低LDLコレステロールと糖尿病

LDLコレステロールが低いことは健康的だと信じている人は多いでしょう。しかし、LDLコレステロールを低下させるスタチンやナイアシンは糖尿病のリスクを高めます。(「スタチン誘発性糖尿病」「ナイアシンは安全か? その1」など参照)

ということは、LDLコレステロールが低いことで糖尿病のリスクが上がるとも言えます。(「低LDLコレステロールは糖尿病のリスクを高める」参照)

今回の研究では、平均年齢50歳で脂質異常の薬や降圧薬による治療を受けておらず、ベースライン時に心血管疾患のない14,120人の人が対象です。平均のLDLコレステロール値は125±34 mg/dlでした。平均追跡期間4.5年では、312名 (2.2%) が糖尿病を発症しました。LDLコレステロールに関連する遺伝子変異による遺伝的リスクスコア(GRS)との関連も調べています。(図は原文より)

上の図の左側がLDLコレステロール値と糖尿病を発症する可能性です。LDLコレステロール値約3mmol/L(116mg/dL)を1とすると、それよりも高いLDLコレステロールではどんどん糖尿病発症の可能性が低下しています。

また、GRSはLDLコレステロールのように線形ではありませんが、GRSが高い、つまりLDLコレステロールの高い遺伝子変異が多いほど糖尿病発症の可能性が少なくなっています。

そうだとすると家族性高コレステロール血症(FH)では糖尿病になりにくいのでしょうか?まさにそうです。

ある研究では、18 歳以上のヘテロFH であることが明らかであるか、ヘテロFH である可能性が高い1732人と一般の集団を比較したとき、2型糖尿病の有病率は、5.94%対9.44%、とおよそ40%も低くなっていました。(ここ参照)

スタチンやナイアシンでLDLコレステロールが低下すると糖尿病のリスクが上がり、逆に糖質制限で血糖値が下がり糖尿病になる可能性が低下するとLDLコレステロールが上昇することが多いことを考えると、血糖値および耐糖能とLDLコレステロールおよびその他の脂質(中性脂肪やHDLコレステロール)は別々の次元の問題ではなく、お互いに強く関連して影響しあっていると考えられます。糖代謝と脂質代謝は一体なのでしょう。

そうすると、血糖値が高いから血糖値を下げる薬、LDLコレステロールが高いからLDLコレステロールを下げる薬、という短絡的な治療は非常に危険である可能性があります。それは全体的な代謝を無視しているからです。

代謝の基本は食事です。食事を変えずにいれば、代謝は変わらないでしょう。

まずは糖質制限が基本です。

「Low-density-lipoprotein cholesterol concentrations and risk of incident diabetes: epidemiological and genetic insights from the Framingham Heart Study」

「LDLコレステロール濃度と糖尿病発症リスク:フラミンガム心臓研究からの疫学的および遺伝的洞察」(原文はここ

4 thoughts on “低LDLコレステロールと糖尿病

  1. 私も糖質制限によってLDLコレステロールは130〜160と高くなりましたが、これが摂取する糖質が少なくなった事によるのか、玉子などのコレステロールが多い食材の摂取が増えた事によるのかよくわかりませんが、玉子を毎日3個程度食べ続けると190を超えたことはありますから食材によるレスポンスがあるのは確かです。

    そこで質問ですが、糖質摂取量の低下によるLDLコレステロール値の上昇は問題ないとして、では高コレステロールの食材摂取によって上昇した場合も問題ないと考えて良いのでしょうか。
    また、糖質制限下であっても治療を要する上限はあるのでしょうか。

    1. 西村典彦さん、コメントありがとうございます。

      コレステロール値に食事は関係ないと言われていますが、食事で上がるレスポンダーはいると思います。
      しかし、コレステロールそのものは何も悪さをしません。問題はそれを運ぶリポタンパク質の質でしょう。
      恐らく食事のコレステロールも内因性のコレステロールも違いはないでしょう。
      糖質制限をしているのであれば、家族性高コレステロール血症の人でも問題ないので、上限は無いと思っています。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      コレステロールや血圧、血糖値など薬による数字合わせだけでは健康になれませんよね。

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