運動の質とHDLの質

以前の記事「運動の質とHDLコレステロール」では、有酸素運動がHDLコレステロール増加には最も適していることを書きました。

では、運動の質によりHDLの質に違いがあるのでしょうか?

今回の研究では、全国レベルのアスリートを対象に、その競技種目によってHDLの質がどうなのかを調べています。種目は1500mの中距離のランナー、ハンマー投げ、レスリング、重量挙げです。(図は原文より)

上の図は様々なパラメータです。上からランナー、ハンマー投げ、レスリング、重量挙げ、対照群です。ランナーとレスリングでHDLコレステロールが有意に高くなっています。総コレステロールおよびLDLコレステロールは対象よりも低くなっていますし、中性脂肪もハンマー投げ以外は低くなっています。

上の図は第二鉄還元力で見たそれぞれのアスリート群のHDLの抗酸化能力です。ランナーが最も高い抗酸化活性があり、次にハンマー投げとレスリングでした。重量挙げは対照群よりは高い抗酸化活性でしたが、アスリートの中では最も低い活性となりました。

レシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼ(LCAT)活性はHDL機能の一つの指標です。LCATは不要となったコレステロールをHDLに乗せる働きがあるため、LCATの働きが弱いとHDLが正常に作用しない可能性があります。

LCATの最も強⼒な活性を⽰したのはランナー(25%)とレスリング(24%)で、ハンマー投げ(18 % )と 重量挙げ16%が続きました。どのアスリートも対照群より20〜40%高い活性でした。

PON-1(パラオキソナーゼ)活性はHDLの抗酸化酵素です。PON-1活性が高いほど抗酸化作用が強いことになります。

上の図のAがPON-1の活性を示しています。aの対照群と比較して、どのアスリートも高い活性を示し、レスリングとランナーは対照群の20倍でした。ハンマー投げと重量挙げはそこまで高い活性ではありませんでした。PON-1タンパク質の発現はランナーで最も⾼く、僅差でレスリングが続きました。

コレステリルエステル転送蛋白(CETP)は、HDLのコレステロールをVLDLやLDLに転送することで、HDLやLDLの量や質を調整する働きがあります。CETPが減少するとHDLが増加します。上の図のBはCETP活性ですが、アスリートは全体的に対照群よりかなり低くなっていました。

上の図はリポタンパク質のアポリポタンパクです。HDLのアポリポタンパクにはapoA-ⅠとapoA-Ⅱがありますが、apoA-IIについて今までにわかっている影響は多くが有害です。apoA-II はアテローム性動脈硬化症の増加、体脂肪が増加、インスリン抵抗性の増加などです。しかし何らかの有益な作用があるからこそ、存在していると思いますがよくわかりません。apoA-Ⅱについてはいつか記事にしたいと思います。

HDLのapoA-Ⅱは対照群と比較して、HDL2では重量挙げで増加しています。それ以外では対照群より低下し、ランナーではゼロです。HDL3ではapoA-Ⅱは全てで対照群よりも低下し、特にランナーとレスリングで大きく低下していました。

有益と考えられているapoA-Ⅰの方は、HDL2では特にレスリングで大きく増加し、ランナーもハンマー投げでも増加していました。HDL3では全てのアスリートでapoA-Ⅰが増加していましたが、特にランナーで大きく増加していました。その次はレスリングです。

HDLもLDLと同様に、数値ではなく質が重要だと思います。恐らくいくらHDLコレステロール値が増加しても、apoA-Ⅰ/apoA-Ⅱの比が小さい、つまりapoA-Ⅱが増加する状況ではHDLの機能低下が起きていると考えられます。

今回の研究では、HDLの中で⾛ランナーとレスリングのapoA-I発現レベルが最も⾼く、apoA-II発現レベルが最も低かったことを⽰しています。さらに、ランナーとレスリングではより⼤きなHDL(HDL2)を持っていました。レスリングで46nm、ランナーで45nmです。しかし、重量挙げは最も小さく33nmでした。ただし、対照群では28nmよりは大きくなっています。

恐らくレスリングは力だけでなく、持久力も非常に必要な競技なのでしょう。パワーや瞬発力のハンマー投げや重量挙げでは持久力、有酸素運動は重要視されません。

有酸素運動はスポーツの種類やBMIに関係なく、HDL粒⼦サイズ、apoA-I濃度、HDLコレステロール値、抗酸化活性が増加する可能性があることを⽰しています。

一般的にはHDLの大きさは大きい方が良いと考えられていますが、私はこれも質の問題ではないかと思っています。つまり、apoA-IIがあって大きいHDLは質が悪いのではないかと考えています。

apoA-IIが多いとPON-1と抗酸化活性の低下が起きる可能性があります。そうすると、ハンマー投げや重量挙げなどの運動の質はHDLの質を下げていると思われます。

筋トレ+糖質摂取だといくらHDLコレステロール値が高くても要注意でしょう。

健康のためには運動が必要です。アスリートではなく、健康のために運動するのであれば、有酸素運動をお勧めします。

「Enhanced functional and structural properties of high-density lipoproteins from runners and wrestlers compared to throwers and lifters」

「投擲や重量挙げと比較したランナーやレスリング選手のHDLの機能的および構造的特性が向上」(原文はここ

One thought on “運動の質とHDLの質

  1. 筋トレ+糖質摂取で筋肉を
    増やす(肥大させる)
    ボディビルダーが
    あまり健康的には見えないのも
    もっともですね。

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