肥満を改善するのには、体の脂肪を減らさなくてはなりません。運動すればエネルギーを使うので、脂肪をエネルギーにすれば痩せると思ってしまいます。しかし、多くの人は一時的にエネルギーを使っても、その後に糖質をたっぷり摂取するので、結局また脂肪が蓄積してしまいます。

小児の肥満も問題になっています。子供に運動させて、脂肪を燃焼させようという研究があります。今回の研究では、スポーツドリンクのような糖質入りドリンクを飲んだ場合と、飲まない場合で体の脂肪をエネルギーにできるのかどうかを分析しています。7人の肥満の男の子(平均年齢11.4歳、体脂肪率35.8%)が対象です。彼らに20分×3回の運動をしてもらいました。強度は最も脂肪が燃焼する強度です。運動のとき糖質入りドリンクまたはプラセボドリンクを飲んでもらいました。糖質入りドリンクには1,000mlの液体(6%溶液)あたり60 gのブドウ糖(240 kcal)が含まれていましたが、プラセボは1,000mlの液体あたり3.2gの人工甘味料で味付けされていました。飲む量は除脂肪体重により最初運動前に16ml/kg除脂肪、その後運動中に4回4ml/kg除脂肪を摂取しました。これで約1.2g/分のブドウ糖を供給する計算になるようです。(図は原文より)

上の図は糖質入りドリンク(CARB)およびプラセボ(CONT)の運動の最後の20分間において、脂肪や糖質がどれほどエネルギーとして利用されたかを示しています。左から総脂肪、総炭水化物、内因性炭水化物、外因性炭水化物です。外因性というのがドリンクに入っている糖質を示しています。プラセボ群と比較して糖質入りドリンク群では、糖質をエネルギーにする量はわずかに増加しているように見えますが有意差はありません。しかし、脂肪をエネルギーにするのはプラセボのほぼ半分になっています。

上の図は糖質入りドリンク(CARB)およびプラセボ(CONT)の最後の20分間の運動中のエネルギー源のパーセンテージです。 斜線は総脂肪酸化、黒は内因性炭水化物酸化、白は外因性炭水化物酸化です。運動中に糖質を摂らなければ40%が脂肪をエネルギー源にできていたのに、糖質を摂ると20%程度に低下してしまっています。そして糖質入りドリンクの糖質は全体のエネルギー消費の23.3%を占めています。

これにより20分間の運動で脂肪を酸化する量が1.6g程度低下する計算になるそうです。そして1日30分の運動した場合1年間で1kg脂肪が燃焼する量が減るそうです。

いずれにしても、運動時のスポーツドリンクや運動前の食事などの糖質で脂肪をエネルギー源にする能力を大幅に低下させてしまいます。

痩せるために運動をしている人もいるかもしれません。そして、運動するときにはスポーツドリンクが良いと思い込まされている人もいるでしょう。しかし、運動時に糖質を摂取すれば、脂肪燃焼を大きく抑制することは考えていないでしょう。

そして、糖質過剰摂取であれば、運動時の脂肪燃焼は1時間で10g前後かもしれません。計算上では1年頑張っても3~4kgしか脂肪は減らない計算ですが、この研究のように運動時に糖質を摂れば半減しますし、運動後に糖質を摂れば減った脂肪はまたもとに戻ります。つまりアスリートレベルの運動をしないのであれば、運動では痩せることは難しいのです。

肥満は糖質過剰症候群です。糖質制限なら運動はしなくても3~4kgの減少は1か月で得られる場合もあるでしょう。運動は健康のためです。食事を変えず運動で痩せることは非常に難しいでしょう。

 

「Carbohydrate intake reduces fat oxidation during exercise in obese boys」

「炭水化物の摂取は、肥満の男の子の運動中の脂肪の酸化を減らす」(原文はここ

14 thoughts on “運動中のスポーツドリンクは脂肪の燃焼を大きく減らす”
  1. (今55歳ですが)中学生頃に出現したスポーツドリンクは画期的に感じました。
    その後も朝がぶ飲みして二日酔いを紛らわしたり、マラソンを始めてからも当り前に飲んでいました。
    パフォーマンス向上やなにより健康維持の為には、水と天然塩がベストだと今は感じます。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      そういう私もマラソンを始めたころにはスポーツドリンクを飲んでいました。
      でも止めたらパフォーマンスは向上しました。

  2. 運動パフォーマンスという観点から考えると、この結果から「運動中に糖質を摂るとパフォーマンスが上る可能性がある」とも解釈できるのでしょうか?摂取する酸素の量を一定とすると糖質は脂質に対して10%弱大きなエネルギーを獲得できる理解です。この結果をみると運動中に糖質をとることで全体の20%を脂質から糖質に置き換えることができたため、単位時間あたりのエネルギー獲得が2%弱向上したと想定できます。世の中で脂質燃焼が重要という意見をよく見かけますが、多くの有酸素運動では単位時間あたりの酸素摂取量がボトルネックであり、糖質は脂質に対して酸素の量に対するエネルギー量が大きいため、脂質燃焼が増えると運動パフォーマンスが下がるという重要なことが見逃されている気がしております

