一部のベンゾジアゼピンはがんの生存率を低下させる

がんの治療中に不安や不眠で抗不安薬、眠剤としてベンゾジアゼピンを処方されている人はいるでしょう。このベンゾジアゼピンががんの患者の生存率に影響を与えると聞いたら、驚くかもしれません。

今回の研究では一部のベンゾジアゼピンががん患者に与える影響を分析しました。前立腺、すい臓、卵巣、腎臓、子宮、結腸、乳房、脳の原発がん、黒色腫を患う患者などを特に評価しました。すべての種類のがんにおいて、患者の30.9% がベンゾジアゼピン使用の記録を持っていました。すい臓がん患者はベンゾジアゼピン使用が最も高く、患者の40.6%が少なくとも1つのベンゾジアゼピンを処方されていました。ベンゾジアゼピンの使用はすい臓がん関連死亡のリスクが30%低下しました。

そこで、化学療法を受けているすい臓がん患者において、特定のベンゾジアゼピンについて分析しました。処置などに頻繁に使われるミダゾラムの次、2番目3番目によく使用されるベンゾジアゼピンのロラゼパム(先発品名はワイパックス、これまたファイザーの製品)とアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)と無増悪生存期間(PFS)との関連を調べました。無増悪生存期間(PFS)とは、治療中(治療後)にがんが進行せず安定した状態である期間を言います。

そうすると、驚くべきことに、ロラゼパム使用者は、ロラゼパムを処方されなかった患者と比較して、3.83倍悪いPFSと関連していました。つまり、ロラゼパムを使った方がすい臓がんの進行または死亡のリスクが 3.83 倍も高かったのです。対照的に、アルプラゾラムは、アルプラゾラムを処方されなかった患者と比較して、PFSの有意な改善と関連していました。

さらに他のがんとの関連を見てみると下の図のようになっていました。(図は原文より)

 

上の図のAはロラゼパム、Bはアルプラゾラムです。ロラゼパムは腎臓と脳を除く、前立腺、卵巣、黒色腫、頭頚部、子宮、結腸、乳房のがんで全生存期間の有意な悪化と相関しており、その影響は25~116%のリスク増加でした。アルプラゾラムは前立腺と乳がんのみ有意な悪化でした。アルプラゾラムがホルモン系のがんの生存期間を悪化させるというのも興味深いですね。

ロラゼパムがなぜがんの死亡率を増加させるかのメカニズムは、マウス実験上ではロラゼパムは線維形成、炎症性シグナル伝達、および虚血性壊死を促進し、がん関連線維芽細胞におけるIL-6の発現および分泌を大幅に増加させることと関連しているようです。難しくてよくわかりません。

しかし、ベンゾジアゼピンの作用は中枢に働いて眠気を起こしたり、落ち着かせたりするだけの作用だけにとどまらず、がん細胞にも影響がある可能性があります。

がん治療という状況においてはベンゾジアゼピンが必要なこともあるでしょう。しかし、どの薬を使うかは考えた方が良いのかもしれません。

ロラゼパムの先発品ワイパックスはあのファイザーの薬です。何か関係があるのかな?考え過ぎかな?

「Lorazepam Stimulates IL6 Production and Is Associated with Poor Survival Outcomes in Pancreatic Cancer」

「ロラゼパムはIL6産生を刺激し、膵臓がんにおける生存率の低下と関連している」(原文はここ

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