2024年5月、日本糖尿病学会の診療ガイドラインが5年ぶりに改訂されました。その中で注目すべきは食事療法の炭水化物制限の項目です。(図はこのガイドラインより)
やっとここまで来ました。「炭水化物制限は有効」の文字がガイドラインに載りました。しかし、浮かれてはいけません。条件が付いていますね。6~12か月以内の短期間であれば、とまだ古臭いことを言っています。もういい加減諦めなさいよ。
さらに中身を読むと全く浮かれていられない状況です。
欧米の研究で、「炭水化物制限群は対照群(通常食,高炭水化物食,低脂肪食など)と比較 して 6~12 ヵ月以内の短期間であれば HbA1c は有意に改善したが,12~24 ヵ月以降は同等であった」などと書かれています。
大体、このような短期間しか効果が無いという研究は、糖質制限をしても、決して自主的にすすんで糖質制限を行っていない人たちなので、段々と糖質制限がルーズになり、最終的にはデザイン通りに糖質制限をずっと続けられないデータが元になっています。または低炭水化物と言いながら実際には糖質制限レベルになっていない場合もあります。さらに、いつものように食事アンケートの質の非常に低いデータの研究もあるので、全く当てになりません。
最終的には、次のように書かれています。
「これらのRCT,メタ解析を解釈するうえでの問題点は,対象とする研究によって BMI,炭水化物摂取量(低炭水化物食の定義),観察期間,他の栄養素,対照群,総エネルギー摂取量の相違があることである.糖尿病における炭水化物の至適摂取量は,身体活動量やインスリン作用の程度によって異なり,一意に目標量や制限の程度を設定することは困難である.合併症や薬物療法などの制約がなければ,柔軟な対応をしてもよい.しかし,総エネルギー摂取量を制限せずに,炭水化物のみを極端に制限することによって体重や HbA1c の改善を図ることは,その効果のみならず,長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保する科学的根拠が不足しており,現時点では勧められない.一方で日本人 2 型糖尿病において,約130 g/日の炭水化物制限によって有害事象なく 6 ヵ月後の HbA1c の改 善を認めており,総エネルギー摂取量が適切であれば短期間の緩やかな炭水化物制限は 2 型糖尿病の血糖コントロールに有効である可能性がある.」
何か矛盾したことが書かれているように思えます。中盤では「総エネルギー摂取量を制限せずに炭水化物のみを極端に制限することは勧められない」と書かれています。つまり、炭水化物を制限するならエネルギー摂取量も制限しなければならない、と言っているように思えます。
でも終盤では、「総エネルギー摂取量が適切であれば、炭水化物制限は有効」と書かれています。
エネルギー制限なの?炭水化物制限なの?よくわかりません。恐らく炭水化物制限は「極端」ではなく「緩やか」を推奨したいのでしょう。
総エネルギー摂取量が適切というのも、何をもって適切と言っているのかイマイチわかりません。もちろん、糖質を制限した分のエネルギーを脂質やタンパク質で補うことは必要です。でも、恐らく人間の体は糖質制限をすれば、推奨されているほどのエネルギーは必要ないんじゃないかな、と思っています。
短期間という言葉も出てきますが、6~12か月であれば、OKということでしょう。じゃあ、その後どうするんでしょうね?食事を戻せば、代謝も戻るので、また血糖値や体重が悪化してしまいます。一時的な減量を目指すダイエットではないので、一生の食事を変えるべきでしょう。エビデンスが無いからという理由でしょうけど、1年以上のデータもいくつか出ているので、わざと知らないふりをしているんでしょう。
それとも、質の非常に低い食事アンケートのデータを使った、全く糖質制限にもなっていない研究(ここ参照) で、炭水化物制限が全原因死亡や心血管疾患、がんのリスクが高くなるという結果が出ているので、それをまともに信用しているのでしょうか?
また、緩やかな炭水化物制限と書かれています。緩やかの定義がされていませんが、その前の文章で「130g/日の炭水化物制限」と書かれているので、これが緩やかなんでしょう。まあ、いわゆる「ロカボ」的な量ですが、このような中途半端な糖質制限は結果も中途半端です。
結局は、有効だけども推奨はできない、といった感じでしょう。130g/日という数字は出すけれども、引用する論文は130g以上、エネルギー摂取量の45%の炭水化物さえ低炭水化物群に含めている論文もいっぱい採用しています。引用する論文の中身を本当に読んでいるんでしょうか?
相変わらず低炭水化物、糖質制限の定義も決めずに、言葉だけで炭水化物制限、糖質制限というものを扱っているのです。
半歩だけ前に進んだのかな?半分の半分くらいかな?これでは専門医がまだまだ糖質過剰摂取をさせることは変わらないでしょう。結局変わらない業界です。
まだまだ本当の糖質制限が推奨されるまでには時間がかかりそうです。
糖尿病治療の既得権益は
手放したくない。
でも世の中の糖質制限の
流れに抗ってばかりでは
患者という名のお客様から
見限られる。
悩ましいですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
糖質制限を理由に専門医を見限る患者はごく少数でしょう。
多くの人はマスコミなどを通じて洗脳され続けていますし、
糖質大好きな人が大多数ですから。