アメリカの専門家の一部は地中海食が大好きなように、日本の専門家の一部は日本食が大好きで、健康食だと思っているようです。
日本食の定義もよくわかりません。ネットで調べても、「日本で食べられている食事全般の総称を「日本食」と呼び、カレーやラーメンなどの外来食も含まれます。それに対しユネスコは、日本の伝統的な懐石料理や会席料理、郷土料理を「和食(日本料理)」として無形文化遺産に登録し、和食は「一汁三菜」を基本としている」そうです。(ここ参照)
そうすると、肉をいっぱい使った牛丼やとんかつも当然日本食です。逆に和食(日本料理)が伝統的な懐石料理などとするのであれば、ほとんどの人は毎日のようには和食は食べていないのではないでしょうか?和食を日本人の主食であるご飯(白米)と、汁物と3つの菜(おかず)を組み合わせたメニューと考えるのであれば、多くの人が食べていると思われます。しかしおかずには肉を含んでももちろん構いません。日本食らしい食事から肉を締め出すのはおかしいでしょう。
日本食や和食といってもなんだか漠然としています。
今回の研究では、日本食(和食)の定義を勝手に決めて、日本食が健康的であるかどうかを評価しています。
まず結果から書きましょう。8項目の日本食指標( JDI8)スコアで評価すると、JDI8スコアが最も高いグループ(スコア6~8)はJDI8スコアが最も低いグループ(スコア0~2)と比較して、全原因死亡率が0.86倍と心血管死亡率は0.89倍と、日本の食生活を遵守することは、全原因死亡および心血管疾患による死亡リスクの低下と関連していた、という結果です。
さて、中身を見ていきましょう。JDI8は、ご飯、味噌汁、海藻、漬物、緑黄色野菜(緑色野菜、にんじん、かぼちゃ、トマト)、魚(生魚、塩辛、干物、魚介類、ツナ缶、魚介類)、緑茶、牛肉および豚肉(牛肉、豚肉、加工肉)の摂取量で評価しています。ご飯、味噌汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚、緑茶の摂取量が性別別の中央値以上であれば 1 ポイント、牛肉および豚肉の性別別の中央値よりも少ない場合に1ポイント、ポイントが与えられます。牛肉および豚肉は日本食としての食材にはならないようです。JDI8スコアは0~8の範囲なので、一つの項目では0点か1点しかありません。ゼロか1かですので、中間ポイントは全くありません。めちゃくちゃな感じがしますね。
92,969人の参加者(男性42,700人、女性50,269人)が分析されました。平均年齢は56.5歳、追跡期間中央値は18.9年です。そして肝心の食事のデータは当然データの質が低い食事アンケートで、1回のアンケートで評価しています。18年以上同じ食事という前提です。
1日の総エネルギー摂取量はJDI8スコアが最も低いグループでは1656kcal/日しかありませんが、JDI8スコアが最も高いグループでは2337kcalと大きく違います。
普段塩分は体に悪いという人たちが今回は味噌汁や漬物や塩辛をたくさん食べた方にプラスポイントを与えています。矛盾だらけです。その言い訳として、JDI8スコアが高いグループではナトリウムだけでなくカリウムの摂取量も増加し、ナトリウムとカリウムの比率はすべてのグループでほぼ同じである、ということを述べています。さらに、JDI8スコアが高いグループでは胃がんおよび高血圧のリスクを高めるナトリウムと、結腸直腸がんのリスクや心代謝性合併症を高める血糖を上昇させる米を多く摂取しているけれども、一方で、JDI8スコアが高いグループは、心臓病や脳卒中を含む心血管疾患のリスク低下と関連しているタンパク質、食物繊維、ビタミンA、C、E、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウムなどの有益な栄養素も摂取している可能性がある、と述べています。都合がいい解釈ですね。
先ほど書いたようにJDI8スコアが最も高いグループはJDI8スコアが最も低いグループと比較して全原因死亡率が0.86倍と心血管死亡率は0.89倍でしたが、心臓病、脳卒中、がんの死亡リスクは差がありませんでした。
JDI8の各成分と全原因、がん、心血管疾患、心臓病、脳血管疾患による死亡率との関連を見てみましょう。(表は原文より改変)
全原因死亡率 | がんによる死亡率 | 心血管疾患による死亡率 | 心臓病による死亡率 | 脳血管疾患による死亡率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0点 | 1点 | 0点 | 1点 | 0点 | 1点 | 0点 | 1点 | 0点 | 1点 | |
