レムナントリポタンパク質は動脈壁を容易に通過できる?

多くの専門家は、LDLコレステロールを悪玉と考え、LDLが小さくなったsdLDLの方がサイズが小さいから動脈の壁を通過しやすいなどと言っています。

先日の記事「肥満医学協会と全米脂質協会による専門家の共同レビュー2024」のレビューの中でも、ウソがさらっと書かれています。

「Remnant lipoproteins may contain up to 4 times more cholesterol per particle than LDL particles, highlighting their atherogenic potential. Additionally, largely due to their small size, triglyceride-rich lipoprotein remnants (i.e., VLDL remnants, IDLs, and chylomicron remnants) readily penetrate the arterial wall. 」

「レムナントリポタンパク質には、LDL粒子よりも粒子あたり最大4倍多くのコレステロールが含まれている可能性があり、そのアテローム生成の可能性が強調されます。さらに、主にサイズが小さいため、中性脂肪に富むリポタンパク質レムナント(つまり、VLDLレムナント、IDL、およびカイロミクロンレムナント)は動脈壁を容易に貫通します。」

レムナントも小さいので動脈壁を通過しやすいと書かれています。ここで引用されている論文はこれです。しかし、元の論文を読んでもほとんど同じことが書かれています。

「Remnant lipoproteins are cleared by the liver mainly via LDL receptor or penetrate arterial wall, thus contributing to the initiation and progression of atherosclerotic lesions. Unlike chylomicrons and VLDLs which do not penetrate the vessel wall due to their large size, and similarly to LDLs, LRTs remnants, due to the small size, easily pass through the arterial wall and are retained in the sub-endothelium, where they bind to the connective matrix and promote inflammation. 」

「レムナントリポタンパク質は、主に LDL 受容体を介して肝臓によって除去されるか、動脈壁に浸透して、アテローム性動脈硬化性病変の開始と進行に寄与します。サイズが大きいため血管壁を透過しないカイロミクロンや VLDLとは異なり、LDLと同様に、中性脂肪に富むリポタンパク質レムナントはサイズが小さいため容易に動脈壁を通過し、内皮下に保持され、そこで結合します。」

カイロミクロンやVLDLはサイズが大きいので動脈壁は通貨しないけれど、それがレムナントになるとサイズが小さくなるので動脈壁を通過するというのです。

では、レムナントリポタンパク質はどれほどの大きさなんでしょうか?別の論文を見てみましょう。(図は原文より)

上の図は様々なリポタンパク質の大きさを表したものです。CMはカイロミクロン、CM-Rはカイロミクロンレムナント、VLDL-RはVLDLレムナントです。横軸が粒子径です。桁違いにカイロミクロンは大きいのですが、以前の研究で、大きなカイロミクロンから生成されるほとんどのレムナントは「大きな」VLDL ほど小さくならないことが示されています。(ここ参照)より大きなカイロミクロンまたはカイロミクロンレムナントからの小さなカイロミクロンレムナントの形成は限られているようです。

カイロミクロンおよび VLDL粒子がLPL(リポタンパクリパーゼ)によって加水分解され、典型的なレムナントリポタンパク質として特定される中間密度リポタンパク質(IDL)などのより小さな粒子に変換されると一般に考えられていますが、いくつかの研究では、レムナントリポタンパク質は主に糖質過剰摂取、インスリン抵抗性で認められる大きなVLDL1に由来する大きなサイズのVLDLで構成されており、レムナントになっても粒子サイズは比較的大きいままであるとしています。

つまり、大きさで考えると、カイロミクロンレムナントはVLDLよりも大きいことさえあり、VLDLレムナントももともと大きなVLDLで、それほど小さくならないということになります。もちろんそれは大きな良質なLDLよりももっと大きなサイズです。

カイロミクロンやVLDLのレムナントがサイズが小さいから動脈壁を通過できるのであれば、ほとんどどのリポタンパク質も容易に動脈壁を通過できることを意味してしまいます。そんなことがあるわけなりません。

動脈壁は大きさで通過できるかどうかが決まるわけではありません。受容体を介して行われるはずです。sdLDLも小さいから通過できるのではありません。都合の良い仮説を持ち出して、何とかLDLを悪者にするために平気でウソをついているのでしょう。

sdLDLもレムナントも心血管疾患リスクと関係していますが、それらが悪さをするというよりも、それらが増加する状態、つまり糖質過剰摂取、インスリン抵抗性などの状態が問題なのです。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。

「Remnant Lipoproteins: A Subfraction of Plasma Triglyceride-Rich Lipoproteins Associated with Postprandial Hyperlipidemia」

「レムナントリポタンパク質:食後高脂血症に関連する血漿トリグリセリド豊富なリポタンパク質のサブフラクション」(原文はここ

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