夏の暑い中で走る北海道マラソンが近づいてきました。夏のレースとは言え、北海道ですから8月の終わりであれば酷暑であることまずありませんが、昨年はかなり暑い中のレースで、朝スタートになって最高の気温となり、途中から雨と雷という、かなり過酷なレースでした。今年もかなり暑い可能性がありますね。
さて、今回の研究では、暑い中のレースではありませんが、マラソン中の汗と水分量とナトリウムの関係を分析しました。気温は24.4度、湿度27.7%と絶好のマラソン日和で、フルマラソンを完走した51人のデータです。
マラソン中の汗の濃度により、3つのグループに分けました。低塩分汗群は汗中のナトリウム濃度が30mmol/L(0.69g/L)未満、通常汗群は30~60mmol/L(0.69~1.38g/L)、塩分タップリ群は60mmol/L(1.38g/L)以上です。1.38gのナトリウムは3.5gの塩分です。(図は原文より)
上の図は発汗率、発汗量、水分補給率、水分補給量、体重変化率、血液量変化率です。1時間当たりの発汗率はどのグループも同じでおよそ1L 。実際の発汗量は3.6L前後とこれもどのグループに違いはありません。水分補給率や補給量もすべてのグループで同様で、1.2Lほどの水分補給でした。
体重変化も違いはなく3%程度の減少でした。血液量の変化は有意差はありませんが、塩分喪失量が多いほど血液量の減少が多い傾向がありました。低塩分汗群では3.1%減、塩分タップリ汗群では5.2%減でした。
上の図は汗と電解質バランスです。汗の浸透圧は当然塩分が多い方が高くなっていました。塩分タップリ汗群の汗中ナトリウム濃度の平均は72.7mmol/Lでした。低塩分汗群は平均で16.9なので大きく違いますね。
ナトリウムバランスを見ると、ナトリウムの摂取量はグループ間で違いはなく、汗で失った量は大きな差があるので、バランスは塩分タップリ汗群は約6g減、塩分として約15gと大きくマイナスバランスになっています。
上の図は、⾎清浸透圧と血漿量の変化率です。△が低塩分汗群、グレーの〇が通常汗群、■が塩分タップリ汗群です。予想通り、塩分タップリ汗群では⾎清浸透圧が一番低く、血漿量の変化率はおよそ10%と最大でした。10%も血漿が減少するんですね。
上の図は血中のナトリウム濃度です。塩分タップリ汗群だけはナトリウム濃度が低下はしていましたが、平均値では140程度で、これはレース前と違いがありません。逆に低塩分汗群と通常汗群ではレース前の140から142以上に上昇していました。一人も135未満の運動関連低ナトリウム⾎症にはなっていませんでした。塩分タップリ汗群でさえ、低ナトリウム血症にはなっていないので、塩分補給はほとんど必要がないと考えられます。ナトリウムの摂取量が多くても少なくても、血中のナトリウムはどうなるかはわかりません。つまりナトリウムの摂取量は関係しません。(「スポーツドリンクに含まれる電解質には意味がない」参照)もちろん、私はレース中にスポーツドリンクは一切飲みません。
また、過剰な水分摂取は低ナトリウム血症を招く可能性があり、危険です。(「ウルトラマラソンと運動関連低ナトリウム血症」参照)
汗のナトリウム濃度は自分で調整できるわけではありません。何が関係しているのかもよくわかりません。個人差が非常に大きいのでしょう。(「マラソンでの汗のナトリウム濃度はどれくらい?」参照)しかし、恐らく、汗の量もナトリウム濃度も体内の水分量などに応じて、レース中に刻々と変化していると思います。でも汗のナトリウムはどこから来るのでしょうか?それについてはいずれ記事にしたいと思います。
夏に汗をかいたら水分補給と共に塩分補給というのはウソです。マラソンですら塩分補給が必要ないのですから。塩分補給にスポーツドリンクというのはもっとウソです。ただの企業のマーケティングです。
「Sweat sodium loss influences serum sodium concentration in a marathon」
「汗によるナトリウム損失はマラソン中の血清ナトリウム濃度に影響を与える」(原文はここ)
マラソン後、歩けない程全身が攣った
事があります。
エネルギーゼリーやスポーツドリンク、
それに水を大量に摂り、塩は
摂りませんでした。
今考えると、体液が薄まってしまったの
だと思います。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
水分の過剰摂取は危険ですね。