低炭水化物食と心房細動発症のリスク

以前の記事「コレステロールと心房細動の関係」では、コレステロールが低いと心房細動のリスクが増加することを書きました。しかし、世の中には低炭水化物食が心房細動の発症リスクを増加させると主張しているものがあります。では見てみましょう。

今回の研究では、ARIC研究という研究のベースライン(1987 ~ 1989 年)で食事に関するアンケートに回答した 13,385 人(平均年齢54.2歳)が対象です。いつものようにデータは食事アンケートですので質の低いデータを使用しています。中央値22.4年の追跡期間中に、1,808例(13.5%)の心房細動が発生しました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は累積の心房細動なしで過ごせた比率です。Q1は最も炭水化物摂取量が少ない群で、Q4は最も炭水化物摂取量が多い群です。Q1が最も心房細動を起こし、Q4が最も心房細動が少ないですね。

 

上の図は、横軸が摂取エネルギーに対する炭水化物の摂取の割合です。縦軸は心房細動のリスクです。炭水化物50%くらいを1とすると、それよりも炭水化物が少ない方が心房細動リスクが高くなっています。我々が行っている10%程度の摂取の糖質制限では、リスクが2.5倍くらいです。えらいこっちゃ。

では、摂取エネルギーに対する炭水化物の摂取割合に応じて、4つのグループに分けたときのそれぞれのグループの%を見てみましょう。

合計Q1Q2Q3Q4
炭水化物 %48.8±9.437.2±4.745.8±1.751.5±1.860.8±5.3

最も炭水化物が少ない群でも37%です。全く低炭水化物ではありません。もっとも低炭水化物の定義が決まっていなので、この程度でも低炭水化物を謳うことは可能ですが。そして、上の図をもう一度見ると横軸の炭水化物の割合の10%~20%部分のグレーの棒グラフ、これはその炭水化物割合を摂っている人の%を示していますが、ほぼ0%かそれに近いです。データもないところを推測しているだけなのです。しかもそのデータは食事アンケートという非常に質の悪いデータです。

低炭水化物という言葉を使って、糖質制限を有害だという人は、しれっとこのような研究を持ち出します。

心房細動は糖尿病と関連しています。(それについては次回以降です)それを考えれば、糖質摂取量が多いほどリスクが少ないという結果に大きな疑問を持つのが普通でしょう。

「Low-Carbohydrate Diets and Risk of Incident Atrial Fibrillation: A Prospective Cohort Study」

「低炭水化物食と心房細動発症のリスク: 前向きコホート研究」(原文はここ

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