猛毒「果糖」は糖質の中で最も有害でしょう。以前の記事「高HDLコレステロールは健康的なのか? その2」「食事を変えることが一番の治療」などで書いたApoCIIIを増加させる作用はブドウ糖よりも大きくなります。
今回の研究は、摂取エネルギーの25%をブドウ糖または果糖の飲料で10週間摂取した場合の変化を分析しています。
すべての参加者(31人)の平均年齢53.7 歳、BMI30.8、およびベースライン空腹時中性脂肪値は145.2mg/dLでした。
ベースラインの食事は、エネルギーの55%が主に複合炭水化物、30%が脂質、15%がタンパク質で構成されていました。介入食は、30%の複合炭水化物と25%のブドウ糖または果糖で甘味を付けた飲料以外は、それぞれのベースラインの食事を模倣しました。ブドウ糖または果糖で甘味を付けた飲料を10週間摂取する前後でどうなったでしょう。
直径 | コレステロール (mg/dL) | 中性脂肪 (mg/dL) | |||||||
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空腹時 | 食後 | 空腹時 | 食後 | ||||||
(nm) | ブドウ糖 | 果糖 | ブドウ糖 | 果糖 | ブドウ糖 | 果糖 | ブドウ糖 | 果糖 | |
TRLp1 | >90 | 2.7±0.6 | 3.2±0.8 | 3.4±0.7 | 3.6±0.9 | 10.0±2.6 | 14.1±3.4 | 19.0±4.1 | 22.1±5.0 |
TRLp2 | 75 | 1.4±0.2 | 1.5±0.3 | 1.6±0.2 | 1.6±0.3 | 6.6±1.3 | 6.9±1.3 | 10.1±1.7 | 10.3±2.1 |
TRLp3 | 64 | 3.8±0.5 | 3.7±0.5 | 4.1±0.5 | 3.7±0.6 | 14.9±2.6 | 14.1±2.3 | 18.4±2.7 | 17.9±2.9 |
TRLp4 | 53.6 | 7.4±0.7 | 6.8±0.7 | 7.1±0.7 | 6.4±0.8 | 27.1±4.0 | 23.9±3.4 | 29.7±4.0 | 28.0±4.0 |
TRLp5 | 44.5 | 16.5±1.0 | 14.6±1.0 | 14.4±1.2 | 12.6±1.1 | 33.9±4.4 | 28.9±3.5 | 35.0±4.3 | 32.7±3.9 |
TRLp6 | 36.8 | 12.9±1.1 | 11.5±1.2 | 10.6±1.4 | 9.5±1.3 | 17.7±2.0 | 15.1±1.7 | 18.5±2.0 | 17.6±1.9 |
TRLp7 | 31.3 | 6.0±0.4 | 5.5±0.6 | 6.4±0.5 | 6.0±0.5 | 5.0±0.5 | 4.3±0.5 | 5.6±0.5 | 5.5±0.5 |
LDLp1 | 28.6 | 19.4±1.1 | 18.2±1.2 | 20.7±1.6 | 19.1±1.2 | 7.6±0.6 | 6.9±0.7 | 8.7±0.7 | 8.5±0.7 |
LDLp2 | 25.5 | 39.0±1.3 | 36.3±2.1 | 36.6±1.6 | 35.7±2.1 | 8.4±0.6 | 8.0±0.8 | 9.4±0.7 | 9.6±1.0 |
LDLp3 | 23.0 | 21.7±1.3 | 20.2±1.9 | 19.0±1.6 | 18.6±1.7 | 5.5±0.5 | 5.1±0.6 | 5.9±0.6 | 6.0±0.8 |
LDLp4 | 20.7 | 6.3±0.5 | 5.8±0.6 | 5.6±0.7 | 5.2±0.5 | 2.1±0.2 | 1.9±0.2 | 2.2±0.3 | 2.2±0.3 |
LDLp5 | 18.6 | 2.5±0.2 | 2.4±0.2 | 2.3±0.2 | 2.2±0.2 | 1.1±0.1 | 1.1±0.1 | 1.4±0.2 | 1.3±0.2 |
LDLp6 | 16.7 | 1.4±0.1 | 1.3±0.1 | 1.3±0.1 | 1.2±0.1 | 0.7±0.1 | 0.7±0.1 | 1.0±0.1 | 0.9±0.1 |
下の図は10週間後のApoCIIIの変化率です。
左が空腹時、右が食後、黒いバーがブドウ糖、グレーが果糖です。明らかに果糖の方がApoCIIIの増加率が大きく、食後では10%を超えています。
上の図は、TRLの中性脂肪とコレステロールの変化率です。TRL1はカイロミクロンです。2はカイロミクロンとVLDLでしょう。中性脂肪に富むと大きいVLDLが分泌され、そうでなければ小型のVLDLが分泌されます。インスリン抵抗性では大きいVLDLが増加します。
