医療にとっては都合の悪い脂質異常症のパラドックス

医療の世界はパラドックスだらけです。都合の良い仮説を考えて、薬を売るためにその仮説を支持するエビデンスを色々構築しても、実際の人間で観察すると、反対の結果が起きることはよくあるでしょう。もともとの仮説を取り下げるわけにはいかないので、都合の悪い結果は「パラドックス」と呼んでいるだけのことだと思います。

今回の研究では、脂質異常症の人の死亡リスクです。ご存じのように、実際には総コレステロール、LDLコレステロールが高い方が長生きなのに、コレステロールはいまだに悪玉扱いです。この研究では59.7歳の男性1,479人が対象で、ベースラインでの総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールと死亡リスクとの関連を分析しています。779人(52%)が脂質異常症でした。約23%が冠動脈疾患、21%が2型糖尿病、60%が高血圧、40%が肥満でした。

総コレステロールの平均は199.5mg/dL、LDLコレステロールは149.4mg/dL、HDLコレステロールは44.3mg/dLでした。8.9年間の追跡調査中に、284人が死亡しました。(図は原文より)

上の左側の図はLDLコレステロールと全原因死亡リスクで、右側が総コレステロールと全原因死亡リスクです。LDLコレステロール130未満と比較すると、LDLコレステロール130~189で0.74倍、190以上だと0.68倍です。

総コレステロールでは200未満と比較して、200〜239で0.87倍、240以上だと0.63倍でした。つまり、LDLコレステロールも総コレステロールも高い方が死亡リスクは低いのです。

上の図は生存率です。平均生存期間は、総コレステロールとLDLコレステロールのカテゴリーが高い人の方が0.9~1.9年長かったです。総コレステロールとLDLコレステロールの値が10mg/dL増加するごとに、死亡リスクがそれぞれ10%、9%減少する計算になります。

我々の体にとってコレステロールは必須で重要な物質です。医療はLDLコレステロールのLDLの質も評価せず、高ければ下げることに必死です。数値を改善することが、体を改善することではありません。

糖質制限で質の良いLDLを増やし、コレステロール値に惑わされないようにしましょう。

「Dyslipidemia paradox: Analysis from the veterans exercise testing study」

「脂質異常症のパラドックス:退役軍人運動テスト研究からの分析」(原文はここ

One thought on “医療にとっては都合の悪い脂質異常症のパラドックス

  1. スタチン開発などの研究者の訃報。
    一時は世界で最も売れた薬とも。
    当たり前かもしれませせんが、
    業績を讃える報道一辺倒では
    ありました。

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