「その1」では一般的に冠動脈石灰化は心血管疾患のリスク因子として重要であることを書きました。しかし、スタチンは心血管疾患を抑制すると医療の中では考えられながら、冠動脈の石灰化を促進してしまいます。
今回の研究では、8つの前向きランダム化試験の冠動脈疾患患者を対象とした事後解析を行っています。高用量スタチン療法(HIST)を実施した1545人、低用量スタチン療法(LIST)を実施した1726人と、スタチン療法を実施しなかった224人を対象としています。ベースライン時および試験終了時(18~24カ月後)に同一冠動脈で実施された血管内超音波検査で、アテローム容積としてアテローム容積率(PAV)および総アテローム容積(TAV)、さらにカルシウム指数(CaI)をそれぞれ算出しました。
上の図Aはアテローム容積パーセント (PAV) とカルシウム指数 (CaI) の変化を示します。Bは総アテローム容積 (TAV) とCaIの変化を示しています。PAV および TAV の変化は青いバー、CaI の変化はオレンジの□で示しています。高用量スタチン療法(HIST)は確かにPAV、TAVの減少を示しています。低用量スタチン療法(LIST)ではPAVが増加しています。しかし、カルシウム指数(CaI)は非スタチン療法群と比較して、スタチン群、特に高容量スタチン療法群で増加していました。つまり、スタチンで冠動脈プラークの石灰化を促進していたと考えられます。
気になることは、対象のベースラインの背景の違いです。非スタチン投与群には、他のスタチン群と比べて高齢であり、女性が多く、糖尿病や高血圧、末梢動脈疾患の発生率が高いなどの特徴がありました。血液検査上でも、高容量スタチン群では炎症を表す、CRPが最も低く、非スタチン群では最も高くなっていました。さらにHDLコレステロールは非スタチン群で41.7mg/dと最も低く、中性脂肪値も158mg/dlと最も高くなっていました。つまり、非スタチン群はもともと、インスリン抵抗性が最も高い群だったと考えられます。
非スタチン群は糖尿病やインスリン抵抗性で、最もプラークが増加しやすい状況だったとも考えられます。そうすると非スタチン群ではPAV、TAVが増加しているのも十分考えられることでしょう。
この結果をもとに、著者はスタチンが石灰化によりプラークが安定したと考えています。本当にその解釈が正しいかどうかはわかりません。
スタチンはビタミンK3からK2への変換を阻害します。ビタミンK2は骨、血管、心臓、腎臓などに存在するオステオカルシンやマトリックスGlaタンパクなどに働き、血管の石灰化を防いでいますが、スタチンはビタミン K2の産生を阻害してしまうので、動脈硬化および冠動脈の石灰化を促進すると考えられます。(こことここ参照)
様々な研究の結果は、明確に石灰化は心血管疾患のリスク増加になり、スタチンは石灰化を促進します。しかし、話はそんなに単純ではないようです。
この続きは次回以降で。
「Impact of statins on serial coronary calcification during atheroma progression and regression」
「アテロームの進行および退縮中の連続冠状動脈石灰化に対するスタチンの影響」(原文はここ)
コロナワクチン開発された方々が
ノーベル賞受賞。
ワクチン開発手法は画期的なのかも
しれませんが、ワクチン接種の功罪は
世界的にどう評価されているので
しようか、疑問です。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
もはやノーベル賞は一部の力でどうにでもなることが露呈しました。
mRNAワクチンの功罪の評価はまだされていません。
ワクチンの害が明らかになってきている今だから、ノーベル賞が利用されたのでしょう。