いまだにLDLコレステロールは低ければ低いほど良いと思っている人がいますし、医師の中にもLDLコレステロールを下げたくて仕方がない医師もいます。
今回の研究では、LDLコレステロールの低下の程度と肝酵素(ASTやALT)異常および横紋筋融解症のリスクとの関係を調べ、さらに、LDLコレステロールの低下とがんのリスクとの関連性も調べています。大規模な前向きランダム化スタチン試験で報告された有害事象が評価されました。
合計23のスタチン治療群が特定され、75,317人のスタチンが割り当てられた患者と309,506人年の累積追跡調査が行われました。
分析の結果、LDLコレステロール低下率と肝酵素上昇率または横紋筋融解症との間に有意な関係はありませんでした。しかし、LDLコレステロールが10%減少するごとに、下の図のようにスタチンの用量が増えると肝酵素の上昇率が大幅に増加しました。(図は原文より)
調査されたすべての23のスタチン治療群のうち、13で追跡調査中に新たにがんと診断された患者の数を決定できました。LDLコレステロール低下率および絶対的なLDLコレステロール低下量とがんの発生率との間に有意な関係はありませんでした。
しかし、上の図のように達成されたLDLコレステロール値と新たに診断されたがんの割合との間には非常に有意な逆相関がありました。つまり、LDLコレステロールが低ければ低いほどがんになりやすいと考えられます。
そして、肝機能や横紋筋融解症とは逆に、スタチン用量と100,000 人年あたりがん発生率は、LDLコレステロールの10%減少ごとに、差は小さいですが有意に高用量よりも低/中用量のスタチンの方が高くなっていました。
以前の記事「LDLコレステロールが高いとがんのリスクは低下する」で書いたように、LDLコレステロールが低い方がスタチンを飲んでいてもいなくても、がんのリスクは高くなります。また「スタチンはがんのリスクを増加させる可能性」で書いたように、日本人を対象としたスタチンを使った研究でも、スタチンでコレステロールが低下するほどがんの死亡が増加しています。
スタチンを飲んでいる人は、がんのリスクもきっと受け入れているのですよね?その他の糖尿病やALSなどの有害事象についても、ちゃんと説明されて、納得してスタチンを飲んでいるのですよね?医師の中にもすすんでスタチンを飲んでいる人がいるくらいですから、きっと大丈夫?本当かな?
そして、何か起きても、スタチンは関係ないという一言で終わりでしょう。それが今の医療です。よく自分で考えて判断しましょう。
「Effect of the magnitude of lipid lowering on risk of elevated liver enzymes, rhabdomyolysis, and cancer: insights from large randomized statin trials」
「肝臓酵素の上昇、横紋筋融解症、がんのリスクに対する脂質低下の程度の影響:大規模なランダム化スタチン試験からの洞察」(原文はここ)