「抗肥満薬」オルリスタットが処方箋なしに薬局で購入可能になるようです

抗肥満薬であるオルリスタット(商品名アライ)が、来年2023年3月より医師の処方箋なしに薬局で買えるようになるようです。

「抗肥満薬」オルリスタット、処方箋なしに薬局で購入可能に…ネット販売は不可

11/28(月) 21:00(記事はここ

厚生労働省の専門家部会は28日、大正製薬が販売する抗肥満薬「アライ(一般名・オルリスタット)」を、医師の処方箋なしで薬局で買える薬として承認することを了承した。来年3月にも正式に承認される見込みだ。厚労省によると、日本人を対象にした臨床試験で、内臓脂肪や腹囲の減少効果が確認された市販薬となる。

アライは、脂肪の吸収を抑制する薬で、対象は、高血圧や脂質異常症などの健康障害を伴わない肥満(男性は腹囲85センチ以上、女性は同90センチ以上)の18歳以上。食事や運動など生活習慣改善の取り組みと併せて補助的な位置付けで使う。1日3回、食事中か食後1時間以内に1カプセル服用する。

 購入の際には、薬剤師が対面で情報提供や指導を行うことが義務付けられる「要指導医薬品」になる。薬局では販売可能だが、オンラインでは販売できない。服薬を始める1か月前から腹囲や体重などを記録し、薬剤師のチェックを受ける。6か月服用しても効果がなければ使用をやめる。

 欧米など70か国以上では既に処方箋なしで販売されている。服用後に脂肪の排泄(はいせつ)量が増え、下痢などになることがある。海外では肝機能障害が起きた例も報告されているが、因果関係はわかっていないという。

 日本肥満学会理事長の横手幸太郎・千葉大教授は「薬の使用は、食事や運動などの生活改善が前提となるので、薬剤師の指導が重要。万一やせ形の人が使えば健康被害が起きるリスクもあるため、注意が必要だ」と話している。

日本人を対象にした臨床試験を見てみましょう。もちろん、この臨床試験のスポンサーは大正製薬ですので、悪い結果が出るわけがないのですが。

まずはオルリスタット群100人、プラセボ群100人によるものです。参加者のベースライン平均年齢は、オルリスタット群で45.1歳、プラセボ群で46.8歳で、女性の数は、オルリスタット群で18人(18.0%)、プラセボ群で21人(21.0%)でした。内臓脂肪面積は、オルリスタット群で 121.54cm2、プラセボ群で133.03cm2で、内臓脂肪が100cm2未満の人の割合は、オルリスタット群で25.0%、プラセボ群で21.0% でした。

平均体重はオルリスタット群で80.38kg、プラセボ群で78.59kg、BMIはオルリスタット群で27.47、プラセボ群で27.11でした。

体重に応じて、毎日のカロリー摂取量を200~400kcal減らし、研究期間を通じて食習慣を改善するようにアドバイスされました。研究期間中、運動習慣を大幅に変更しないようにアドバイスされました。12週間してプラセボまたはオルリスタット60mg のカプセルを1日3回、食事と一緒に24週間経口投与しました。その後12週間後に最後の評価をしました。(図は原文より)

上の図は体重の変化率です。治療開始までにどちらの群も3%くらい体重が減少しています。そしてその後24週間でオルリスタット群ではプラセボ群よりも体重減少率が高く、最終評価ではオルリスタット群で-2.79%、プラセボ群で-1.22%でした。

 

上の図は内臓脂肪面積の変化率です。治療開始までにどちらの群も10%くらい減少しています。そしてその後24週間でオルリスタット群ではプラセボ群よりも減少率が高く、最終評価ではオルリスタット群で-13.50%、プラセボ群で-5.45%でした。

ベースラインから最後の評価までの体重の3%減少の達成率は、プラセボ群よりもオルリスタット群で有意に高く40.0%対19.0%で、最後の評価での5%体重減少の達成率は、18.0%対8.0%でした。

素晴らしいですね!・・・?体重の平均変化率2.79%だと体重減少は2.2kg程度でしかありません。プラセボでも1kg程度減少するので、その差は1kgちょいですね。半年薬飲んで体重1kg減では割に合わない気がします。

血液検査の脂質の変化はどうでしょう。総コレステロールとLDLコレステロールについてはオルリスタット群では有意に低下しています。HDLコレステロールはどちらの群もわずかに上昇していました。中性脂肪はあまり変わりません。脂質の吸収を抑えるのに、中性脂肪が変わらないのは一般的な考えからはおかしなことかもしれませんが、中性脂肪値が糖質で高くなることを知っていれば、当然ですね。

