糖尿病においてGLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬で起こる筋肉量の減少

GLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬などが糖尿病の治療、肥満の治療に使われています。これらは体重減少効果が認められています。

今回の研究は、SUSTAIN 8という安定した治療を受けている2型糖尿病788人を対象とした、週1回セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)1.0mgと1日1回カナグリフロジン(SGLT-2阻害薬)300mgを比較する52週間の第III相ランダム化二重盲検試験のサブ研究です。178 人の参加者はセマグルチド(88人)、カナグリフロジン90人に無作為に割り付けられました。そして、ベースラインから52週目までの体重変化を分析しています。

ベースラインでは全体の平均HbA1cは8.4で、体重は88.3kgでした。また体組成は総脂肪量33.2kg(37.6%)、総除脂肪量が51.3k(59.4%)、および 1.5 kg (0.8) でした。腹部脂肪の 43.9% [15.7])、内臓脂肪量については。全体の平均 (SD) ベースラインの総脂肪量と総除脂肪量の比は 0.7 (0.2) でした。

加者は、全体の平均 (SD) ベースライン HbA 1c値が 68.0 mmol/mol (11.5) [8.4% (1.0)]、体重が 88.3 kg (18.2) でした。全体の平均 (SD) ベースライン体組成値は、総脂肪量が 33.2 kg (11.0) と 37.6% (7.8)、総除脂肪量が 51.3 kg (10.4) と 59.4% (7.5)、内臓脂肪量は1.5 kg(腹部脂肪の43.9%)でした。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はセマグルチド( a ) およびカナグリフロジン ( b )による 52 週間の体重減少率です。1年間でも体重が10%以上減少したのはGLP-1受容体作動薬で20%程度、SGLT-2阻害薬では10%程度です。まあ、痩せないよりは良いですが、1年間の結果としてはかなりショボいです。

セマグルチド 1.0 mgカナグリフロジン 300 mg
総脂肪量
  52週目の変化、kg−3.41 (0.51)−2.62(0.45)
総除脂肪量
  52週目の変化、kg−2.26(0.30)−1.48(0.28)
総脂肪と除脂肪量
  52週目の変化、kg−5.7−4.1
内臓脂肪量
  52週目の変化、kg−0.18(0.05)−0.11(0.04)
腹囲、cm
  52週目の変化−3.9(5.6)−2.5(5.5)

上の図と表は体重変化が体組成の何が変化したのかを分析しています。全体の1年間での体重変化(総脂肪量と総除脂肪量の減少の合計)はセマグルチドで-5.7kg、カナグリフロジンで-4.1kgでした。

内臓脂肪量はほとんど減少していませんね。注目すべきは除脂肪量の減少です。セマグルチドで-2.26kg、カナグリフロジンで-1.48kgでした。セマグルチドでは体重減少の約40%、カナグリフロジンでは約36%が除脂肪、つまり筋肉の減少で起きているのです。

そして以前の記事「効果を維持するためにはやめることができないGLP-1受容体作動薬」で書いたように、GLP-1薬は止めれば体重も検査データももとに戻ってしまいます。つまり、患者を患者のままでいさせる薬です。もちろんSFLT-2薬も同様です。そして、薬をやめて体重が戻っても、筋肉は戻らないでしょう。

通常糖質制限では筋肉は減少しません。体重減少の効果を得るために、人間にとって非常に重要な筋肉量を減少させる必要はありません。これらの薬で体重減少があるから処方している医師のどれほどが、筋肉量減少の危険性を説明しているでしょうか?

糖尿病を改善、痩せるためには糖質制限です。

「Effects of once-weekly semaglutide vs once-daily canagliflozin on body composition in type 2 diabetes: a substudy of the SUSTAIN 8 randomised controlled clinical trial」

「2型糖尿病における体組成に対する週1回セマグルチドと1日1回カナグリフロジンの効果:SUSTAIN 8ランダム化対照臨床試験のサブ研究」(原文はここ

2 thoughts on “糖尿病においてGLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬で起こる筋肉量の減少

  1. 今晩は。SGLT-2阻害薬は「アメージングリザルト」ともてはやされていたと思いますが…やはり美味い話はないのですね。筋肉をつけるのが容易でない事が骨身にしみていますので腹立たしささえ感じてしまいました。

  2. 『おっさん糖尿病になる!』
    (下関マグロ/北尾トロ)2007年刊
    題名に惹かれ読みましたが、
    治療はバランスの良いカロリー制限食
    や投薬治療を頑張って
    いらっしゃいました。
    時代もありますが糖質制限は
    一切言及無し。

    気になって著者のブログ拝見すると、
    2020年に特発性大腿骨頭壊死症
    罹患されていました。

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