いまだに体重減少のためには運動が推奨されています。ほとんどの人は身体活動、運動が増加すると、消費するエネルギー(カロリー)が増加するので、その分体重が減少すると思い込んでいます。以前の記事「アメリカ糖尿病学会2023年版診療ガイドラインその1」「その2」「その3」で書いたアメリカの糖尿病のガイドラインでも定期的な身体活動を推奨しています。
しかし、身体活動が増加すればするほど消費エネルギーが増加するというのは幻想です。
例えば、途上国の人は怠惰な座ってばかりの先進国の人よりも消費エネルギーが多いのでしょうか?様々な国の開発状況により消費エネルギーの違いを分析した研究では、途上国も先進国も消費エネルギーに違いはありませんでした。(この論文参照)
人種をそろえた研究ではどうでしょうか?ナイジェリアの田舎とシカゴの大都市の18歳から60歳までのアフリカ系の女性の総エネルギー消費量を調べてみました。(図は原文より、表は原文より改変)
ナイジェリア (n = 149) | アメリカ (n = 172) | |
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年齢 (歳) | 31.9±11.6 | 34.6±10.6 |
身長 (cm) | 160.0±6.2 | 164.5±6.2 |
重量 (kg) | 57.8±11.6 | 83.5±21.0 |
BMI (kg/m2) | 22.6±4.3 | 30.8±7.3 |
胴囲 (cm) | 78.3±10.2 | 91.6±16.8 |
ヒップ周囲 (cm) | 93.4±9.5 | 111.3±13.7 |
除脂肪体重 (kg) | 40.4±5.2 | 48.7±8.0 |
体脂肪量 (kg) | 17.4±7.8 | 34.9±14.6 |
総体脂肪率 (%) | 28.9±8.0 | 40.1±8.5 |
上の表に示すように、ナイジェリアの女性の方がアメリカの女性よりも全ての項目で小さくなっています。BMIが30を超えていたのはナイジェリア人で6.7%、アメリカ人では51.2%でした。
上の図は活動エネルギー消費量の分布を示しています。実線がナイジェリア、点線がアメリカです。Aは未調整で、Bは体の大きさを調整したものです。Bを見ると、ナイジェリア人もアメリカ人も消費量も分布も同じです。体組成はナイジェリアの田舎に住む女性とシカゴに住む女性の間で劇的に異なるものの、活動エネルギー消費量 のレベルは区別できないのです。
アフリカの狩猟採集民族のハッザ族の人たちは1日に何時間も歩き、非常に高い活動レベルであるにもかかわらず、彼らの1日のエネルギー消費量は、アメリカやヨーロッパの、座っていることが多い現代的なライフスタイルの人と同程度です。
つまり、我々は座る時間が長くなったから、エネルギー消費量が減り、体重が増加したわけではないのです。体重のほとんどは糖質摂取量で決まり、糖質過剰摂取でインスリンが多く出れば、その分太ってしまうのです。
体重減少には運動ではなく、食事の変更が必要です。もちろん運動は健康のためなので、運動は必要です。
通常の身体活動程度ではなく、もっと運動を行ったら消費エネルギーはどうなるでしょうか?それは次回以降で。
「5. Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Care in Diabetes-2023」
「5.健康転帰を改善するための前向きな健康行動と幸福の促進:糖尿病の標準治療-2023」(原文はここ)
「8. Obesity and Weight Management for the Prevention and Treatment of Type 2 Diabetes: Standards of Care in Diabetes-2023」
「8. 2型糖尿病の予防と治療のための肥満と体重管理: 糖尿病の標準治療-2023」(原文はここ)
「Energy expenditure and adiposity in Nigerian and African-American women」
「ナイジェリアとアフリカ系アメリカ人の女性のエネルギー消費と肥満」(原文はここ)
いつも拝読させていただいております、参考になっております。
私は以前、UberEatsの配達員をしていた経験があります。
それも本業として、よほどの悪天候でない限り欠勤せず11時-21時の10時間を連日稼働です。
移動は電動自転車を使っていました、お料理を受け取る際やお客様にお渡しする際など徒歩移動も意外と多いです。
(店舗が複合施設にある場合やお客様が大型マンションに住んでいる場合など)
この生活を1年と3ヶ月ほど続けて、その後やめたのですが、その間体重は全く変わりませんでした。
痩せることもなく太ることもなく、体型を維持すべく食事量が増えたわけでもなく見事に何も変化なしです。
足が筋肉質になることもありませんでした、有酸素運動で筋肥大はやはり難しそうですね。
私は配達員を始める前から、糖質制限1日1食のやせ型タイプです。
太り気味の方や糖質制限されていない方は減量効果もあるかもしれませんが、私にとっては運動で減量はありませんでした。
やはり運動は健康のためですね!
長文失礼いたしました。
774さん、コメントありがとうございます。
興味深い経験談ありがとうございます。
運動は健康のためですし、人間にとっては必須だと思っています。