ビーガンはどう?

糖質制限をする人の血液検査データの基準値はいまだわかっていません。そのため、一部の検査データ、特に脂質に関するデータが通常の糖質過剰摂取者のデータとは大きく異なることがあり、戸惑っている人もいるでしょう。前回の記事「sdLDLが高いと言われたけれど…」に関して、コメントをいただきました。

医療機関での検査は客観的で正確と、一般人は判断してしまいますが。
検査方法が確立されていない中では数値よりも、他の検査数値からの推測値の方が実態を表す場合がある、という事なのでしょうか。
ビーガンに興味があり、調べてますが、糖質制限とは相容れない感があり、悩んでおります。

病院で検査を受けて、その結果は非常に重要でしょう。しかし、基準値というもの自体が、一応健康と思われる人をたくさん集めて、その人たちのデータをまとめたものです。基準値に入っていれば健康ということが保障されているわけではありません。数値の変動は何らかの異常を示してることもありますから、注意は必要ですが、糖質制限のLDLコレステロールの上昇に関しては私は問題ないと思っています。

sdLDLに関してはまだ保険適応ではないはずです。sdLDLはLDLと同じ匂いがしてなりません。もちろんLDLの一部なので当然かもしれませんが、LDLが高い人には薬を処方できますが、LDLが正常の人にもsdLDLを検査して、sdLDLが高いから危険なので薬を飲みましょう!とスタチンの適応を広げることが目的になっているような気がします。

私は糖質制限をして、中性脂肪が非常に低値なのに、sdLDLが非常に高いのは理論的にはおかしいのではないかと思っており、他の検査からの推測値の方が実態に合っているように思います。あくまで私の私見ですが。

さて、ビーガンについてですが、もしかしたら糖質制限で脂質の数値が大きく通常より異なるのと同様に、ビーガンでもビーガンの基準値のようなものが存在するのかもしれません。しかし、それについてはわかりません。

ビーガンと糖質制限は相容れないのは当然です。人類の進化の過程で、恐らく糖質制限は人類本来の食事に近く、ビーガンは全く人類の食事とは言えないものだからです。人類は肉を食べて進化したのですから。糖質過剰摂取も人類本来の食事と程遠いですが、ビーガンも程遠いです。

ビーガンを選択するのは自由ですが、植物性の素材から、どれほどの栄養が吸収できるか非常に疑問です。ビーガンを順守するとビタミン B12、B2、ビタミンD、ナイアシン、鉄、ヨウ素、亜鉛、高品質のタンパク質、オメガ 3、カルシウムなどが欠乏する可能性が高くなります。またもし十分な栄養を植物性のものから得ようとすると、ものすごい量の食事が必要でしょう。もちろん、人間は非常に適応能力があるので、一部の人はビーガンに適応できるかもしれませんが。

まずは女性を対象にした研究から。ビーガンの閉経前および閉経後の女性の脂質はどうなるでしょう。(この論文、表はこの論文から改変参照)

閉経前の女性についてです。オボラクトベジタリアンは卵乳製品OKのベジタリアンです。

変数ビーガンオボラクトベジタリアン雑食
UA (mg/dL)


4.9±1.3


4.9±1.3


5.4±1.4 1.4c


クレアチニン (mg/dL)


0.7±0.1


0.7±0.1


0.8±0.1


HDL-C (mg/dL)


52.3±12.4


54.9±13.1


58.5 ± 13.2


LDL-C (mg/dL)


111.3±26.8


102.2±20.9


107.7±24.1


中性脂肪 (mg/dL)


126.3±69.2


103.4±42.3


97.6±59.1


総コレステロール (mg/dL)


173.4±32.5


165.8±31.1


175.2±33.2


総コレステロール/HDL-C


3.48±1.03


3.11±0.58


3.10±0.78


LDL-C/HDL-C


2.25±0.79


1.94±0.51


1.93 ± 0.62


中性脂肪/HDL-C


2.83±2.46


2.01±1.00


ビーガンではHDLコレステロールは低く、中性脂肪が高いようですね。中性脂肪/HDLコレステロール比もビーガンでは高くなっています。つまりインスリン抵抗性が高いということです。

 

閉経後の女性についてです。

変数ビーガンオボラクトベジタリアン雑食
UA (mg/dL)


5.8±1.5


6.0±1.7


6.0±1.7


クレアチニン (mg/dL)


0.8±0.2


0.8±0.1


0.9±0.6


HDL-C (mg/dL)


56.5±11.6


55.4±14.8


61.0±16.1


LDL-C (mg/dL)


121.4±28.9


128.9±37.5


129.3±27.4


中性脂肪 (mg/dL)


140.8±65.2


162.2±103.6


141.1±84.5


総コレステロール (mg/dL)


191.3±35.4


198.9±51.5


204.8±38.3


総コレステロール/HDL-C


3.50±0.89


3.74±1.00


3.54±1.03


LDL-C/HDL-C


2.23±0.67


2.43±0.73


2.26±0.77


中性脂肪/HDL-C2.78±2.033.41±3.052.68±2.47

閉経後ではHDLコレステロールは低いですね。

ベジタリアンやビーガンではメンタルの問題のリスクも増加します。(図はこの論文より)

ベジタリアンはうつ病、不安、摂食障害の割合が有意に高かったのです。ビーガン自体が摂食障害と考える人もいます。

自傷行為の有病率が、肉を食べる人よりも肉を食べない人の方が3倍以上、自殺企図が 2 倍以上という研究もあります。(ここ参照)

以前の記事「ビーガンは骨折リスクが高い」で書いたように、ビーガンの骨折リスクは高くなります。

さらに「ビーガンは酸化ストレスが増加する」で書いたように、ビーガンでは有害な酸化ストレスが増加します。

さらにさらに「ベジタリアンは終末糖化産物(AGEs)が増加してしまう」で書いたように、ベジタリアンでは有害なAGEsが増加します。

ビーガンを選ぶのは自由ですが、様々な有害な影響があることは様々な研究でわかっています。私はお勧めしません。

One thought on “ビーガンはどう?

  1. ビーガンレポート、とても参考になりました。
    有難うございます。

    ご存知かとは思いますが、ビーガンは「アニマルウェルフェア」という、畜産動物
    の飼育方法などの改善も目的としているようで、
    そもそもそれらの運動と、食事による健康維持の両立は無理があるのかもしれませんね。

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