肥満でも健康だと思っている人はいるでしょう。それは、健康かどうかを判断するのに、様々なパラメーターを使用しますが、その測定値が基準値以内であれば健康と考えてしまうからです。健康の定義は非常に難しいです。
もちろん標準体重=健康では全くありません。体重も一つのパラメーターにすぎません。では、太りすぎおよび肥満の人が代謝的に健康、不健康と分けたときにがんにどれほど関連するのでしょうか?
今回の研究では、およそ80万人を最長40年追跡したデータで分析しています。代謝的に健康というのは、血圧と中性脂肪値と血糖値で判断しています。最長40年間の追跡期間中に、23,630人が肥満関連のがんと診断されました。(図は原文より、表は原文より改変)
特徴 | 合計 | 普通体重 | 太りすぎ | 肥満 | |||
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代謝的に健康 | 代謝的に不健康 | 代謝的に健康 | 代謝的に不健康 | 代謝的に健康 | 代謝的に不健康 | ||
喫煙状況、 (%) | |||||||
喫煙者 | 345 123 (43.3) | 149 458 (44.6) | 37 432 (37.7) | 68 893 (43.4) | 50 519 (41.1) | 13 039 (48.0) | 25 782 (47.5) |
元喫煙者 | 200 420 (25.1) | 75 190 (22.4) | 22 568 (22.7) | 45 882 (29.0) | 34 775 (28.3) | 7525 (27.7) | 14 480 (26.7) |
現在の喫煙者 | 248 977 (31.2) | 109 382 (32.7) | 39 084 (39.4) | 43 136 (27.2) | 37 252 (30.3) | 6456 (23.7) | 13 666 (25.2) |
BMI、平均 (SD)、kg/m 2 | 25.2 (3.8) | 22.4 (1.7) | 22.9 (1.7) | 26.8 (1.3) | 27.2 (1.4) | 32.6 (3.0) | 33.4 (3.4) |
収縮期血圧、平均 (SD)、mmHg | 129.6 (17.1) | 121.5 (13.1) | 139.6 (18.7) | 125.8 (12.5) | 142.5 (17.5) | 126.7 (12.9) | 144.9 (18.9) |
拡張期血圧、平均 (SD)、mmHg | 79.4 (10.8) | 74.8 (9.0) | 84.5 (11.0) | 77.3 (9.3) | 86.8 (11.0) | 78.2 (10.0) | 88.3 (11.6) |
平均血圧、平均 (SD)、mmHg | 104.5 (12.9) | 98.1 (9.9) | 112 (13.5) | 101.5 (9.7) | 114.6 (12.9) | 102.5 (10.1) | 116.6 (14.0) |
中性脂肪、平均 (SD)、mmol/L | 1.6 (1.1) | 1.1 (0.6) | 2.0 (1.2) | 1.4 (0.8) | 2.5 (1.6) | 1.5 (0.9) | 2.7 (1.8) |
血糖値、平均値 (SD)、mmol/L | 5.2 (1.2) | 4.9 (2.5) | 6.1 (2.5) | 4.9 (1.5) | 5.9 (2.2) | 4.9 (1.4) | 6.0 (2.0) |
上の図は、 BMI と代謝健康状態の組み合わせに対する個別のがんのリスクを示しています。ほとんどの場合、代謝的に不健康と比較すると、代謝的に健康な方がリスクは低いですが、やはり太りすぎ、肥満の方が正常体重よりはがんのリスクが高くなっています。代謝的に健康な正常体重と比較した、代謝的に不健康な肥満における肥満関連がんのリスクは、腎細胞がんで2.55倍、肝臓がんで2.74倍でした。
上の図は女性のリスクです。代謝的に健康な正常体重と比較した、代謝的に不健康な肥満における肥満関連がんのリスクは、女性で1.43倍でした。特に子宮内膜がんはリスク3倍、腎細胞がんは2.43倍でした。代謝的に健康な肥満でも子宮内膜がんは2.36倍、腎細胞がんは1.77倍のリスクでした。
上の図は男性のリスクです。代謝的に健康な正常体重と比較した、代謝的に不健康な肥満における肥満関連がんのリスクは、男性で1.91倍でした。腎細胞がんでは2.59倍でした。
上の図はすべての肥満関連のがん(A)、結腸がん(B)、直腸がん(C)、すい臓がん(D)、腎細胞がん(E)、閉経後乳がん(F)、子宮内膜がん(G)、多発性骨髄腫(H)と代謝健康状態とBMIの組み合わせによる女性のリスクです。横軸は年齢です。濃い青い線が代謝的に健康で正常体重の人、薄い青い線が代謝的に不健康な正常体重、薄いピンクの線が代謝的に健康な肥満の人、赤い線が代謝的に不健康な肥満の人です。
80歳までに肥満関連のがんを発症するリスクは、代謝的に健康な正常体重の女性で10.7%、代謝的に不健康な肥満では14.4%でした。全体的な傾向はやはり体重が正常化どうかでリスクが大きく異なっています。特に子宮内膜がんの差は大きいです。そしてその中でも代謝的に不健康な方がリスクが高くなっています。
上の図は男性です。すべての肥満関連のがん(A)、結腸がん(B)、直腸がん(C)、すい臓がん(D)、腎細胞がん(E)、多発性骨髄腫(F)です。ほとんど女性と同様の傾向です。
つまり、代謝的に健康な肥満であっても、肥満は依然としてがんの危険因子なのです。肥満は個性ではなく病気です。糖質過剰症候群です。
「Metabolically (un)healthy obesity and risk of obesity-related cancers: a pooled study」
「代謝的に(不)健康な肥満と肥満関連のがんのリスク:プールされた研究」(原文はここ)
先生のブログの愛読者です。
本題とは関係ないのですが、最近「ドリトス」などの菓子類の成分表示に、1袋60gの糖類1、6gなどと表示されています。原材料はトウモロコシなので、ほぼ糖質(デンプン)だと思うのですが、糖類が少なければ、血糖値を上げないのでしょうか?
糖類1、6gなどと表示されていると、糖質制限者は、これは食べても良いのかと思ってしまいます。
でも、デンプンがOKなら、ご飯も大丈夫と言う事になりますよね。
これ、どう解釈すれば良いのでしょう?
ぺーすけさん、コメントありがとうございます。
糖質と糖類の違いを知らない人は多いので、糖類を表示して意図的に糖質を少なく見せようとしているだけでしょう。
食物繊維なんて大して入っていないと思うので、糖質量=炭水化物量で判断すれば良いでしょう。