    1. 関根正之さん、コメントありがとうございます。

      ケトン体質になっていないとパフォーマンスは落ちるでしょうね。
      競技や運動強度、時間によっても違うと思います。

      1. お返事ありがとうございます。基本的なことで恐縮なのですが、糖質を制限して運動のパフォーマンスが上がる(または下がらない)のはどういう理屈/メカニズムによると考えれば良いのでしょうか?私個人の状況としては、チーティング連発のなんちゃってですが糖質制限を10年近く継続しており、血液及び吐息からケトン体を測るとかなり高いことが多い、2日位絶食しても糖質不足による空腹感はない、などからそれなりにいわゆる”ケトン体質”になっていると思われます。しかし、自身で何度も実験しておりますが、糖質を補給したほうが明らかに運動のパフォーマンスは高いです。理屈としても糖質の方が酸素1分子から作れるATPの数が多いことなどから納得感があります

        1. ちなみに私が主に実験しているのはランニングです。競技時間は1500mから60kmくらいで測定したことがあります。精神的なものの影響しているのか、競技時間が短くても強度が全力に近い場合は糖質を事前に摂取した時の方が有意にパフォーマンスが良いです。糖質を制限した状態でかなり激しい運動で1時間30分を超えると、顕著にパフォーマンスが下がります。レースの2,3日前からカーボローディングしてあると4時間くらいまでは耐えられます。先日も富士登山競走で完走できました。尚、他の人と比較して、糖質の補給が少なくともパフォーマンスが落ちにくく感じがあり、先日参加した柴又100Kの60kmでもかなり余裕をもって年代別一位になれたりして、そのへんは糖質制限のおかげかなとは感じております
          私の体感としては、糖質制限を普段していると2時間超えるようなレースでは運動能力はあがるが、それでもレースの準備及び本番中ではできるだけ糖質を摂った方がパフォーマンスは良い感じがしております
          糖質摂取と運動パフォーマンスの関係は非常に興味があり、ネットなどでこまめに調べておりますが、どちらかというと私の体感が現時点で多数意見のように理解しております

        2. 関根正之さん、コメントありがとうございます。

          運動強度が上がれば上がるほど糖質は必要になると思います。
          私もフルマラソンやレースではペースを上げるので、糖質を途中で補給します。
          運動強度が上がれば、どうしても糖質をエネルギーにする割合が高くなるので仕方がありません。
          それでも仰るように、普段糖質制限をしていると、糖質の補給が少なくてもパフォーマンスが落ちにくいと思っています。
          デスバレーの「BAD WATER135」でぶっちぎりの優勝をした石川佳彦選手も普段は糖質制限、レース中は糖質を摂取しているそうです。

          カーボローディングは本当に有効なのかどうかはわかりません。
          糖質制限をしていても、糖質過剰摂取をしていても、筋肉のグリコーゲンは変化がなく、
          グリコーゲンの回復も糖質を摂らなくても同様に回復するという研究があります。
          ただ、私は普段糖質制限をしているので、カーボローディングすると体重が増えるし、
          そもそも健康に良くないのでやっていません。

          今回の記事は目的が痩せるために運動するのに、糖質摂取が良くないことを書いただけなので、パフォーマンスとは関係ありません。

          1. 元記事のテーマを逸脱しているにも関わらず、ご丁寧にありがとうございます。仰る通り、カーボローディングは確実に健康には良くない、運動能力向上という意味でも確実ではないらしいので躊躇はしているのですが、個人的には効果が実感できているので、年に数回の本気レースの時は実施しております。体重が一気に2kg位増えるので、少なくとも私の場合は筋肉中のグリコーゲンの量は瞬間的に増えていると思います。体重増のデメリットよりグリコーゲン量の増加のメリットの方が、競技の性質にもよりますが、概ね大きいです。加えて体重増の殆どは水分なので、競技中に速やかに消失するのと、水分補給のロスを減らせる効果もあるかもしれません。しかし健康にはどう考えてもよくなさそうですね。。

  3. 糖質制限初期の頃確かに食事に物足りなさ、空腹感もありましたが、時間経過とともに皆無。
    「慣れ」といってしまえば身も蓋もないですが、なにをエネルギーとして有効活用できるのかは生活習慣(食習慣)で大きく異なるのではないでしょうか。

  4. 運動パフォーマンス向上=健康とは限らない、ということですよね。
    イメージですが、糖質は活動の着火剤のようなものなのでしょうか。

    1. 着火剤でもあり、かつ出力を上げる際のブースター的な役割のイメージがあります。全力に近い運動だと主に糖質が使われている理解です

  5. ご返信有難うございます。
    ランニング継続中、加齢のせいも勿論あるでしょうが、スピードが落ちてきたのは糖質制限も関わっているのかもしれませんね。
    ただ、パフォーマンス向上のために「禁を破って(笑)糖質摂取」も特に競技者でもないので、躊躇われます。

    1. 競技時間が2時間以内くらいの場合は、グリコーゲンが物理的に枯渇するというよりは脳が安全のためにブレーキを踏んでいる要素が大きかもしれません。その場合、例えば糖質を接収しなくとも飴を舐める、砂糖水でうがいするだけでも脳が騙されて実際に糖質を接種したのと同等の効果が得られるという研究成果もあるようです。これであれば健康へのダメージもないかも。ただし、何回もやってると脳も騙されていることに気が付き出すかもしれません(笑)

  6. ありがとうございます。おっしゃるように、
    糖質制限を守りながら「うまく脳を騙して」パフォーマンスを上げる方法も
    ありそうですね。

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