リリカ(プレガバリン)と認知症

リリカは非常に安易に処方されています。末梢の神経障害性の痛みに対して使われるのですが、何でもかんでも痛みがあればNSAIDsの次にリリカを試す医師は多いでしょう。そして、このリリカが適応とされる患者の多くは高齢者です。

高齢者にリリカを処方すると、時に眠気やふらつきが出ます。ただでさえ歩行が弱っている高齢者がふらついたら転倒の恐れがあります。眠気などで活動性が低下してしまえば、高齢者はどんどん弱ります。

当然、リリカは中枢に作用するので認知症との関連を考えなければなりません。

今回の研究では、リリカと認知症の関連について分析しました。34,467人のリリカ(またはガバペンチン)が処方された症例と172,335人の対照が対象です。(図は原文より、表は原文より改変)

 

上の図は認知症の累積発症率です。赤がリリカまたはガバペンチンを飲んでいる群、青は飲んでいない群です。リリカ群の方が認知症発症率が高いですね。

さらに下の表のように、認知症のリスクは、追跡調査中に年間の累積規定用量(cDDD)が増加するにつれて増加しました。(累積規定用量については省略します)

HR (95% CI)
追跡調査中の年間のガバペンチンまたはプレガバリンの累積規定用量
<0.501
0.50~1.951.24 (1.09 ~ 1.41)
1.96~9.661.69 (1.50–1.92)
>9.662.44 (2.14 ~ 2.78)

処方量が増加すればするほど認知症リスクが高くなると考えられます。

上の図は様々なグループの認知症発症リスクです。興味深いことに、年齢のグループで分けると、50歳未満の方がリスクが高くなりました。50歳未満の年齢グループでは3.16倍、50~59歳では1.58倍、 60~69歳で1.54倍、70歳以上では1.30倍でした。しかし、年齢だけでなくその他の様々な条件でのグループのほとんどが認知症リスクが高まっています。

今回の研究の結果を考えると、リリカの長期投与、1日量が多い処方、比較的若年層への投与には慎重にならなければなりませんし、患者への説明が必要でしょう。

リリカも根本的に治療薬ではありません。必要最小限で、適応の無い場合は慎重に検討が必要でしょう。私はリリカの処方は滅多にしません。

それにリリカは悪名高いファイザーの薬ですからね。

「The association between Gabapentin or Pregabalin use and the risk of dementia: an analysis of the National Health Insurance Research Database in Taiwan」

「ガバペンチンまたはプレガバリンの使用と認知症リスクとの関連性:台湾の国民健康保険研究データベースの分析」(原文はここ

3 thoughts on “リリカ(プレガバリン)と認知症

  1. 40歳越えてからは、起床時身体痛い
    ことも多いですが、
    食事や運動の継続で軽減し、
    今56歳ですが元気に活動できます。

    手軽な痛み止めは、逆に怖くて
    飲めません。

  2. 足を痛めて、ロキソニンテープを貼っていました。貼付部が光過敏症になる可能性があると知り、怖くなりました。鈴木さんに同感です。  遅ればせながら「糖質過剰症候群」読ませて頂きました。久山町研究の資料で、お米が認知症のリスクがとても高いと改めて知りました。何故世間の認識が変わらないのでしょう(変えたくない人が多すぎ)リスク低下の食品群は糖質制限実践者にも有効か分かりませんが(お米の替わりに食べている感がなきにしもあらず)乳製品(チーズ)大豆製品(きなこ少量)を取り入れてみています。気のせいか短気な家族(脚に痛み持)が少し穏やかになったような…清水先生有益な情報を有り難うございます。もう少し継続して変化を観察します。

    1. ミンミンさん、コメントありがとうございます。

      急性期の薬の使用まで否定するつもりはありませんが、現在の医療は治りもしないのに、
      ダラダラと長期に薬を処方するのが当たり前になっています。
      根本原因を治さなければ体は改善しません。

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