以前より大阪大学はがんに対するケトン食を行っています。もう10年近い研究になっているようです。以前の分析は「進行がんとケトン食」で書きました。その中では37人の患者について、追跡期間の中央値は25カ月(範囲は3~104カ月)で、28人の患者が死亡し、全生存期間の中央値は 25.1 か月、5 年生存率は 23.9% でした。
今回2022年3月までのデータを分析して発表しています。(ここ参照)
進行がんに対するケトン食療法の全参加者55名のうちデータが不十分な2名の患者を除く53名を対象に、ケトン食療法の実施期間と転帰の関連を評価しました。ケトン食療法の継続期間により、12か月以上群(n = 21)と12か月未満群(n = 32)の2群に分けて解析を行いました。
ちなみにケトン食のメニューの一例はこんな感じです。(図はここより)
(左)朝食:オムレツ、ツナサラダ、ベーコン、ケトンフォーミュラ、(中)昼食:豚肉ソテー、みそ汁、(右)夕食:サバの塩焼き、コンソメスープ、チーズサラダ。一部にはMCTオイルを添加。
12か月以上群と12か月未満群では様々ながんが混在しています。ケトン食の期間の中央値は12か月以上群で37か月、12か月未満群で3か月でした。(図は原文より、表は原文より改変)
性別 | 年齢 | がんの種類 | 組織学 | TNM 分類 | ケトン食継続状況 | ケトン食継続期間(週) | 生存期間(月) | 現在の状況(2023年3月時点) | |
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1 | 女性 | 56 | 肺がん | 腺癌 | T2aN0M1a | 終了 | 16 | 121 | 死亡 |
2 | 女性 | 52 | 肺がん | 腺癌 | T2aN0M1b | 継続 | 422 | 109 | 生存 |
3 | 女性 | 36 | 大腸がん | 管状腺癌 | T4bN1aM1b | 終了 | 53 | 74 | 生存 |
4 | 女性 | 41 | 乳がん | 浸潤性乳管癌 | T3N1M1 | 終了 | 61 | 73 | 生存 |
5 | 男性 | 79 | 骨肉腫 | 軟骨肉腫 | T2N1M1 | 継続 | 263 | 72 | 生存 |
6 | 男性 | 46 | 頭頚部がん | 腺様嚢胞癌 | T4aN1M1 | 終了 | 121 | 81 | 死亡 |
7 | 男性 | 55 | 肺がん | 腺癌 | T3N1M1a | 継続 | 218 | 62 | 生存 |
8 | 女性 | 50 | 大腸がん | 管状腺癌 | TXN1bM1a | 継続 | 207 | 60 | 生存 |
この表の8番目の患者のCTが下の図です。
この方は2016年12月、48歳時に大腸がんと多発性両側肺転移があると診断されました。腹腔鏡下低位前方切除術後、化学療法を受けました。しかし、2018年2月のCT検査では新たな肺転移巣の出現が判明し、2018年4月、50歳でケトン食療法を開始しました。他施設でも標準的な化学療法を継続していました。2019年1月から3月にかけて、両側肺転移に対して他施設でラジオ波焼灼術が行われました。6月に肝転移が見つかり、7月に経動脈塞栓術とラジオ波焼灼術が施行されました。12月のCTでは肺と肝臓の転移が減少を認めました。これらの治療中、患者はケトン食を継続していました。2022年3月のCT では、上の図のように両側多発性肺転移が改善していました。2023年3月現在、患者は55歳で、ケトン食を継続しており、全身状態は良好でした。
2023年3月時点で、大腸がん患者は2人生存しており、生存率は25.0%です。日本における結腸直腸がんの5年生存率は19.8%ですが、転移性結腸直腸がんの5年生存率は14%だそうです。2人の患者で転移性病変の増加もなく、良好な全身状態で5年間生存していることは非常に重要でしょう。肺がん患者2人は生存しており、生存率は33.3%です。日本で2003年から2014年の間に診断されたステージ4の肺腺がん患者の5年生存率は8.0%です。もちろん症例の数が少なすぎますが、凄い数字です。
もちろん、ケトン食だけでステージ4のがんに打ち勝つことはできないと思います。しかし、がんになる前に糖質制限を始めれば、かなりがんになるリスクは減らせるでしょう。
抗がん剤などのがんの治療で体重減少や食欲不振がある場合、よく「何でも良いから食べられるもの食べて」というアドバイスがされます。本当に食べられるものであれば何でも良いのでしょうか?入院中もたっぷりの糖質が入った入院食が出されますが、本当に良いのでしょうか?看護師はいわゆる「主食」の白米だけでも食べられるように、ふりかけの追加やおかゆへの変更を提案したりしますが、本当に良いのでしょうか?
私は根本的に栄養学が間違っていると思っています。しかし、標準的な医療の中では、エビデンスのない栄養学が押し付けられます。治療が困難となった進行がん患者だけでなく、どんな人にも糖質制限食、ケトン食を選択する自由は必要です。多くのがん患者およびその他の患者が、ケトン食療法や糖質制限を実施できるような環境と医師や看護師、栄養士の意識改革が必要です。
「Long-Term Effects of a Ketogenic Diet for Cancer」
「ケトン食のがんに対する長期的な影響」(原文はここ)
障害をもたらす糖質過剰食(現在の普通食)からケトン食などの糖質制限食への
切り替えは、健康維持や治療にも、有効なのではないでしょうか。
糖尿病持ちの親戚が別件で入院した際の病院食(糖尿病食)をみせてもらったら、炭水化物:80gと書かれていてのけぞりました。
入院して何が1番怖いかというと、病院食です。
Caesiusさん、コメントありがとうございます。
病院食は不健康食ですから。病院食を食べて健康になるとしたら、余程普段の食事が悪いのでしょう。