心房細動は臨床でよく遭遇する不整脈です。以前の記事「低炭水化物食と心房細動発症のリスク」で書いたように、低炭水化物食で心房細動のリスクが上がるなんていう研究は非常に問題があるものです。実際には低炭水化物でもないんでもないのに、言葉だけ低炭水化物といって誤誘導を行おうとしています。
糖質過剰症候群の代表である糖尿病と心房細動の関連を見てみましょう。(図は原文より)
上の図の上はHbA1cによる心房細動の可能性です。糖尿病がない人と比較すると、HbA1cが7~9でおよそ1.5倍、9以上だとおよそ2倍にもなります。
図の下側は糖尿病の期間による心房細動の可能性です。5年を超えると有意に高くなっています。
上の図は糖尿病治療薬と心房細動の可能性です。メトホルミンなどいくつかの薬は心房細動の可能性が低下していますが、やはりインスリンは1.19倍になっています。
高血糖、高インスリン血症、炎症、酸化ストレス、心臓のエネルギー源、AGEsなど、糖質過剰摂取によるいくつもの因子が心房細動を惹起させるのでしょう。
心房細動はカテーテルアブレーションという治療で止まる可能性がありますが、糖尿病または空腹時血糖値上昇という耐糖能障害があると、心房細動の再発リスクは平均18.8ヵ月の追跡調査で3.25倍です。(ここ参照)
また、糖質過剰症候群のもう一つの代表の肥満も心房細動のリスクを上げます。ある研究ではBMIが1%増加するごとに心房細動リスクが4%増加することを示しています。(ここ参照)
別の研究では、標準体重と比較した場合、太りすぎによる心房細動リスクは男性で1.75倍、女性で1.39倍でした。肥満による心房細動リスクは、男性で2.35倍、女性で1.99倍でした。(ここ参照)
さらに他の研究では、心房細動の発生率が低い若い妊娠可能な女性(平均年齢30.6歳)の間でも、正常体重の女性と比較した場合、肥満女性の心房細動のリスクは2.04倍、極度の肥満(BMI35以上)のリスクは3.50倍でした。(ここ参照)
心房細動は以前の記事「心房細動と糖尿病およびインスリン抵抗性との関連」で書いたようにインスリン抵抗性とも関連しています。
心房細動は恐らく多因子性であるものの、その多くは糖質過剰摂取に関連しています。つまり、心房細動も糖質過剰症候群です。
心臓の健康のためには糖質制限ですね。
「Atrial Fibrillation and Diabetes Mellitus: JACC Review Topic of the Week」
「心房細動と糖尿病: 今週の JACC レビューのトピック」(原文はここ)
「Obesity and atrial fibrillation: a narrative review from arrhythmogenic mechanisms to clinical significance」
「肥満と心房細動:不整脈発生のメカニズムから臨床的意義までのナラティブレビュー」(原文はここ)