痛風発作を予防するために尿酸値を6.0mg/dL以下に抑える治療が一般的に推奨されています。本当にそうでしょうか?無症候性高尿酸血症の人に痛風発作予防で尿酸値を抑えた方が良いのでしょうか?
今回の研究では、1 回以上の健康診断で尿酸値が8.0mg/dL以上であった、健康診断で新たに無症候性高尿酸血症19,261人の日本人が対象です。尿酸低下療法(ULT)の処方、痛風発作の発生と尿酸値について1年間調査しました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は、インデックス日から追跡日までの疾患状態を分類したものです。参加者の最大グループ (10,480人)は、次の健康診断で尿酸値が8.0mg/dL未満を示し、「治療不要」と分類されました。次に大きいグループは、ULTを受けておらず、痛風発作を経験しておらず、尿酸値が8.0mg/dL 以上であり続けた患者(7049人) でした。無症候性高尿酸血症の337人と痛風の101人が ULTを受け、追跡調査日までに尿酸値が6.0mg/dL以下に達しました。
上の図は、最初の痛風発作までの時間を示しています。無症候性高尿酸血症の人では、ULTの治療を受け尿酸値6.0mg/dL以下のサブグループで最初の痛風発作までの時間が最も長くなりました。ULTを受けて尿酸値>6.0mg/dLのサブグループと未治療で尿酸値8.0mg/dL以上のサブグループでは、最初の痛風発作までの時間は同程度でした。尿酸低下療法で尿酸値が十分に下がらなければ、意味ないじゃん。
痛風の人では、144週くらいまでは、ULTの治療を受け尿酸値6.0mg/dL以下のサブグループでも、ULTを受けて尿酸値>6.0mg/dLのサブグループでも、未治療で尿酸値8.0mg/dL以上のサブグループでも違いがありませんでした。やっぱり薬意味ないじゃん。
上の図は痛風発作の発生率を示しています。左側の3つが無症候性高尿酸血症、右側が痛風の人です。痛風発作の発生率は、ULTを処方され尿酸値6.0mg/dL以下の無症候性高尿酸血症のサブグループでは0.033発作/人年、ULTを処方され尿酸値>6.0mg/dLのサブグループでは0.083発作/人年、ULTを処方されていない尿酸値8.0mg/dL以上では0.081発作/人年でした。尿酸値が6.0mg/dL以下にならないなら薬は飲んでも飲まなくても違いはありません。
痛風の人でULTを処方され尿酸値を6.0mg/dL以下にしても、無症候性高尿酸血症のULTを処方され尿酸値6.0mg/dL以下のグループの10倍の痛風発作発生率があります。ということは、尿酸値ではない他の何かが大きく関係して発作が起きると考えられます。
ULT (−) | ULT(+) | ||||
尿酸値mg/mL | 尿酸値mg/mL | ||||
≥8.0 | ≤5.0 | >5.0、≤6.0 | >6.0、≤7.0 | >7.0 | |
無症候性高尿酸血症 | |||||
痛風の最初の発作までの時間 | |||||
HR (95% CI) 対 ULT (−) | – | 0.64 (0.32から1.29) | 0.45 (0.27から0.76) | 0.97 (0.71から1.32) | 1.29 (1.04から1.61) |
痛風発作の発生率 | |||||
発生率 /人年 | 0.035 | 0.023 | 0.014 | 0.032 | 0.04 |
RR (95% CI) 対 ULT (−) | – | 0.65 (0.31から1.39) | 0.40 (0.24から0.68) | 0.91 (0.64から1.31) | 1.23 (0.93から1.63) |
痛風 | |||||
痛風の最初の発作までの時間 | |||||
HR (95% CI) 対 ULT (−) | – | 1.22 (0.71から2.10) | 0.65 (0.40から1.05) | 0.76 (0.51から1.14) | 1.23 (0.89から1.70) |
痛風発作の発生率 | |||||
発生率 /人年 | 0.298 | 0.263 | 0.162 | 0.273 | 0.286 |
RR (95% CI) 対 ULT (−) | – | 0.88 (0.48から1.63) | 0.54 (0.33から0.91) | 0.92 (0.59から1.42) | 0.96 (0.66から1.39) |
上の表は、痛風発作の初回発症までの時間と発症率です。未治療で尿酸値8.0mg/dL以上のグループと比較して、ULT治療で有意に痛風発作の初回発症までの時間長くなったり、発症率が低下するのは、無症候性高尿酸血症で尿酸値が5.0~6.0mg/dLのグループだけです。その他の状態では、無症候性高尿酸血症の人では有意に痛風発作低下はなく、痛風の人ではULT治療でどのような尿酸値になっても、未治療の人と有意な違いがありませんでした。ULTで尿酸値が5.0mg/dL以下になろうとも、未治療と変わらないのです。
以前の記事「若い男性におけるメタボリックシンドロームと痛風発症リスクの関係」でも書いたように、痛風にはインスリン抵抗性、高インスリン血症が大きく関係していると考えられます。痛風も糖質過剰症候群なのでしょう。
尿酸値が高くなっても、薬に頼らず、糖質制限をしましょう。
「Serum uric acid control for prevention of gout flare in patients with asymptomatic hyperuricaemia: a retrospective cohort study of health insurance claims and medical check-up data in Japan」
「無症候性高尿酸血症患者の痛風発作予防のための血清尿酸コントロール:日本の健康保険請求と健康診断データの後ろ向きコホート研究」(原文はここ)
初めての痛風発作は、20代初期、まだ大学生の頃でした。
それから30年、これまでに5回発作を経験しています。
私の場合、尿酸値は薬で20年近く 8~10mg/dL → 4~6mg/dL に抑えられていますが、それでも発作は起こります(前回の発作は数年前)。
経験上、当該関節に物理的な負荷をかけたり使いすぎたりした後に発作が起きるようです。
スーパー糖質制限を10年近く続けていますが、いったん痛風体質(?)を獲得しちゃうと治すのは難しいのかもしれません。
Caesius999さん、コメントありがとうございます。
貴重な情報ありがとうございます。
やはり数値ではないようですね。
痛風になる前に糖質制限を始めることが重要なのかもしれませんね。
尿酸値が高くなるって、風邪に対する発熱、みたいな人体の防衛反応ですよね。
そもそも尿酸は抗酸化物質です。尿酸値を低く保なんてやってたらむしろ痛風になりやすくなるとしか思えません。
ナカイチさん、コメントありがとうございます。
尿酸値を低く保つとむしろ痛風になりやすくなるとは言えないかもしれませんが、
尿酸値が低いことは体に悪いと思います。