若い男性におけるメタボリックシンドロームと痛風発症リスクの関係

痛風って痛いのでしょうね。私はなったことがないので、どのくらい痛いかは想像でしかわかりません。でも、痛風って尿酸値ばかり関連性を取り上げられますが、尿酸値が高いからと言って痛風発作が必ず出るわけではありませんし、逆に痛風発作時の尿酸値は正常であることも多いです。

私は痛風も糖質過剰症候群だと考えています。食事を変えるだけで痛風発作は激減します。(「食事の変更と痛風発作の減少」参照)

今回の研究では、メタボリックシンドロームと痛風との関連を調べています。20~39歳(平均年齢31.5歳)の男性3,569,104人を対象に分析をしています。平均追跡期間は7.4 年で、88,058人が新たに痛風と診断され、痛風の発生率は1,000人年あたり3.36人でした。

下の表はベースラインのメタボリックシンドロームの状態と痛風発症との関連性についてです。(図は原文より、表は原文より改変)

aHR (95% CI)
合計
メタボリックシンドローム
なし1
あり2.44 (2.41–2.48)
腹部肥満
なし1
あり2.45 (2.42–2.49)
中性脂肪上昇
なし1
あり2.29 (2.26–2.32)
HDLコレステロール低下
なし1
あり1.55 (1.52–1.58)
血圧上昇
なし1
あり1.64 (1.62–1.67)
血糖値上昇
なし1
あり1.25 (1.24–1.27)

メタボリックシンドロームがあると、痛風発症リスクは2.44倍です。メタボの個々の因子別では、内臓脂肪増加による腹部肥満があると2.45倍です。中性脂肪の増加も2.29倍です。

上の図は、ベースラインのメタボリックシンドローム(MetS)の有無に応じた痛風の累積発生率曲線です。(A)調整されていない累積発生率、(B)調整された痛風の累積発生率です。メタボがあると痛風がどんどん増えていますね。

上の図は、メタボリックシンドロームの構成要素の数に応じた痛風発症率(A)とハザード比(B) です。構成要素の数が増えるにつれて、痛風のリスクは増加しています。メタボの5つの要素すべてを有する人は、構成要素をまったく有さない人と比較して、痛風リスクが5.24倍増加しました。
要素をまったく有さない人と比較して、1つの構成要素を有する人のうち、腹部肥満は痛風のリスクが最も高く 2.33倍のリスク増加で、次いで中性脂肪上昇は2.08倍でした。 2つの要素を持つ人のうち、腹部肥満と中性脂肪上昇の両方を持つ人は痛風のリスクが4.03倍にもなっていました。

下の表はベースライン因子に応じた痛風発症リスクです。

aHR (95% CI)
年齢
20~29歳1
30~39歳1.06 (1.03–1.09)
BMI
<18.50.58 (0.53–0.62)
18.5~231
23~251.72 (1.68–1.75)
25~302.91 (2.86–2.97)
≥305.21 (5.09–5.33)
喫煙
一度もない1
元喫煙者1.07 (1.05–1.09)
現在喫煙者1.00 (0.99–1.02)
飲酒
なし1
軽度(<30 g/日)1.24 (1.22–1.27)
重度(≥30 g/日)1.82 (1.79–1.86)
定期的な運動
なし1
あり1.10 (1.08–1.12)
併存疾患
高血圧
なし1
あり1.96 (1.93–2.00)
糖尿病
なし1
あり1.33 (1.29–1.38)
高脂血症
なし1
あり1.90 (1.86–1.93)
TyGインデックス(四分位)
Q1(最低)1
Q21.43 (1.39–1.47)
Q32.11 (2.06–2.16)
Q4(最高)3.48 (3.41–3.56)

年齢はやや関連がありそうですが、やはり、BMIが大きく関連しています。BMIが正常の人と比較すると、BMIが23以上と上がるだけで痛風リスクは1.72倍、25以上だと2.91倍、30以上になると5.21倍と大きくリスク増加になります。逆にBMIが18.5未満と痩せているとリスクは0.58と大きくリスク低下を示しました。

よく一般的に言われている飲酒との関連は、軽度の飲酒では1.24倍でしたが、1日30g以上の飲酒では1.82倍のリスク増加になりました。

定期的な運動をしている方が、運動していない人よりわずかに1.1倍リスク増加でした。本当かな?

