アメリカの現在の食事ガイドラインでは、「ounce-equivalent」(oz-eq)「オンス相当(?)オンス当量(?)」という変な考え方が用いられています。(「アメリカ人のための食事ガイドラインはなんか変だ」参照)
タンパク質量や必須アミノ酸量が同じではないのに、同等のタンパク質源であるはずがないからです。タンパク質量やそのほかの栄養素が違えば、代謝も変化するのは当然でしょう。食材の重さで何で?このガイドライン本当に変です。
22~39歳(平均年齢26.0歳)の若者30人(平均BMI26.4)と55~75歳(平均年齢64.2歳)の高齢者25人(平均BMI26.1)が対象です。
参加者は試験食(野菜)と2オンス相当の未加工の赤身豚ロース肉、スクランブル全卵、黒豆、生のスライスアーモンドを摂取しました。試験食と各タンパク質食品2オンス相当のエネルギーと主要栄養素の含有量は、次のとおりです。(図は原文より、表は原文より改変)
エネルギー (kcal) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | タンパク質 (g) | 必須アミノ酸 (g) | |
---|---|---|---|---|---|
試験食 | 218 | 11.5 | 25.8 | 6 | 2.09 |
赤身の豚ロース肉 | 73 | 1 | 0 | 14 | 7.36 |
全卵 | 145 | 10 | 0 | 12.5 | 5.38 |
黒豆 | 113 | 0.5 | 20 | 7.5 | 3.02 |
アーモンド | 161 | 14 | 6 | 6 | 1.85 |
これだけの栄養素が違えば、代謝が変わるし、当然必須アミノ酸の量も変わって当たり前に思えますが、それ以上に違いがある可能性があります。
上の図は血中の必須アミノ酸の濃度の推移と300分間の増加分の曲線下面積です。Aは若者ですが、最も必須アミノ酸濃度が上がったのが豚肉で、次が卵です。黒豆とアーモンドはほとんど変化ありません。Bは高齢者ですが、若者と同様です。ピークは120分です。300分でもまだ濃度はベースラインに戻っていません。
Cの曲線下面積は推移と同様に、最も多いのが豚肉、次が卵、黒豆とアーモンドは豚肉の3分の1以下です。豚肉は試験食と合わせれば必須アミノ酸量は9.45gであり、黒豆は試験食と合わせて5.11gです。つまり、豚肉と比較して、含まれる必須アミノ酸量の差よりももっと黒豆の方が血中のアミノ酸が少ないことになります。それは吸収が悪いのでしょう。
重さや量が等しくても、それがそのまま人間が利用可能ではありません。動物性タンパク質の方が明らかに吸収がよく、バイオアベイラビリティが高いのです。植物性タンパク質と動物性タンパク質を同等に考えるわけにはいかないでしょう。
それがわかっているのに、なぜアメリカのガイドラインはこんな変な「オンス相当」という考えを推奨し始めたのでしょう?恐らくは何らかの力ですね。
以前の記事「アメリカの食事ガイドライン2020の諮問委員会のメンバーの利益相反」で書いたように、ガイドラインの委員会の20⼈のメンバーのうち19⼈が業界の関係者と何らかの形で関係を持っていることがわかりました。企業の利益になるようにガイドラインは決められるでしょう。
何が正しいか非常にわかりにくくなっている時代です。自分で情報を得て、自分で考え判断し、決めなければなりません。自然と与えられた情報には何らかの意図が隠されている可能性が高いでしょう。
それにしても「オンス相当」ってよくわからん。とにかく肉食べよう!
「Effects of Consuming Ounce-Equivalent Portions of Animal- vs. Plant-Based Protein Foods, as Defined by the Dietary Guidelines for Americans on Essential Amino Acids Bioavailability in Young and Older Adults: Two Cross-Over Randomized Controlled Trials」
「アメリカ人の食事ガイドラインで定義されている、動物ベースのタンパク質食品と植物ベースのタンパク質食品のオンス相当量の摂取が、若者と高齢者の必須アミノ酸のバイオアベイラビリティに及ぼす影響:2つのクロスオーバーランダム化比較試験」(原文はここ)
日本の栄養専門家の最高峰
管理栄養士のほとんども、
重さとカロリー(熱エネルギー)
を根拠に自論展開されてますが、
アベイラビリティまで
思いが及ばないのか、
メンドクサイのか、、、
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
無知なのかもしれません。
初めまして、管理栄養士です。5年前から循環器クリニックで糖質制限栄養指導をしています。糖質制限に出会ってから、15年ほど経ち、6年前の江部先生の講演会がきっかけで、日本糖質制限医療推進協会に入会しました。糖質制限の効果は身をもって検証済みだったのですが、実際に数値が下がり、喜んでもらえる患者さんがいることに日々驚いています。まだまだ書き足りませんが、頑張っている管理栄養士もいることをお知らせします(笑)
神 秀樹さん、コメントありがとうございます。
申し訳ありません。もちろん、ちゃんとした管理栄養士さんがいることはわかっています。
しかし、多くの栄養士さんは違うので、いつもちゃんとした栄養士さんには失礼な書き方をしてしまっています。
医師や専門医に対しても同様です。