人間の体はアポリポタンパク質のApoCIIIを使用して、エネルギー源のシフトを行っていると考えられます。つまり、食事をしていない状態では、通常は脂肪酸(およびケトン体)をエネルギー源としていますが、糖質を摂取するとApoCIIIが増加し、末梢の組織が脂肪酸の取り込みを低下させ、ブドウ糖の利用が増加するのです。
しかし、本来人類は糖質をほとんど摂ってこなかったので、実際のところはエネルギー源のシフトという側面ではなく、運よく糖質が摂取できたときに、効率良く末梢組織にブドウ糖を取り込み、逃げたり戦ったりするいざというときのエネルギーとして使用するためのブドウ糖をグリコーゲンとして貯めることが目的だったのだと推測できます。
現代ではめったなことでは逃げたり戦ったりする場面がないにもかかわらず、このApoCIIIを使用したメカニズムが残ってしまっているために、非常に不都合で、不健康なことが起きてしまっているのです。
では、ApoCIIIは自分で調整できるのでしょうか?簡単です。上で述べたように、ApoCIIIは食事によって調整が可能です。つまり、糖質を摂ればApoCIIIは増加し、糖質を制限すればApoCIIIは低下します。
例えば、ある研究では非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の肥満患者の1日の炭水化物摂取量を14日間30g未満にしてみました。エネルギー制限は行っていません。(図は原文より)
上の図は様々なパラメータの変化です。D0というのはベースラインでD14は14日目を示しています。Eに示すように肝臓の脂肪のパーセンテージは明らかに減少しています。Iはケトン体ですが3日目も14日目のケトン体は大幅に増加しています。今回の注目のGに示す血中のApoCIIIですが、D0のベースラインと比較すると、D3でも減少し、D14ではさらに減少しています。ほぼ50%の減少です。
果糖はApoCIIIを増加させることがわかっています。以前の記事「果糖は摂れば摂るほど中性脂肪、尿酸値などを大きく増加させる」で示したように、果糖はApoCIIIを大きく増加させます。(図はここより)
図の左側がApoCIIIで、果糖のパーセンテージが増加するとApoCIIIが増加しているのがわかります。
恐らく人類が進化の過程で手に入れられた糖質の中で最も多いのが果糖だったから、それに対する反応が強くなったのでしょう。
ただ、恐らくApoCIIIの絶対量ではなく、他のApoCたちとの比率の問題ではないかと思います。
いずれにしても、ApoCIIIの増加は健康にとって有害であり、そのApoCIIIを増加させるのは糖質だとわかっているのに、世の中では糖質制限がなかなか広まりません。わかっているに各学会や専門家、医師たちが糖質を無視しています。そして、脂質ばかりに目を向けさせているのです。
ほとんどの病気は食事の間違いから起きていると言っても過言ではないでしょう。食事を変えることが一番の治療です。
「An Integrated Understanding of the Rapid Metabolic Benefits of a Carbohydrate-Restricted Diet on Hepatic Steatosis in Humans」
「ヒトの脂肪肝に対する炭水化物制限食の急速な代謝効果の統合的理解」(原文はここ)
「The Roles of ApoC-III on the Metabolism of Triglyceride-Rich Lipoproteins in Humans」「ヒトにおける中性脂肪に富むリポタンパク質の代謝におけるApoCIIIの役割」(原文はここ)
やはり人間も、環境に適応する為に
身体は頑張っているんですね。
筋肉同様、代謝に関しても、
使わない機能は低下する
可能性があるんですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
現在の食事に対して、人間は適応できていません。
ですから食事を変えずに病気を改善させようとしても無理があります。
清水先生、こんばんは。
ApoCIIIに焦点を当てて考える必要があるのですね。非常にわかりやすいです。
人間ドックの検査項目も再検討した方がいいのかもしれませんね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
ApoCIII、人間ドックの項目にあるかな?
空腹時インスリンも測定できると良いですよね。