ビタミンD欠乏は原因ではなく結果?

ビタミンD欠乏は様々な疾患と関連しています。しかし、これは本当にビタミンD摂取不足や日光への曝露不足が原因なのでしょうか?太陽を浴びる時間は現代では少ない人も多いと思いますが、摂取量はよくわかりません。でも、病気になる人はビタミンD摂取が少なく、健康な人は摂取量が多いのでしょうか?

ビタミンDだけでなく血中の濃度を測定して、判断することは本当に正しいのでしょうか?もちろん一つの指標にはなりますが、血中に表れているものはほんの一部です。

以前の記事「脂肪肝ではビタミンDが低下する」で書いたように、82人の脂肪肝の人を8週間エネルギー(カロリー)制限して、体重を減らしたら、太陽に当たる時間は変化しておらず、ビタミンD摂取量が減少したにもかかわらず、血中のビタミンDは13.0ng/mlから15.9 ng/mlに増加しました。ビタミンD濃度は体重減少群でのみ増加し、体重が変化しなかった群ではビタミンD濃度は増加しませんでした。

また、以前の記事「過体重および肥満の代謝機能不全関連脂肪性肝疾患(MASLD)に対する糖質制限の影響」で書いたように、脂肪肝で糖質制限をしただけでビタミンDは増加しています。さらに「糖質制限とビタミンD」で書いたように、脂肪量が減少するほどビタミンDは増加します。

もし、ビタミンD摂取不足で様々な疾患が起きているとすると、ビタミンD摂取量の増加でその疾患は改善するはずです。

ある研究では、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を有する2型糖尿病患者65人に24週間、ビタミンD(2000 IU/日)とプラセボを飲んでもらい、様々なパラメータを比較しました。(この論文参照)

その結果ビタミンD摂取群は、血中のビタミンDが48.15から89.80nmol/Lに有意に増加しました。しかし、代謝に関するパラメータも心血管パラメータも変化させませんでした。

ビタミンDは脂溶性なので、脂肪組織に蓄積します。様々な疾患で血中のビタミンDが低いのは、ビタミンDは脂肪組織に隔離され、血流中での生物学的利用能が低下しているからである可能性があります。

ある研究では、ビタミンDレベルが30mg/mL未満である58人(正常体重13人、過体重25人、肥満20人)、月あたり50,000 IUのビタミンDを6か月間補投与しました。(この論文参照、下の図はこの論文より)

写真、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は Nutrients-15-04259-g001.jpg です。

上の図はBMIのカテゴリ別のビタミンDの変化量です。正常体重の群と比較して、肥満群ではおよそ半分しかビタミンD が増加していません。

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上の図は6か月後の血中のビタミンD(横軸)と内臓脂肪量(縦軸)との関係です。内臓脂肪が少ないほど、ビタミンD値が高いことがわかります。

つまり、脂肪、特に内臓脂肪が多いと、いくらビタミンD摂取量を増やしても、効果的に血中のビタミンDは増加しません。もちろん、皮下脂肪組織の量が内臓脂肪組織の量よりもはるかに多いので、皮下脂肪量も重要でしょう。

どれくらい脂肪組織にビタミンDが蓄積するかというと、3~5年間ビタミンDを摂取し続けていた人が摂取を止めた場合、12か月後でさえ、まだ血中のビタミンDに影響を与えるほどです。(この論文参照)

もちろん、個人差が非常に大きく、皮下脂肪組織に存在するビタミンD量は、約4から約500ng/gの範囲らしいです。体重100kg、体脂肪率40%の人の場合、これは160~20,000μg のビタミンDに相当します。これは、1日あたりのビタミンDの推奨栄養素摂取量の16~2000日分に相当します。(この論文参照、下の図はこの論文より)

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つまり、肥満の人、様々な疾患のある人で糖質過剰摂取により脂肪が多い人では、ビタミンDの摂取量が少ないのではなく、摂取したビタミンDが有効に血中に循環していないだけだと考えられます。

足りない足りない教では、どんどん摂取する栄養素が増加するでしょう。しかし、本当に足りないかどうかは血液検査だけではわかりません。これほど糖質過剰摂取により代謝異常が蔓延している現在では足し算ばかりでなく、引き算を上手く考えていかなければなりません。

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上の図aのように30分自転車を漕ぐと、急激に血中ビタミンDは増加します。恐らく脂肪分解によってビタミンDが放出されるのでしょう。そうだとすると、インスリン値が高い人では脂肪分解が低下しているので、血中のビタミンDが低下しているのも納得できます。まずは肥満の人では糖質制限プラス空腹で軽い運動をできる限り長時間続け、それを継続して、空腹時のインスリン値を低下させる必要があるでしょう。糖質制限では脂肪をエネルギー源にしているので、適宜、脂肪にあるビタミンDを放出してくれているのかもしれません。

以上のことから考えると、血中のビタミンDが低く、欠乏して見えるのは、恐らく摂取量が少ないことではなく、糖質過剰摂取の結果、脂肪組織が増加し、ビタミンDがそこに隔離されてしまっているからだと思います。

痩せているのにビタミンDが低い人では、本当に欠乏しているかもしれません。

ビタミンD市場規模は2022年に13億ドルと推定され、2027年までに19億ドルに達すると予測されています。(ここ参照)足りない足りないを煽れば、検査もするし、薬を求めるし、サプリも飲むし、ビタミンD強化食品も買うでしょう。お金が絡むものは注意が必要です。

太陽を浴びるのは有害だと思わせ、日焼け止めなどを売りつけ、太陽を浴びないことでビタミンDが少ないから、ビタミンDを売りつける。

本当にあなたのビタミンDは足りないですか?

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