Aは空腹時の中性脂肪、Bは食後中性脂肪で、Cは空腹時のコレステロール、Dは食後コレステロールです。面白いことに、空腹時中性脂肪は、ブドウ糖と果糖では全く逆の変化でした。ブドウ糖はTRLの粒子が大きいほど中性脂肪が増加し、果糖では粒子が小さいほど増加していました。(空腹時にカイロミクロン(TRL1)があることも不思議ですが、レムナントなんでしょうね。)
食後中性脂肪はどちらもより大きな粒子で増加していましたが、その違いは大きく、果糖では大幅に増加していました。果糖では100%以上増加している分画もあります。
コレステロールは空腹時ではブドウ糖では変化がなく、果糖では最も大きい粒子で低下、最も小さい粒子で増加していました。しかし、果糖では食後のコレステロールは増加し、それは粒子が大きいほど顕著でした。
上の図はLDLの変化率です。6つのLDL分画において、どれも空腹時の中性脂肪は増加していました。しかし、食後の中性脂肪の増加は、ブドウ糖よりも果糖の方が増加が大きく、粒子が小さいほど増加が大きくなりました。空腹時コレステロールはブドウ糖と比較して、果糖で大幅に増加し、小さいsdLDLで特に増加していました。食後ではどちらもコレステロールは増加していましたが、果糖の方がより大きな増加を示しました。
ブドウ糖と比較して、果糖摂取の食後では、すべてのLDL分画の中性脂肪含有量の増加を示しました。中性脂肪が豊富なLDLは、LDL 受容体に対する親和性が低下し、血中の滞留時間が長くなります。そのため小さいsdLDL粒子 (LDLp3-6) は酸化や糖化を起こしやすくなると思われます。
ブドウ糖 | 果糖 | |||||
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0週間 | 10週間 | % 変化 | 0週間 | 10週間 | % 変化 | |
リポタンパク質中性脂肪 (mg/dL) | ||||||
TRL中性脂肪–空腹時 | 116.4±17.3 | 122.8±16.6 | 14.3±6.0 | 107.3±14.5 | 111.9±15.4 | 7.2±6.8 |
TRL中性脂肪–食後 | 138.3±19.4 | 149.8±18.9 | 11.4±6.1 | 134.2±18.8 | 180.9±22.4 | 42.9 ± 8.3 |
LDL中性脂肪–空腹時 | 24.7±2.3 | 26.1±2.2 | 6.3±6.3 | 23.7±2.5 | 26.8±2.9 | 13.9 ± 5.3 |
LDL中性脂肪–食後 | 27.3±2.7 | 30.6±2.2 | 8.8±4.4 | 28.5±2.9 | 33.2±3.1 | 18.6 ± 3.1 |
リポタンパク質コレステロール (mg/dL) | ||||||
TRLコレステロール–空腹時 | 51.3±43.7 | 46.3±5.3 | −4.1±3.0 | 46.7±4.0 | 47.9±4.7 | 2.6±3.8 |
TRLコレステロール–食後 | 48.1±4.3 | 46.4±6.1 | −2.7±3.6 | 43.4±4.5 | 49.8±4.7 | 16.3 ± 5.1 |
LDLコレステロール-空腹時 | 90.4±3.3 | 96.1±3.9 | 7.0±3.7 | 84.3.0±5.3 | 101±7 | 19.3 ± 2.9 |
LDLコレステロール–食後 | 86.0±3.9 | 90.3±3.4 | 7.1±2.6 | 82.1±5.0 | 94.3±6.1 | 14.7 ± 1.9 |
現在の様々な飲食物の商品には異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)がいっぱい入っています。それらを毎日のように摂って健康になれるはずがありません。また、リンゴの美味しい季節ですが、リンゴ1個にはおよそ33gの糖質が含まれています。そのうちおよそ3分の2は果糖です。食べたとしても4分の1程度ですね。リンゴジュースなんて最悪でしょう。
糖質、特に果糖はApoCIIIを増加させます。それは様々な有害作用を示します。
「Effects of Fructose or Glucose on Circulating ApoCIII and Triglyceride and Cholesterol Content of Lipoprotein Subfractions in Humans」
「ヒトにおける循環ApoCIIIとリポタンパク質サブフラクションの中性脂肪およびコレステロール含有量に対する果糖またはグルコースの影響」(原文はここ)
りんご、美味しいですよね。
果糖気にしつつも最近よく食べてました。
食後血糖値、普段は120もいきませんが、
りんご食べたら146。
怖いですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
果物は健康的だという神話が根強いので、高齢者でも非常にたくさん食べている人がいます。
案の定お腹周りはたっぷりの脂肪です。