医療が介入して食事指導をしたために久山町では糖尿病有病率が大きく増加しました。久山町住人により様々な研究が行われています。多くの犠牲者を出している久山町研究ですが、もうネタ切れなのでしょうか?なんか変わった研究を発表しました。
今回の研究では、小児期の不十分なケアや過保護が成人後の糖尿病に関連しているかどうかということを分析しました。2011年に健康診断に参加した40歳以上の住民2,250人が対象でしたが、そのうち、合計793人が本研究への参加に同意しました。つまりおよそ3分の2は参加拒否です。そりゃそうだ。最終的には710人が対象です。
親の子育てスタイルに関しては、生後 16 年間の子育てスタイルを測定する 25 項目からなる自己報告式アンケートである Parental Bonding Instrument (PBI) を使用して測定されました。質問内容は次のようです。(ここ参照)
〈“ケア”の項目>
1 いつも暖かく親しみのある声で話しかけてくれた。
2*私が望んでいるのに十分助けてくれなかった。
4 私には,気持ちの上で冷たかった。
5 私の抱えてる問題や悩みを理解してくれていたと思う
6 私に優しく,情愛があった。
11 私とあれこれ話し合うのを楽しみにしていた。
12 私にたえずほほえみかけてくれていた。
14*私が必要としたり,望んでいることを理解しているとは思えなかった。
16*自分は求められていない存在だと思い知らされた。
17 気分的に混乱したような時は,気持ちを落ちつかせてくれた。
18*私と話し合うということはなかった。
24*私をほめてくれたことがなかった。
〈“過保護”の項目>
3*私のしたいたいていのことはやらせてくれた。
7*ものごとを,私が自分自身で決めるのを望んでいた。
8 私に大人になってほしくないようだった。
9 私のする事は何でもコントロールしたがった。
10*私のプライバシーを無視していた。
13 私を子ども扱いしがちだつた。
15*私自身に決定を下させた。
19 私を,つとめて親に依存的にさせようとしていた。
20 私のことを親がいなければ自分のことも処理できないと思っていた。
21*私の望みのままに,自由にさせてくれた
22*私が望めば,いつも外出させてくれた。
23 私には過保護だった。
25*どんな服装をしょうとわたしの好きなようにさせてくれた。
(*逆転項目)
詳細は省略しますが、2分化されたケアと過保護のスコアを組み合わせて、「最適な絆」(高いケア、低い過保護)、「育児放棄」(低いケア、低い過保護)、「愛情深い制約」(高いケア、高い過保護)、「愛情のないコントロール」(低いケア、高い過保護)に分けました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は親のケアと過保護のレベルに応じた糖尿病のおおよその有病率です。左が父親、右が母親です。ケアが低く、過保護が高い方が糖尿病の有病率は高いですね。
多変数調整 | |
---|---|
父親 | |
ケア | |
高い | 1.00 |
低い | 1.27 |
過保護 | |
低い | 1.00 |
高い | 1.71 |
母親 | |
ケア | |
高い | 1.00 |
低い | 1.61 |
過保護 | |
低い | 1.00 |
高い | 1.73 |
上の表はケアと過保護による糖尿病の可能性です。父親の過保護が高いと1.71倍、母親のケアが低いと1.61倍、母親の過保護が高いと1.73倍です。
上の図はケアと過保護の組み合わせで糖尿病になる可能性がどうなるかを示しています。ケアが高く、過保護が低いのを1として、父親はケアが低く過保護が高いパターンで有意ではありませんが1.68倍でした。母親はケアが低く過保護が高いパターンで1.94倍と有意に高くなりました。
父親と母親の子育てスタイルの組み合わせ | 多変数調整 |
---|---|
父親と母親の両方の高いケアと低い過保護 | 1.00 |
父親と母親の子育てスタイルのその他の組み合わせ | 1.03 |
父親または母親のケアが低く、過保護が高い | 1.23 |
父親と母親の両方のケアが低く、過保護が高い | 2.12 |
上の表は父親と母親の子育ての組み合わせによる糖尿病になる可能性です。両親のケアが高く、過保護が低いのを1とすると、両親がケアが低く、過保護が高いと2.12倍でした。つまり「愛情のないコントロール」子育てスタイルは糖尿病になりやすい可能性があるということです。
まあ、愛情が低いとストレスとなり、ストレスホルモンにより血糖値が上昇する可能性はあるでしょう。過保護が高いと何でも好きなものを食べるようにさせるかもしれませんので、糖質過剰摂取となり糖尿病になる可能性が高くなるでしょう。もちろんネグレクトになると、食事の質は大きく低下し、糖質ばかりの食事になるので糖尿病のリスクは非常に高くなると思われます。
いずれにしても、こんな大雑把なことで、糖尿病になるかどうかがわかるとは思えません。ケアと過保護は独立しているとも思えません。そして、所詮人間は親になってもほとんどの人は程度の差こそあれ、言葉は悪いですが、出来損ないです。完璧な人はいません。私も出来損ないだと思っています。不器用ながらも、親として良かれと思ってやったことであっても、子供がどのように受け止めるかはわかりませんし、子供が成長してから答えが出ます。非常に難しいことです。
ただ、親の食育は子供の健康状態を決定する最大の要因だと思います。どんなに愛情が溢れて、ケアが高くても、糖質過剰摂取を許していれば糖尿病になるリスクは高くなるでしょう。過保護が低く、本人に食べるものを決めさせないようにしても、親が選択した食事が糖質過剰摂取であれば、やはり糖尿病になる可能性は高くなります。
だから、一番大事なのは子育てスタイルより、糖質過剰摂取をしないようにする食育です。また、専門家を鵜呑みにせず、自分で考える力を与える子育ても重要かもしれませんね。
「Inadequate care and excessive overprotection during childhood are associated with the presence of diabetes mellitus in adulthood in a general Japanese population: a cross-sectional analysis from the Hisayama Study」
「小児期の不適切なケアと過度の過保護は、一般的な日本人集団における成人後の糖尿病の存在と関連している:久山研究の横断分析」(原文はここ)
何らかの事情で、幼少期に離れた
一卵性双子が、
その後、関わりが無くても
同じような生活習慣や性格、
健康状態になる、という話があり、
それが本当であれば、想像以上に
遺伝の影響は大きいのかもしれません。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
体質は遺伝が関係していると思いますが、実際の健康状態は、食習慣が異なれば、違いが出ると思います。