筋肉繊維にはタイプがあります。持久力のある遅筋(タイプⅠ)、瞬発力のある速筋(タイプⅡ)があります。その割合は人によってかなりの差があるようです。一般的にはその割合は遺伝的に決まっていると言われていますが、恐らく後天的な要因も関係すると思います。遺伝的要因は約45%で、環境要因が約40%であるという研究もあります。(ここ参照)
長距離ランナーはタイプⅠが多く、短距離のスプリンターはタイプⅡが多いのですが、これらのアスリート全員が最初から自分の筋肉の組成を知って競技を選んだとは思えません。やはりトレーニングや食事などの影響は大きいと思います。
一卵性双生児による研究では持久力トレーニングを行ったかどうかで大きく筋肉繊維の組成が変わることが示されています。研究対象となった双子(52歳)は約20歳まで同じような環境で育ちました。その後双子の1人は持久力トレーニングを長期に渡り行い、過去30年間トライアスロンや⻑距離⾛のイベントに出場していました。もう1人は通常の⽇常⽣活活動以外に定期的な運動をしません。この2人の筋肉繊維の組成を調べてみたところ、下の図のようになりました。(図は原文より)
持久力トレーニングをし続けていた1人はタイプⅠの遅筋繊維がそのほとんど、90%以上を占めていたのに対し、運動の習慣がない方は遅筋繊維と速筋繊維の比率がほほ半々だったのです。遺伝的な要因がほとんどであれば、このような違いは起きないでしょう。つまり、トレーニングによって筋肉繊維の組成は大きく変化すると考えられます。それにしてもタイプⅠが90%以上になるなんて凄いですね。まさに長距離ランナーです。私の筋肉も調べてみたいですね。
もちろん他の違いも大きいです。
持久力トレーニングを行っているにもかかわらず、⾝⻑186cm、体重94.0kg 、BMIは27.2でしたが、⼀⽅、運動していない方は⾝⻑183cm、体重104.5kg、BMIが31.2と肥満でした。体脂肪率は19.2%対27.8%でした。持久力のある方はコレステロールや中性脂肪が運動していない方よりも低く、HDLは高くなっていました。HbA1cは違いはありませんが血糖値では86対102と大きな差が出ました。
最大酸素摂取量(V02max)は47.5対35.1ml/kg/minとこれも大きな差が出ました。安静時心拍数は42対57bpmでした。(ちなみに簡単に最大酸素摂取量を知りたいのであれば、ここの計算機に年齢と20秒間の安静時の心拍数を入れてみてください。)
(上の図はここより)
この双子の一人は、52歳で最大酸素摂取量(V02max)47.5というのはExcellentの範囲です。私は上の計算機では45、ガーミンのランニング用の時計では49なので、同じようにExcellentです。
さらに持久力のある方はmTORを抑制するAMPKが大きく増加していました。
さて、この筋肉の組成の違いは血糖値やインスリン抵抗性にどれほどの違いを与えるでしょうか?それは次回以降で。
「Muscle health and performance in monozygotic twins with 30 years of discordant exercise habits」
「30年間の一致しない運動習慣を持つ一卵性双生児の筋肉の健康とパフォーマンス」(原文はここ)
アップルウォッチ フィットネスアプリで、
56歳で最大酸素摂取量(V02max)40.0でした。
安静時心泊数48で56歳、計算式だとV02max48でした!