急性心筋梗塞における抗血小板薬2剤併用療法と併用したPPI(プロトンポンプ阻害薬)の有害性

心臓の専門医であろうと他の科であろうと、臨床医は抗血小板療法を受けている冠動脈疾患患者の消化管出血のリスクについて非常に警戒しています。 そこで、消化管出血のリスクを減らそうと、PPI(プロトンポンプ阻害薬)を処方することも多いでしょう。

抗血小板薬はいわゆる「血液をサラサラにする」薬です。その血液をサラサラにする薬に、その副作用の消化管出血のリスクを減らそうとするPPIを併用するとどうなるでしょうか?

今回の研究では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、ほとんどがアスピリンとクロピドグレルを併用している急性心筋梗塞の患者で、75歳以上や抗凝固薬、ステロイドまたは非ステロイド薬の併用、およびヘリコバクターピロリ感染の人を高リスクの患者として除外し、最終的に消化管出血リスクが低い17,247人を対象としました。(表は原文より改変)

臨床エンドポイント PPIあり(%) PPIなし、(%) 調整OR(95% CI)
消化管出血 122 (1.1%) 10 (0.2%) 5.574 (2.902-10.697)
主要な心血管イベント 568 (5.0%) 271 (4.7%) 1.026 (0.877-1.203)
全原因死亡 471 (4.1%) 248 (4.3%) 0.938 (0.791-1.112)
心筋梗塞 61 (0.5%) 16 (0.3%) 1.529 (0.872-2.678)
脳卒中 69 (0.6%) 16 (0.3%) 2.125 (1.216-3.682)

上の表のように、抗血小板薬2剤併用療法にPPIを併用すると、消化管出血の可能性がなんと約5.6倍になります。PPIは消化管出血リスクを減らす目的ではなかったのでしょうか?逆に消化管出血増えてるやないかーい!そして、さらに脳卒中の可能性は2.1倍です。あらら。

臨床エンドポイント 30日 6ヶ月 1年 2年
調整HR(95% CI) 調整HR(95% CI) 調整HR(95% CI) 調整HR(95% CI)
消化管出血 5.577 (2.903-10.696) 4.988 (2.742-9.069) 4.331 (2.488-7.563) 3.650 (2.188-6.082)
主要な心血管イベント 1.049 (0.905-1.211) 1.070 (0.934-1.225) 1.095 (0.963-1.246) 1.123 (0.994-1.270)
全原因死亡 0.965 (0.822-1.131) 0.945 (0.817-1.096) 0.940 (0.817-1.083) 0.971 (0.848-1.112)
心筋梗塞 1.297 (0.855-1.968) 1.580 (1.102-2.265) 1.812 (1.296-2.536) 1.773 (1.301-2.412)
脳卒中 2.202 (1.287-3.763) 2.270 (1.401-3.675) 2.261 (1.454-3.515) 2.072 (1.388-3.091)

上の表は、PPI使用の有無での期間ごとのリスクを示しています。消化管出血は30日~2年の全てでリスクが大きく増加しています。心筋梗塞は6か月以降で1.5倍以上のリスク増加になっています。さらに脳卒中は30日~2年の全ての期間で2倍以上のリスク増加です。

残念なことにPPIは追加の胃腸保護効果を示しませんでした。何のためにPPIを飲んでいるかわかりません。

PPIの併用は胃腸保護効果を示せず、消化管出血リスクを増加させるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中を増加させています。PPIが抗血小板作用を減弱させているのでしょう。本末転倒ですね。

さすがスタチンと並ぶマッチポンプ薬です。

心血管疾患になる前に、糖質制限をして予防しましょう。もし、抗血小板療法が必要になってもPPIは避けましょう。

「The Clinical Impact of Proton Pump Inhibitors When Co-Administered With Dual Antiplatelet Therapy in Patients Having Acute Myocardial Infarction With Low Risk of Gastrointestinal Bleeding: Insights From the China Acute Myocardial Infarction Registry」

「消化管出血リスクが低い急性心筋梗塞患者における抗血小板薬2剤併用療法と併用したプロトンポンプ阻害薬の臨床的影響:中国急性心筋梗塞レジストリからの知見」(原文はここ

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