別の臨床試験で、52週間行ったものも見てみましょう。同様に最初の12週間の観察期間の後、52週間の治療期間となります。研究期間中参加者は食事の質を改善し、体重に応じて1日あたりのカロリー摂取量を200~400kcal 減らすように助言されました。今回はプラセボ群はありません。120人の参加者の平均年齢は47.3歳、男性が77.5%、内臓脂肪面積は130.90cm2、体重は78.25kg、BMI27.16でした。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はオルリスタットによる体重の変化率です。24週間の臨床試験よりもさらに体重が減少しています。ベースラインから52週までの体重の変化は-5.36%でした。約4.2kg減ですね。

 

上の図は内臓脂肪面積の変化率です。-21.52%減です。もともとが130cm2あったので、1年経っても平均では100を切ることはできませんでした。平均では内臓脂肪面積は正常化できなかったことになります。

上の図は血液検査の脂質です。(a)から順に総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪です。ベースラインから 52 週までの変化は、総コレステロールで-11.0mg/dl、LDLコレステロールで-13.8 mg/dl、HDLコレステロールで3.1mg/dl、中性脂肪で-4.3mg/dlでした。中性脂肪以外は有意な変化でした。やっぱり中性脂肪は減りませんね。内臓脂肪や皮下脂肪が減った分少しインスリン抵抗性は改善しているように思えますが、ショボいです。

副作用を見てみましょう。142件の副作用のうち、92件 (64.8%) は治療期間の最初の4週間に発生しました。胃腸関連の副作用の発生率は次のようです。

イベントエピソード数症例数 (%)
合計14273 (60.8)
排便関連症状
 小計13370 (58.3)
 便失禁98 (6.7)
 Oily spotting4641 (34.2)
 Flatus with discharge3728 (23.3)
 便意切迫55 (4.2)
 油抜き44 (3.3)
 脂肪/油性便1111 (9.2)
 液体便66 (5.0)
 排便の増加33 (2.5)
 軟便33 (2.5)
 排便の減少33 (2.5)
 腹部膨満11 (0.8)
 腹痛33 (2.5)
 鼓腸11 (0.8)
 胃炎11 (0.8)

表のOily spottingってなんですかね?油っぽいものがお尻から出て、パンツを汚すことでしょうか?Flatus with dischargeは何のことでしょうか?これも液体が出るオナラでしょうか?便失禁まで入れればかなりの割合でパンツを汚すことになりそうです。4週間は替えのパンツが手放せないかもしれませんね。人前に出るのもドキドキですね。

まあ、病院で処方される薬ではなく自腹でお金を払うので、こんな薬が承認されても良いでしょう。2つの臨床試験はエネルギー制限(カロリー制限)と同時に行っているので、これくらいの効果が出ましたが、それまで通りの食事をしながらこのオルリスタットを飲んでも恐らくほとんど効果は期待できないでしょうね。糖質過剰摂取のままの肥満では飲まないよりマシか?ずっと飲んだら脂質制限の悪い影響も出る可能性がありますね。そして、普通に糖質過剰摂取状態なので、飲むのをやめればすぐにリバウンドしそうですね。製薬会社が頑張ってもこれくらいのデータしか得られないので、実際に使っても期待薄ですね。でも結構売れるんでしょうね。しかし、薬剤師のチェックを受けながらだから、面倒で売れないかな?飲む期間の制限が設けられているのかな?医師みたいに効果が無いのにダラダラ長期に売ったりはしないかも?

やっぱり糖質制限ですよ。肥満は糖質過剰症候群ですから。肥満を薬で何とかしようとすること自体が間違いです。次回以降に他の国などの論文も合わせて見てみたいと思います。

「Efficacy and Safety of Lipase Inhibitor Orlistat in Japanese with Excessive Visceral Fat Accumulation: 24-Week, Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Study」

「内臓脂肪過剰蓄積の日本人におけるリパーゼ阻害剤オルリスタットの有効性と安全性:24週間、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験」(原文はここ

「Reduction of Excessive Visceral Fat and Safety with 52-Week Administration of Lipase Inhibitor Orlistat in Japanese: Long-Term Clinical Study」

「日本人におけるリパーゼ阻害剤オルリスタットの52週間投与による過剰な内臓脂肪の減少と安全性:長期臨床試験」(原文はここ

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