米 | 1.00 | 1.02 (0.99–1.06) | 1.00 | 0.98 (0.93–1.03) | 1.00 | 1.07 (1.00–1.14) | 1.00 | 1.09 (1.00–1.19) | 1.00 | 1.09 (0.99–1.21) |
みそ汁 | 1.00 | 0.98 (0.95–1.01) | 1.00 | 1.02 (0.97–1.08) | 1.00 | 0.99 (0.93–1.06) | 1.00 | 1.03 (0.94–1.12) | 1.00 | 0.97 (0.88–1.08) |
海藻 | 1.00 | 0.94 (0.92–0.97) | 1.00 | 0.97 (0.93–1.02) | 1.00 | 0.93 (0.88–0.99) | 1.00 | 0.94 (0.87–1.02) | 1.00 | 0.92 (0.84–1.01) |
漬物 | 1.00 | 0.95 (0.92~0.98) | 1.00 | 1.03 (0.97–1.08) | 1.00 | 0.96 (0.90–1.02) | 1.00 | 0.93 (0.85–1.02) | 1.00 | 0.997 (0.90–1.11) |
緑黄色野菜 | 1.00 | 0.94 (0.91–0.96) | 1.00 | 0.96 (0.92–1.02) | 1.00 | 0.92 (0.87–0.98) | 1.00 | 0.89 (0.82–0.97) | 1.00 | 0.97 (0.88–1.07) |
魚 | 1.00 | 0.97 (0.94 ~ 0.997) | 1.00 | 0.98 (0.93–1.03) | 1.00 | 0.98 (0.92–1.04) | 1.00 | 1.00 (0.92 ~ 1.10) | 1.00 | 0.91 (0.82–1.01) |
緑茶 | 1.00 | 0.89 (0.86–0.91) | 1.00 | 0.96 (0.91 ~ 1.00) | 1.00 | 0.88 (0.83–0.93) | 1.00 | 0.81 (0.75 ~ 0.88) | 1.00 | 0.95 (0.86–1.04) |
牛肉と豚肉 | 1.00 | 1.02 (0.99–1.05) | 1.00 | 1.00 (0.95 ~ 1.05) | 1.00 | 1.01 (0.95 ~ 1.08) | 1.00 | 0.98 (0.90–1.07) | 1.00 | 1.03 (0.93–1.14) |
上の表を見てわかるように、0点でも1点でもそれぞれの成分ではリスクに大きな違いがありません。違いがあってもわずかです。しかもお米はどちらかというと1点の方がリスクが高くなっています。米を食べる方が死亡リスクが高い可能性があります。肉を悪者扱いにしたいようですが、何もリスクとは関連していません。いい加減なデータでさえこれなので、日本食が死亡率を低下させるとは決して言えませんね。
日本食の遵守がこの8項目に凝縮できるとは到底思えません。ソバやうどんは?イモ類は?卵は?豆腐や納豆などの大豆製品は?キノコは?日本酒は?食事以外の間食は?和菓子は日本食?
日本食が健康的だという結果を出すために何か都合の良い食材だけを選んで、それを日本食の代表みたいにして、適当なデータを集めて、ほとんど意味のない分析をして喜んでいるだけですね。
肉を毛嫌いさせて、野菜をヘルシーと考えさせることにより、高齢者はどんどん筋肉を落としていく可能性があります。
糖質制限し、たっぷりとタンパク質、特に肉を食べましょう。
「Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study」
「日本食の遵守と全死因および死因別死亡との関連性:日本の保健所ベースの前向き研究」(原文はここ)
清水先生、本年も勉強をさせていただきます。
私は糖質制限をするまでは日本食は健康的だと考えていました。
確かに日本食とは何かと問われると定義するのは難しいですね。印象としては、米が主のため、糖質が多く、タンパク質や脂質が少ないように思います。
よくある調査では、日本食は健康的であるという前提に立っていると思います。バイアスだらけですね。
私は今年も糖質制限を続けます。付き合いもあり、全ての食事が完全な糖質制限というわけにはいかないですが。
じょんさん、コメントありがとうございます。
日本食が健康的という人は、恐らくバランスの良い食事が健康的だというでしょう。
漠然とした内容でないと何も言えないのであり、中身がありません。
もちろん科学的根拠もありません。