糖質制限は甲状腺ホルモンの変化を起こす

糖質制限をすると、当然代謝が変化するので、様々な数値の変化が認められます。その中で甲状腺のT3の変化も起こります。(「糖質制限のときの甲状腺ホルモン低下(低T3症候群)」「糖質制限でLDLコレステロールが上昇しやすい人はT3とBMIが低い」など参照)T3が低下して、甲状腺機能低下症だと驚く人もいるかもしれません。

今回の研究では、ケトン食で甲状腺ホルモンがどうなるかを調べました。平均年齢30歳で、BMI24の健康な11人が対象です。高炭水化物低脂肪食 (HCLF) (炭水化物 55%、脂肪 20%、タンパク質 25%) とケトン食 (炭水化物 15%、脂肪 60%、タンパク質 25%) の2種類の等カロリー食をクロスオーバーで、最低3週間摂取しました。最低3週間というのは、ケトン食を食べてβ-ヒドロキシ酪酸 を測定し、0.4nM(日本の単位で400μmoL/L)を連続して3週間維持するために、ケトーシスが得られるまで食事期間が延長されたためです。ケトーシスは平均して9 (ケトン食開始後最小5日~最大19日) で達成され、平均29 (23~56) 日間維持されました。(図は原文より)

上の図は体重変化です。黒の実線は最初にケトン食を行った人、灰色の線は最初に高炭水化物低脂肪食 (HCLF) を行った人、破線はすべての平均です。ケトン食の方が体重減少が大きいですね。下の図のように3週間のケトン食で平均-2.9kgの減少で、3週間のHCLF食では-0.4kgでした。

上の図は体重や甲状腺ホルモンなどの変化です。甲状腺についてケトン食とHCLFを比較すると、TSH(甲状腺刺激ホルモン)は違いなし、T4はケトン食の方が高く、T3はケトン食の方が低くなっています。

上の図は甲状腺ホルモンの変化です。TSHは個人差が大きいのかばらけていて、食事による影響はあまりなさそうです。T4は多くの人でケトン食時にベースラインよりも上昇しています。ウォッシュアウトではベースラインに戻っています。

T3は逆にケトン食でベースラインよりも低下し、ウォッシュアウトでベースラインまで上昇しています。

甲状腺機能低下症であれば、TSHが高くなるので、ケトン食でT3低下は甲状腺機能低下ではありません。恐らく、糖質過剰摂取でT3が高すぎて、それが基準値となってしまっているのでしょう。

 

「Could the ketogenic diet induce a shift in thyroid function and support a metabolic advantage in healthy participants? A pilot randomized-controlled-crossover trial」

「ケトン食は甲状腺機能の変化を誘発し、健康な参加者の代謝の優位性をサポートできるで?パイロットランダム化対照クロスオーバー試験」(原文はここ

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