併存疾患は高血圧1.96倍、高脂血症1.90倍、糖尿病1.33倍でした。

また、インスリン抵抗性を表すTyGインデックスを4つのグループに分けたとき、最も低いグループと比較して、TyGインデックスが増加するにつれ痛風リスクは上がり、最も高いTyGインデックスグループでは3.48倍でした。インスリン抵抗性は大いに関連しています。

年齢層で分けたとき、メタボがある場合では、メタボがない場合と比較して、ベースライン年齢が20〜29歳の人では痛風のリスクが3.02倍、ベースライン年齢が30〜39歳の人では2.27倍でした。

また、BMIが18.5未満の低体重グループはメタボがあると痛風リスクが3.82倍にもなっていました。特に、低体重グループでは、腹部肥満がある場合、痛風のリスクが10.25倍と10倍を超えるリスク増加を認めました。

若いときからメタボ、痩せているのにメタボは、より痛風の危険が高いということになります。

この研究を行ったグループがほぼ同時期に出した別の研究(ここ参照)によると、メタボリックシンドロームから回復すると、痛風発症リスクは0.52倍にほぼ半分に減少し、メタボリックシンドロームの構成要素のうち、高中性脂肪からの回復では0.56倍、腹部肥満からの回復では0.69倍となっていました。

またこのグループの別の研究(ここ参照)では、高尿酸血症を男性では尿酸値≥7.0 mg/dL、女性では≥6.0 mg/dLと定義した場合、高尿酸血症の可能性はメタボがあると、男性で2.38倍、女性では4.15倍になっていました。アジア人の研究なので肥満をBMI25以上と定義すると、肥満では高尿酸血症の可能性が男性で2.17倍、女性で3.80倍でした。メタボと肥満が同時存在する場合はは、男性で2.90倍、女性は7.24倍にもなっていました。

肥満もメタボリックシンドロームも糖質過剰症候群であり、糖質過剰摂取による高インスリン血症やインスリン抵抗性の結果でもあります。

高インスリン血症は尿酸の腎排泄を減少させるため、高尿酸血症は高インスリン血症により起こります。尿酸値の増加は、代謝障害の一つのパラメータにすぎないのでしょう。つまり、尿酸が痛風の原因というよりも痛風を起こす代謝障害は高尿酸血症を招きやすいだけであり、尿酸値が高いだけでは痛風発作は起こさない可能性が十分に考えられます。

ただ、糖質制限を始めたすぐのころには、実は尿酸値が大きく上昇してしまう人がいます。恐らく、腎臓では尿酸は乳酸,ニコチン酸,ケトン体などと交換輸送されるので、糖質制限で尿のケトン体が増加すると尿酸の再吸収が増加する可能性があります。(「糖質制限と尿酸値上昇」参照)

いずれにしても、痛風がアルコールや肉などによってプリン体を過剰摂取するから起きるというのは非常に怪しい仮説でしょう。

まずは痛風予防には糖質制限ですね。

「Increased risk of incident gout in young men with metabolic syndrome: A nationwide population-based cohort study of 3.5 million men」

「メタボリックシンドロームの若い男性における痛風発症リスクの増加:350万人の男性を対象とした全国人口ベースのコホート研究」(原文はここ

One thought on “若い男性におけるメタボリックシンドロームと痛風発症リスクの関係

  1. 身近なスーパーやコンビニで24時間
    スィーツやアルコールが手に入る環境が、
    外国に比べて日本人は認知症が
    多いという統計や、
    国民病とも言われる糖尿病とも、
    大いに関係ありそうですね。

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