レムナント(残存)コレステロールは心血管疾患リスクの強力な予測因子と考えられています。しかし、レムナントコレステロールそのものが悪さをするというよりも、レムナントコレステロールが増加する状態が心血管疾患の原因だと思われます。だから単純にレムナントコレステロールを低下させる薬を開発して、低下させても健康にはなれないでしょう。
今回の研究では、アルバータ州トゥモロー プロジェクト (ATP) という研究のデータを使用して、非空腹時レムナントコレステロール、LDLコレステロールと心血管疾患との関係を調べました。
対象は13,988 人で平均年齢は61.8歳、69.4%が女性、18.9%がスタチンを服用しています。追跡期間は約15年でした。複合心血管疾患が主要転帰で、虚血性心疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、一過性脳虚血発作、急性虚血性脳卒中などの心血管疾患の診断を合わせたものです。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は複合心血管疾患の発症率です。Aはレムナントコレステロール、BはLDLコレステロールです。横軸のコレステロールは日本の単位ではないので、38.7をかけると日本の単位になります。青い折れ線グラフはスタチン使用者の割合を示しています。そうすると、レムナントコレステロールが増加すると心血管疾患の発症率も増加しています。しかもスタチンを使用している人が増加しているにもかかわらずです。LDLは最もLDLコレステロール値が低いグループが最も心血管疾患の発症率が高くなっています。これもまたもっともLDLコレステロール値が低いグループのスタチン使用率が最も高いにもかかわらずです。LDLコレステロール値が最も低いグループの目盛りは2を下回っているので、恐らく日本の単位では70mg/dL以下といった感じでしょう。あらら、これまでLDLが高いほど心血管疾患のリスクは高くなると言われていたのに。
上の図は1mmol/L(日本の単位では38.7mg/dL)増加当たりの心血管疾患発生の可能性です。レムナントコレステロールはほとんどの心血管疾患で増加しています。しかしLDLコレステロールは増加するほど心血管疾患が低下しています。あらら。
四分位数 (範囲) | 調整済みOR (95% CI) |
---|---|
レムナントコレステロール | |
1 (0.06 ~ 0.49) | 1.00 |
2 (0.50 ~ 0.70) | 0.97 (0.80–1.19) |
3 (0.71 ~ 0.99) | 1.38 (1.15 ~ 1.67) |
4 (1.00–2.04) | 1.46 (1.22–1.76) |
LDLコレステロール | |
1 (0.26 ~ 2.28) | 1.00 |
2 (2.29–2.82) | 0.63 (0.53~0.75) |
3 (2.83–3.40) | 0.52 (0.44 ~ 0.63) |
4 (3.41–8.83) | 0.52 (0.43 ~ 0.62) |
上の表はレムナントコレステロールとLDLコレステロールの値を4つのグループに分けたときの複合心血管疾患発生の可能性です。レムナントが多いほどLDLが低いほど複合心血管疾患発生率は高くなりました。しかも、性別とスタチン使用による差異はほとんど見られませんでした。スタチン意味なし。
もう、LDLコレステロールを気にする必要はないようですね。
レムナントはApoCⅢというアポリポタンパクによって増加します。(「ApoCⅢがレムナントコレステロールと関連している」参照)そして、ApoCIIIの発現はブドウ糖によってChREBP-1およびSREBP-1を活性化して増加し、インスリンによって減少します。しかし、インスリン分泌の減少またはインスリン抵抗性の増加により負の調整が働かなくなり、ApoCIIIは増加してしまいます。恐らくブドウ糖によるApoCIIIの発現増加は一時的であり、血糖値スパイクに続くインスリンの増加によって急速に逆転すると考えられますが、インスリン抵抗性または糖尿病では、高レベルのApoCIIIを示します。
一方、果糖の摂取は、ブドウ糖の摂取と同様にChREBP-1およびSREBP-1を活性化しますが、ブドウ糖とは対照的に、インスリン分泌を刺激しません。そのため果糖摂取後のApoCIII発現は、インスリンによる負の調整が働かなくなり、ApoCIIIが大きく増加すると考えられます。(「ApoCⅢの調節と役割」「果糖はブドウ糖よりもApoCIIIを大幅に増加させる」参照)
つまり、レムナントコレステロールの増加は糖質過剰摂取によるものなのです。心血管疾患は糖質過剰症候群です。まずは糖質制限をしましょう。
「Nonfasting remnant cholesterol and cardiovascular disease risk prediction in Albertans: a prospective cohort study」
「アルバータ州における非絶食時レムナントコレステロールと心血管疾患のリスク予測:前向きコホート研究」(原文はここ)
LDLバッシンクは、糖質依存から
目を逸らす為の方策
に感じます。
こんなに美味しい、脳のエネルギー
でもある糖質が悪者のはずはなく、
悪いのは
脂肪、コレステロール。
いまだにコレステロール0表示アビール食品
(糖質はたっぷり)がはびこってます。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
コレステロールも飽和脂肪酸も塩もすべて糖質から目を逸らすためですね