スタチンの筋肉への有害性は有名です。多くの人が筋肉系の症状を感じるでしょう。では、スタチンを使用している人がマラソンを行った場合、どうなるのでしょうか?
今回の研究ではボストンマラソンのランナーでスタチンあり37人とスタチンなし43人を比較しました。もちろん普通にフルマラソンを走っても筋肉は壊れるので、筋肉が壊れたときのCKは上昇します。平均年齢は50代です。CKには様々なCKすべてを合わせたものと、臓器に特異的なものがあり、心筋 (CK-MB)、骨格筋 (CK-MM)、脳など (CK-BB) があります。(図は原文より)
上の図は総CK値です。左からマラソン前日、ゴール直後、マラソンの翌日です。黒いバーがスタチンあり、白いバーがスタチンなしです。そうするとレース前のとゴール直後ではスタチンの有無でCKに違いはありませんが、当然レース前よりもゴールしたときの方がCKが大きく上昇しています。
そして翌日を見ると、スタチンありのグループの方が有意にCKが高くなっています。
上の図はCKMB、つまり心筋のCKです。翌日ではスタチン群の方が心筋のCKが大きく増加していますね。ちなみにCKMBの基準値は0~4U/Lなので、スタチン群はそれを超えてしまっていますね。
上の図は総CKですが、タイム別です。4時間を切るサブ4が黒、4時間以上が白です。サブ4の方が筋肉が壊れるのが多いようです。
上の図は年齢とCKの上昇との関連です。スタチンなしでは年齢と関連していませんが、スタチンありでは年齢と共にCKの上昇が大きくなるようです。
スタチンはミトコンドリアの機能低下を起こしますので、筋肉のミトコンドリアのエネルギー産生能力が低下するでしょう。(ここ参照)
スタチンによる心筋のCKMBの上昇は、本当に心筋由来なのかどうかはわかりません。もし、本当に心筋由来であれば、スタチン使用中のハードな運動は十分に注意が必要です。特にマラソンは中高年の方が多く出場しています。スタチンがただ筋肉痛を増やす程度の影響であれば良いのですが。
いずれにしても、スタチンなんかいりませんが。
「Effect of statins on creatine kinase levels before and after a marathon run」
「マラソン前後のクレアチンキナーゼレベルに対するスタチンの影響」(原文はここ)