専門家は都合が悪いことは「パラドックス」と言います。その専門家が信じている仮説が正しいとしか思っていないので、それと相反するデータが出てくると受け入れられません。しかし、実際はパラドックスでもなんでもなく、前提の仮説が間違っている可能性は十分にあります。パラドックスに出会った時に、前提を疑ってみるという姿勢が本当の専門家であり、科学者であると思います。
医学の中での一番の大きなパラドックスの一つがコレステロールです。医学の世界は「コレステロール=悪玉」という考えから抜け出られません。非常に多くの研究で相反する結果が出ているにもかかわらず、コレステロールは悪いものだというのが定説になってしまっています。
今回の研究もパラドックスです。対象は、冠動脈石灰化 (CAC) スキャンを受けた64,357人、冠動脈CT血管造影 (CCTA) を受けた10,814人、SPECT心筋灌流イメージング(MPI)を受けた既知の冠動脈疾患のない31,411人、SPECT-MPIを受けた既知の冠動脈疾患のある5,051人です。
高コレステロール血症およびその他の冠動脈疾患の危険因子と死亡率との関係を分析しました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図の(a)(b)(c)(d)はそれぞれ冠動脈石灰化 (CAC) スキャンを受けた人、冠動脈CT血管造影 (CCTA) を受けた人、SPECT心筋灌流イメージング(MPI)を受けた既知の冠動脈疾患のない人、SPECT-MPIを受けた既知の冠動脈疾患のある人における、冠動脈疾患の危険因子とされる高血圧、喫煙、糖尿病、および高コレステロール血症の有無による生存曲線です。赤い線がその危険因子がある人、緑がない人です。差がほとんどない場合もありますが、基本的には高血圧、喫煙、糖尿病があると生存率は低くなりますが、高コレステロール血症だけは逆で、高コレステロール血症があると生存率に違いが無いか高くなっています。最も生存率の低下が激しいのはやはり糖尿病ですね。
上の図は4つの集団をまとめて分析した全原因死亡率のリスクです。(a)(b)(c)(d)はそれぞれ高血圧、 糖尿病、喫煙、高コレステロール血症です。高血圧、糖尿病、喫煙は全原因死亡のリスクを1.38倍、1.87倍、1.69倍どれも高めます。しかし、高コレステロール血症だけは0.72倍とリスクが低下しています。
上の図はCACまたはCCTAを受けている患者のコレステロールレベルに応じた生存率で、(a)はLDLコレステロール、(b)は非HDLコレステロールです。生存率が最も高いのはLDLコレステロールが130以上の場合で、最も全原因死亡率の高いのはLDLコレステロールが100未満の場合です。非HDLコレステロールも最も死亡率の高いのは130未満のグループです。
脂質低下治療を受けていない患者 (CACとCCTA患者、7744人) の死亡率の多変量予測因子。
変数 | HR (95% CI) |
---|---|
年齢 | 1.09 (1.08–1.11) |
喫煙 | 1.92 (1.39–2.65) |
LDL値 | |
130以上 | 1 |
100~130 | 1.24 (0.93–1.67) |
100未満 | 1.68 (1.22–2.33) |
高血圧 | 1.47 (1.15–1.89) |
糖尿病 | 1.43 (1.02–2.00) |
高コレステロール血症 | 0.86 (0.66–1.11) |
上の表はスタチンなどの脂質低下療法を受けていない人の死亡リスクです。LDLコレステロール100未満は130以上の人と比較して1.68倍の死亡リスクです。
さまざまな心臓検査のために紹介され、臨床リスクが低いものから高いものまで幅広い患者の中で、高コレステロール血症および高LDLコレステロールは死亡リスクの増加と関連していないどころか、リスク低下と関連しています。
コレステロールが悪いと信じ込んでいる人はこれを「パラドックス」と考えます。しかし、実際にはコレステロールは無実でしょう。根本原因が違います。根本は糖質過剰摂取です。根本が糖質過剰摂取だとすると、予防や治療は糖質制限ということになりますが、それでは医師は治療をしている気分になれませんし、儲かりません。コレステロールが原因と考え続ければ、薬を処方できます。しかも多くの人はずっと処方が続けられます。患者はそれによって命が守られていると思い続けます。薬をやめると「死ぬよ」と脅されます。
「Association between hypercholesterolemia and mortality risk among patients referred for cardiac imaging test: Evidence of a “cholesterol paradox?”」
「高コレステロール血症と心臓画像検査のために紹介された患者の死亡リスクとの関連:「コレステロールパラドックス」の証拠?」(原文はここ)
心筋梗塞を患い、心臓にステントを入れている知り合いがいるのですが、その彼は飲食の際、何かというとワインを注文するのですが、これは「フレンチパラドックス」を信じた結果なのでしょうか(笑)
ところで、28日のヤフー記事に南雲吉則の糖質制限の話が掲載されており、その主張は「高タンパク・高脂質の糖質制限」であって、「ごぼう茶推し」以外は「ほぼ異議なし」のまっとうな内容だったのですが、コメント欄をみると「ほぼ異論だらけ」の状況でした。「コメを制限されるくらいなら、死んだほうがまし」といった類の暴論が10のうち8
ドラッグ、アルコール、ギャンブルの常習性・依存性・中毒性は今では誰もが知っているでしょうが、ここに糖質も加えていただきたい。日暮れて道遠しの感
カルダノ永太さん、コメントありがとうございます。
白米食べて病気になるとは、ほとんどの人は思っていないでしょうからね。
医療業界は今後も安泰ですね。
パラドックスなどという曖昧な
表現をしてまで、どうしても
コレステロールを悪者に
そして、
コレステロールを下げる薬を
使いたい、
のでしょうか。
シンプルに真実を伝えて欲しい
ものです。
清水先生、こんばんは。
コレステロールの闇は深いものがあると感じます。
一方で、私もそうですが糖質制限を実践している方ではLDLコレステロールが200 mg/dLを超える方もいると思います。問題はないとは思うのですが、気にはなります。
南雲医師の糖質制限に関連して疑問点がひとつ
南雲さんの食生活は「ほぼ夕食のみ」ということらしいのですが、これで必須アミノ酸、必須脂肪酸は不足しないのでしょうか。
高タンパク・高脂質を必須とみる糖質制限提唱者の大多数は、日に体重1㎏あたり1,5g~2gのたんぱく質摂取を推奨するはずですが、夕食だけで充足できるのか疑問なのです。ちなみに私は「朝昼晩三食」でムリなく均等にタンパク質・脂質を摂取します。
カルダノ永太さん、コメントありがとうございます。
私もいっぱいタンパク質と脂質を摂るように勧めています。特に糖質制限を始めるときに
糖質だけを減らしてしまい、エネルギー不足になることが多いからです。
実際には1食や2食では2g/kgのタンパク質は無理でしょう。
でもそれでいいと思います。おそらくそれで体が適応すると思います。
まあ、1g/kgはタンパク質を確保したいですけどね。それくらいなら1食でも行けるでしょう。
今日息子の医療扶助を受けている関係上特定健診受けて来たのですが「昨年はコレステロールが高かったんだよね、治療は、、」「してないですが大丈夫です」「自分で言う言葉じゃないよ?」みたいなやり取りがあって上書き保存の出来てない医師はどうやり過ごせばいいのかと、ちなみにLDL220です ここでは良い数値なんですが^^
マエダユキコさん、コメントありがとうございます。
今のところスタチン医者は避ける以外解決策はありません。
どなたかいい方法を知っている方がいたら教えてください。