尿失禁には糖質制限

尿漏れ(尿失禁)をする女性が増加しているようです。尿漏れのCMもやっています。以前の記事「尿漏れする前に糖質制限」「内臓脂肪は過活動性膀胱のリスクを増加させる」でも書いたように、尿漏れと糖質過剰摂取は大きく関係してると思います。

今回は症例報告レベルなので、エビデンスとは言えませんが、やってみる価値は十分です。閉経後の肥満女性5人で軽度から中等度の腹圧性尿失禁と診断されました。彼女らにケトン食による治療が行われました。炭水化物で約5~10% (50g/日以下)、タンパク質18~27%、脂質70~75%で、1日の摂取エネルギーは、女性の体組成分析の基礎代謝量から管理栄養士が算出し、約1300~1500kcal/日です。4週間のケトン食治療後、腹圧性尿失禁を評価する客観的な指標である1時間の尿パッドテストを使用して尿漏れを評価しました。(図は原文より、表は原文より改変)

図1

上の図は治療前後の体組成の分析です。Aは体重、BはBMI、Cは体脂肪率、Dは内臓脂肪面積です。どの人もほとんどの項目で減少しています。

図2

上の図は治療前後の1時間の尿パッドテストの比較です。全員が大幅に改善し、ほとんどゼロに近い人もいます。

治療前(ケース1) 治療4週間後(ケース1) 治療前(ケース2) 治療4週間後(ケース2) 治療前(ケース3) 治療4週間後(ケース3) 治療前(症例4) 治療4週間後(ケース4) 治療前(ケース5) 治療4週間後(ケース5)
白血球(10^9/L) 11.97 5.46 6.42 5.37 5.97 4.81 5.8 4.8 5.9 5.3
ヘモグロビン(g/L) 142 139 153 131 126 138 130 148 134 142
血小板(10^9/L) 231 219 330 227 198 220 209 164 231 148
尿中白血球(HF) 45.42 182.46 4.91 0 0 0 0 0 0 0
尿赤血球(HF) 0 16.67 0 77.97 29.83 0 0 0 0 0
尿中ケトン 2 + 3 + 2 + 3 + 3 +
尿タンパク
尿潜血 3 + 3 +
AST (U/L) 51 34 30 34 14 16 20.32 13 19.7 14.9
ALT (U/L) 86 24 34 34 11 16 15.22 18.79 19.5 18.05
血糖 (mmol/L) 5.34 5.25 5.91 5.01 4.93 5.33 5.37 4.6 5.1 4.11
コレステロール (mmol/L) 5.38 5.56 5.22 5.28 5.59 5.45 5.46 5.9 5.23 4.57
中性脂肪 (mmol/L) 1.78 0.94 1.04 0.81 1.23 0.95 1.07 0.73 1.42 0.84
HDL-C (mmol/L) 1.05 1.03 1.2 1.09 1.41 1.28 1.45 1.28 1.39 1.28
LDL-C (mmol/L) 3.94 4.01 3.16 3.39 3.27 3.29 3.24 3.8 3.23 2.79
アルブミン (g/L) 49.4 40.7 45.8 38 45.1 46.7 42.45 44.42 42.5 43.95
尿酸 (umol/L) 456 562 321 417 290 336 287.6 350.4 319.91 464.1
クレアチニン (umol/L) 59 73 50 47 53 54 49.16 48.41 53.1 45.9

上の表は治療前後の検査データの比較です。尿漏れの量や体重や脂肪量だけでなく、検査データも多くの項目で改善していました。特に白血球数、肝機能(AST、ALT)、血糖値、中性脂肪で改善を認めた人が多くいました。

それぞれのケースでは、

ケース1:体の骨格筋の割合は1.62%増加、尿漏れの自覚が治療前より改善され、更年期症状の重症度を示すクッパーマンスコアが37点から15点に下がって明らかに改善し、特に不眠症と尿路感染症が明らかに改善しました。

ケース2:骨格筋の割合は1.53%増加、尿漏れの症状はすっかり治りました。クッパーマンスコアは26点から28点と横ばいでした。

ケース3:骨格筋の割合は2.89%増加、尿漏れの自覚症状は以前より明らかに良くなりました。更年期症状は大幅に改善し、クッパーマンスコアは24点から13点でした。

ケース4:骨格筋の割合は2.54%増加、尿漏れは以前より明らかに良くなりました。明らかに更年期症状が改善しており、クッパーマンスコアは10点から5点でした。

ケース5:骨格筋の割合は1.37%増加、尿漏れの自覚症状はなくなりました。更年期症状が明らかに改善し、クッパーマンスコアは17点から12点。

これでわかるのは5人全員がケトン食の4週間で尿漏れが改善しただけでなく筋肉が増加し、4人は更年期症状が改善しています。ということは更年期症状は「肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II 」でも書いたように、糖質過剰摂取に起きていると考えられます。

動物実験上では以前の記事「椎間板ヘルニアの痛みにはまず糖質制限」でも書いた、糖質過剰摂取で活性化する代謝経路の中でAGE経路の途中にできる有毒な反応性の高い物質、メチルグリオキサールが尿失禁の原因の一つという結論となっています。(ここここ参照)

尿漏れ、更年期障害で悩んでいる人は、まずは糖質制限でしょう。

 

「Ketogenic diet may be a new approach to treatment stress urinary incontinence in obese elderly women: report of five cases」

「ケトン食は、肥満高齢女性の腹圧性尿失禁を治療するための新しいアプローチである可能性がある: 5例の報告」(原文はここ

4 thoughts on “尿失禁には糖質制限

  1. いつも勉強になる記事をありがとうございます。
    本題と関係が薄くて恐縮ですが、先日、十数年来の掌蹠膿疱症でかかりつけの皮膚科をついに見限った呑み友達に糖質制限を提案してみたところ、嬉しい事にいきなり見事完治して大変感謝されました。
    臨床医でもないのに一晩にして名医認定されてしまい、私は清水先生に大感謝です。
    今後ともよろしくお願いいたします。

    1. Caesiusさん、コメントありがとうございます。

      貴重な症例報告ありがとうございます。
      乾癬では糖質制限が有効であるという報告は出ていますので、掌蹠膿疱症も良さそうですね。
      自己免疫や原因がよくわかっていない疾患には、試しにとにかく糖質制限をしっかりしてみると良いと思います。

  2. 砂糖の代わりにサラヤのラカント
    を使用しています。
    サラヤではラカント使用、カロリー0
    の珈琲飴も出していて愛用してますが、
    あまりに美味しいので、
    糖質制限になっているのか、逆に
    不安です。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      ラカントSは私も時々使いますが、中国製造というのが私としては気になります。

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