HDLもLDLと同様に、数値ではなく質が重要だと思います。いくらHDLコレステロール値が増加しても、HDLの質が悪ければ、十分に機能せず、健康に悪影響があるでしょう。
以前の記事「運動の質とHDLの質」でも書いたように、HDLを構成しているアポリポタンパクにはapoA-ⅠとapoA-Ⅱがありますが、apoA-IIは多くが有害です。apoA-Ⅰ/apoA-Ⅱの比が小さい、つまりapoA-Ⅱが増加する状況ではHDLの機能低下が起きていると考えられます。
今回の研究では、アルコール摂取とHDLの質について分析してます。対象は肝臓の数値の異常や慢性および急性疾患のない、平均年齢42歳、平均BMI25.5の100⼈の男性です。
習慣的なアルコール摂取についてはインタビューで行っているので、ウソをついている可能性もありますが、まあ見ていきましょう。
100人のうち35⼈はアルコールを飲まず、65⼈がアルコールを摂取していて、主にワインを1⽇あたり11 ± 124g の量で摂取していました。65人全員、研究の前⽇まで飲酒していました。アルコール摂取量に応じて3つのグループ、⾮飲酒者、軽度から中程度の飲酒者(1⽇のアルコール摂取量が30g未満)、⼤量飲酒者(1⽇あたりアルコール摂取量30g以上)に分けました。 (図は原文より)
上の図は非飲酒者、軽度から中程度の飲酒者、大量飲酒者の様々なパラメータです。上から順に、人数、中性脂肪、コレステロール、HDLコレステロール、ApoA-Ⅰ、ApoA-Ⅱ、LpA-Ⅰ(ApoA-Ⅰを含むHDL)、 LpA-I:A-II(ApoA-ⅠとApoA-Ⅱを両方含むHDL)です。HDLコレステロールは大量飲酒者で53.1mg/dLと非飲酒者(46.1mg/dL)よりも約15%高くなっていました。さらにApoA-Ⅰも確かに大量飲酒者で増加していますが、同時にApoA-Ⅱも増加しています。そして、LpA-Ⅰは有意差がないのに、LpA-I:A-IIは大量飲酒者で有意に増加してます。
つまり、アルコールをたくさん飲むとHDLコレステロールは増加するのですが、質の面から考えると、ApoA-Ⅱを含有するHDLが増加してしまうため、HDLの質は低下し機能低下を起こしてしまう可能性があります。軽度および中程度の飲酒者ではLpA-I:A-IIは非飲酒者と差がないことを考えると、一般的に言われているように、適度な飲酒は健康に有益である可能性があります。
最もHDLコレステロールを上げるのは糖質制限です。
いずれにしてもアルコールはほどほどに。
「Association of alcohol consumption with HDL subpopulations defined by apolipoprotein A-I and apolipoprotein A-II content」
「アポリポタンパク質A-Iおよびアポリポタンパク質A-II含量によって定義されるHDL亜集団とアルコール摂取との関連」(原文はここ)