はすべて男児で発生しました。
メトホルミンは精子に影響を与えると考えられます。そして男の赤ちゃんの生殖器の異常を引き起こす可能性が高くなるようです。比較的多くの糖尿病でメトホルミンが使われていることを考えると、これは深刻な問題です。すぐに注意喚起と子供を作ることを考えている男性には、メトホルミンを中止すべきです。
安全な薬は存在しません。糖尿病は糖質過剰症候群です。できる限り早い段階での糖質制限で、薬の使用は回避できるはずです。
「Preconception Antidiabetic Drugs in Men and Birth Defects in Offspring : A Nationwide Cohort Study」
「男性の妊娠前の糖尿病薬と子孫の先天性異常:全国コホート研究」(原文はここ)
メトホルミンに限らず、意図せず薬が人体に与える影響の大きさも改めて認識しましたが、
なにより、30歳代前半の(若い)糖尿病罹患が世界的にもカジュアルな現状も怖いです。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
欧米は若い人でも肥満が多く、インスリン抵抗性が高い人が多いので、メトホルミンは安易に処方されるのではないでしょうか?
薬に頼らず、食事を変えれば済むはずなんですが・・・
メトホルミンは長寿薬であると複数の著書に記載があります(例えば、Life Span ―老いなき世界― デビッド・A・シンクレア著など)。
また、別の著書(科学者たちが語る食欲 ―食べ過ぎてしまう人類に贈る食事の話― デイビッド・ローベンハイマ―他著)によると生物(菌類、昆虫から哺乳類に至るまで)の食欲は蛋白質量を満たすようになっており、高炭水化物食では同量の食事では蛋白質が少ないため過食し、肥満するとも記されています。
しかし、高タンパク食は低タンパク食に比べて短命であるが繁殖力が高いそうです。すなわち生物は個の長寿よりも種の存続を選択するようにプログラミングされていると言う事です。
これが事実であり、長寿と繁殖力は相反すると仮定すれば、メトホルミンは長寿=繁殖力低下と解釈できるため、生殖機能に影響するという事はあり得るのかと思えます。ちょっと短絡的かもしれませんが。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
メトホルミンは男性のテストステロンも低下させるとされています。
男性よりも女性の方が長生きであることを考えれば、これも長寿に影響しているかもしれませんね。